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「HSP~ひといちばい繊細な人~ 自分のためのトリセツ」に参加した

 NHKの「HSP~ひといちばい繊細な人~ 自分のためのトリセツ」(オンラインによるフォーラム)に参加した。構成は、前半が「HSP~理解と自分らしく生きていく方法」と題された精神科医の本将昂先生による講演、後半が「繊細な人が自分を大切にする」というタイトルでのシンポジウムで、本先生に加え、娘さんがHSPであるという横山由紀子氏、臨床心理士で、カウンセラーでもある小田裕子氏がパネリストとして参加する、というスタイルだった。HSPがわかりやすく紹介され、とても面白かった。最近自分がこの当事者であると知った身として、参考になったポイントをまとめておく。

 基本となるのは「等身大の自分を受け入れる」、「唯一無二の自分を正しく理解する」ということである。これは日本ではなかなか難しいかもしれない。なぜなら、学校は「明るくハキハキした人」が好きで、引っ込み思案の子は「もっと積極的に」と指導されるし、じっくり腰を据えて何かに取り組もうとすると「テンポ」だの「効率」だのを求められることが多いからだ。こういう経験を重ねていくうちに人は「今の自分ではダメだ」と思いがちになる。そして、そういう考え方のクセは意識しないと直せない。このクセを直すために「苦手と得意を客観的に見て受け容れる」ことが大切で、さらに物理的な条件としては「刺激を減らす」、「心の支えになるもの、心が和むものを近くに置く」などが効果的だそうだ。

 また、娘さんがHSPであり、当人は非HSPであるという横山さんのお話も、非常に面白かった。横山さんは娘さんの引っ込み思案な性格を「直そう」として、運動重視の幼稚園に入れたり、人の中に参加させようとしたり、という試みを繰り返し、その結果娘さんは不登校になってしまった。その後、横山さんは娘さんと向き合い、今では良好な関係を作っている。横山さんのお話のポイントは、いろんな体験をさせたとしても、まずそれを受け入れる心の準備が子どもにできていなくては意味がない、ということで、その条件として、まず「リラックスできる環境にいる」ことが大事とのことである。そしてその環境を作るのが、「親が先回りをしない」、「子どもの気持ちを大切にする」、「トラブルがあったら話を聞く」ということだという。これは非常に納得の行くものだった。

 これを聞いていて幼少時や青年期のトラウマが(この歳になっても)蘇ってきたのだが、私は小学校に入った時、怖くて水に顔をつけることができなかった。そこで夏休みのプールで、上級生が華麗に泳ぐのを眺めていたのだが、親がプール当番でそれを見ていて、帰ってから烈火のごとく怒られた。曰く、「お風呂みたいにボーッと浸かって!」というのである。当時の私にはそれに対して言い返すすべがなく、ただ黙っているのみだった。しかし、夏休みに幼馴染が遊びにきて、お風呂で潜りっこをしていたら、何の苦もなく顔を水に浸けることができるようになった。

 もう一つ、母は英語が好きで、何を思ったか小学生だった私にも英語を勉強させようとした。で、家になぜか置いてあったカセットテープを聴き、「真似しなさい!」というのである。しかし私はその手の「ごっこじみたこと」が大嫌いだったので、黙っていた。するとめちゃくちゃ怒られた。心の中にあったのは「なぜ学校で習いもしていないのに、今ここで急にアホみたいにカセットテープの音を真似なくてはならないのか」ということだったのだが、言い返せないので黙っていた。そして私は英語が嫌いになった。

 この手の体験をまとめていて思うのは、要するに共感できない人というのは毒だ、ということである。すぐに「自分はこうだったから」と自分のサイドで物事を考える。このシンポジウムで圧巻だったのは、HSP当事者の横山さんの娘さんからの手紙である。娘さんは小学校の頃、みんなで机をくっつけて、ガヤガヤと給食を摂ることが嫌いだった。そこで、一人で食べようとしたら、先生はどうしても近くの女の子たちと一緒に食べろと指導する。先生に「あの人たちは私のことがそんなに好きじゃないから、食べても楽しくないと思う」と伝えたら「そんなのあなたの被害妄想よ」と切り捨てられたそうだ。この一言で娘さんは先生には何を言っても無駄だと思ったという。娘さんがこの時に求めていたことは「一人で食べたい」という希望を叶えてもらうこと、そして何よりも、「相手が自分と同じ大人でもそれをするだろうか、ということを考えてほしい」ということだったそうだ。

 この娘さんの要望も、私には非常によくわかった。子どもの頃、周囲の大人に無神経に批評されるたびに「この人たち、こっちがわかってないと思ってるよね」、「全部聞いてるし、わかってますけど」と思っていた。そして、遠慮なくずけずけものを言う人のことは信頼できない、と心の中でラインを引いていた。このラインは今でも正しかったと思っている。

 というわけで、それなりに自分でHSPと折り合いをつけて生きてきた身であっても、今日のフォーラムは非常に参考になった。「NHKハートフォーラム」に感謝したい。

 

 


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