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連続テレビ小説「カーネーション」放送10年・岸和田市市政施行100周年『おかえり糸子!カーネーション ファンミーティング』トーク書き起こし(2022.3.5.開催)

尾:尾野真千子さん
城:城谷厚司さん(カーネーションプロデューサー)
比:比留木剛史アナウンサー

 尾野さんはなんと、ミシンに初めて触るときに来ていた矢絣の着物にグリーンの袴、赤い足袋におさげ髪(両手に赤いうちわ)、という姿で登場した。雰囲気はあの時のまま!↓

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比:最初にご挨拶を。
尾:色々笑って、いろんなこと忘れて帰ってください。
比:今日は女学生時代の衣装で。尾野さんのアイディアですか?
尾:はい、お恥ずかしい話。四十で着るとは思いませんでした。
比:城谷さんが衣装を探されたんですか。
城:もうないかな、と思ったら、全部取っていてくれました。
比:岸和田に帰ってきてどんな気持ちですか?
尾:お久しぶり、で。昨日、思い出の場所を巡って思い出に浸っていました。撮影の時は何度も来られる状況ではなかった分、厚かましい話ですが、帰ってきたんかな、と思わされました。
城:だんじりの時は毎年来ていたけれど、今日は久しぶりです。
比:放送から10年です。
尾:まだ10年経っていない感じ。去年、一昨年くらいの感じ。勝手に年取らさんといて、と思います。再放送もあって、ここに来たら糸ちゃん糸ちゃんと言ってくれて嬉しいです。
比:撮影については。
尾:色々ありましたよ、戦争や、こっちは。苦しいこともいっぱいあったけど、ゲストで来てくれる人と仲良くなったり、今は楽しい思い出しか残っていません。
比:俳優としての変化は?
尾:厚かましくなりました。女優慣れというか、この状況が当たり前になってしまうんです。みんなが知り合い、みんなが家族、みたいな。
城:同じ釜の飯を食ってきた感じですね。
比:放送までの期間がずいぶんあって、放送が始まって人気が出てきて、そのあたりはどうでしたか?
尾:怖かったですね。歩いていて糸ちゃん!とか言われて、初めは嬉しいけど、怖くなって。私大丈夫かな、壊れていけへんかな、と心配になりました。
城:自分のプロデューサーとしての原点です。他のドラマを作るたびに、ああいうことが今できているのか、と思います。まだ終わっていない感じですね。
比:プロデューサーから見た変化は?
城:ヒロインは本当に大変なんですよ。セリフも多いし、容赦なく脚本がきて、それをどんどん打ち返す感じ、その感じがすごかったです。

☆チャイムが鳴って、川崎亜沙美さん登場。「地元が題材のドラマに出させてもらって、地元の宝物の作品ができました」と挨拶し、コシノヒロコ、ジュンコ、ミチコさんからのメッセージを紹介。「あれから10年とは月日が経つのは早いものですね。尾野さんと初めて会ったときはとてもおとなしいと思いましたが、ドラマが始まってみると、まるであの賑やかなお母ちゃんが舞い降りてきたようでした。そのあとは私たちが言うまでもなく素晴らしい女優さんとして大活躍をされ、とても嬉しく思っています。『カーネーション』はこれからも尾野さんの代表作として、岸和田の宝として永遠に残っていくことと思います。これからのますますのご活躍を心からお祈りします。」

尾:嬉しいねー。まさかこんなメッセージをもらえるとは思っていなかったから。よろしくお伝えください。
比:10年経ってここまで愛してもらえることについては。
城:最初に(コシノ三姉妹に)企画を持って行った時、面白く作ってくれたら何をしてくれてもいい、と言われました。

登場人物、キャストについて。
比:いろんな方と共演されていかがでしたか?
尾:いかがでしたかと言われても、もう家族なんでね。今見ても家族としか思えない。私は勘助が可愛くて、本当の幼馴染みたいな感じでした。他の現場で会った時も勘助、って言ってしまうんですよ。
比:キャストをお願いするときは?
城:できるだけ大阪の人に出てもらいたい、というのはありました。大阪弁、岸和田弁という言葉のこともあるので。
比:ヒロインの決め手は?
城:もともと、イメージとしては啖呵の切れる人、と思っていました。最終選考で、10代と40代と2パターン演じてもらいました。それぞれ女学校の格好と、40代のお母ちゃんの格好と。尾野さんは、入ってきた時から「糸子がいるな」と思いました。
尾:メイクもちゃんとしてもらえるんですよ。メイクさんたちが「あんたで決まりや」と言ってくれて、それが自信につながりました。
城:演技力を競うのではなくて、全部を含めてなので、そこを入れて、もう尾野さんでした。
尾:スタッフがいないと糸子は作れないんですよ。スタッフは私の感情も体調も、全てを知ってくれていました。スタッフも含めて家族やったと思います。

勘助について:カレーのシーン

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尾:あったねー、食べた食べた。
城:勘助は幼馴染で、普通の兄ちゃん。糸子みたいな生き方はできない分、糸子に憧れている、という立場でした。普通の兄ちゃんから見ての糸子、という位置づけでした。
比:勘助は戦争に行って、心を失くして帰ってきて、もう一度出征して戦死してしまうんですが、そんな勘助に対しては。
尾:幼馴染で、こいつのことはなんでも知ってる、と思っていました。あの日、あの子は本当に心を失くしてしもたんです。入ってもう抜けられなくなっていて、自分(尾上さん自身)もその気持ちになっていた。あのシーン、勘助しんどかったんやろうなあと思っていました。勘助の、心のところしか動かないんです。あの感じは見ている方にも伝わったのでは、と思います。もう参った。今見ても思い出しちゃった。
城:リハーサルの時から心を失くしていて、糸子はずっと寄り添っていました。
尾:夫が死んだ時より辛かったです。夫の時は、糸子はもう気持ちが動かなくなっていて、その分、勘助の時は(感情が)ドバッと出ました。

善作について:「女学校、やめさせてください!」のシーン。尾野さん、見ながら泣く。

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比:お父ちゃんはどんな方でしたか。
尾:(涙を拭きながら)頑張っていた時の放送は、見ると泣いてしまうんですよ。お父ちゃん、本気できてくれるから、こっちも糸子になれました。
城:前半、糸子が父を超えていくんですが、超える壁は高いほどいい。一番怖い人、それを探したら薫さんでした。
比:怖いけど、糸子が好きで。
尾:ケーキのシーンもバチーンと叩いて、もみじの形がついて、監督が「今のうちに次撮るぞー」って。本気で行くぞ、と言われていたので、覚悟はしてました。監督が、子どもたちのびっくりした顔が欲しいんや、って。

百貨店の支配人について:制服を作りに行くシーン。

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比:この出会いが糸子にとってはデザイナーとしてのスタートでしたね。國村さんは尾野さんのデビュー作(『萌の朱雀』)でもお父さんで。
尾:お父さんとしか思っていないから、身内がそこにいる感じ。嬉しい、恥ずかしい、もあるし、見せたんねん、という気持ちもありました。駆け寄るシーンで、滑ってしまって前歯を折りました。八重歯が欠けました。でも歯だけで済んだから、1日休みをもらって、かわいい八重歯がなくなって。顔面から行ったのに、歯だけでしたね。私は放送が止まってしまう、と思って、皆勤賞を狙っていたのに申し訳ない、と思って泣きました。頭を打ってたら、というので救急車に乗ったけど歯だけ。かわいらしい八重歯がなくなりました。
比:2回言いましたね。
尾:相手が元々のお父ちゃんだったので、素直に撮影を止めてごめんなさい、と言いに行けました。戻った時も、両手を広げて待っていてくれました。
比:キャラの立った素晴らしい人ばかり集まりましたが、なぜでしょう。
城:脚本がもう素晴らしくて、読むだけで話がどんどんふくらんでいく感じでした。

視聴者の選ぶ名シーン:パート1
その1):パッチ店でミシンを覗くところ。

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その2)クリスマスケーキの場面。

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尾:これや。
比:もみじ。
尾:痛いでー。
比:ミシンが初めて登場するシーンについて。
尾:私もこれは思い出に残ってます。
比:あそこまでよく目が開きますね。
尾:私も見てびっくり。よう目、開いたなあ、と。心の中でこんな顔しているんやろな、というのを表現してみました。
城:このシーンの直前に撮ったのが土手で泣くシーンで、そこがクランクインでした。その場にいた人全部が度肝を抜かれました。すごいドラマになると思いました。
尾:すごいシーンからやらしてくれるわ、と思いました。クランクインやった、というのは覚えてます。
比:このあたりの(その場にいた人が度肝を抜かれた、などの)お話はお聞きになりましたか?
尾:初めて聞きました。
比:10年経ってわかることもある、と。
尾:口数の少ないお方なので。
比:ケーキのシーンについては。
尾:手を上げたり蹴ったりのシーンは、危ないんです。本気でやりたいけど、やりすぎたら事故になる、本当に怪我をしないように、というのを薫さんが気にしてくれていました。
比:妹たちがナマで驚いてましたね。
尾:本当に妹たちが「大丈夫?」って聞いてました。
比:その後のおばあちゃんの「まだ食べれる」、お母ちゃんの「糸子から食べ」もありました。
尾:お母ちゃんは天然やから。

比:尾野さんは昨日岸和田を歩かれたんですね。
尾:前にも一人で来て初詣をしたりしていたんです。

ここで、昨日の散策シーンが流れる。ヒロインが決定した時に写真を撮った、岸和田城をバックにした場所からスタート。
尾野:「いろんな人から10年経った、って言われる。」
吉田屋に使われた五風荘、奈津の石。「吉田屋のシーンで印象に残っているのは?」の問いかけに、尾野さん、「そこに奈津がいたなあ、と思いました。自分のことではなく、栗山さんを思い出した。」祝言の部屋を見て、だんじり会館へ。提灯が現れる。尾野さん、だんじりを触り、うちわを持って「持ってんねんこれ」。大工方の魅力は?と訊かれて「男らしいところ」。「だんじりのシーンは京都で撮影したんです。泰蔵兄ちゃんがひらり、となっていたのを思い出します。」
五軒屋町へ。尾野さん、赤いうちわをもらって喜ぶ(今日も持ってきている)。だんじりは、屋根をとって車で京都まで運ぶ。担当の人が、ドラマに参加してみてどうでしたか、と尋ねられ「雨で大変やったけど、今となってはいい思い出」。尾野さん、「ほんまに大工方になりたいと思ってましたしね」。

アヤコ食堂へ。
尾野さん「こんなんなったんですねー」。2階から商店街を見ると、みんなが手を振る。

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弥栄神社へ。
尾野さん「ここ、かき氷食べたとこ。」

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「ここ、(終戦間近にだんじりを見て)泣きわめいたとこ。」

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 蔵を見ながら「泣いたよねー」。その後、お参り。

「いろんなところを回ってきましたけど」と言われ、「懐かしいですよ、手を振ってくれることも、糸ちゃんて言ってくれることも嬉しい。」「朝ドラ出てよかった。」

比:やっぱり思い出すもんですか?
尾:泣いたなー、とか、トイレ我慢するの大変やったなーとか。(これは終戦後のだんじりのシーン。)
比:街の人たちの身内感がすごかったですね。
尾:糸ちゃん、って言ってくれるから戻されますね。

闇市の会代表のお二人が登場。「闇市の会」とは、闇市のシーンでエキストラとして出てくれた人たちの会の名前。尾野さんを見て「その頃の年齢に戻んねんな」と言うと、尾野さんが「ちょっと気持ち悪いで」と返す、というやりとりをする。

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比:(出演されて)どうでしたか?
闇:出たからには映ったろ、と思いました。スタジオやったけど、ほんまに闇市らしい。
比:仕事ぶり、どうでしたか?
尾:邪魔もせずやりやすいし、エキストラ会社の人と思ってた。
城:サービス精神が旺盛。
比:思い出は何かありますか?
闇:名前、身長、体重を書かされたら、当日一人一人に衣装が用意されていたのが嬉しかったですねえ。闇市のシーンが出るたびに、「これこれ」と言いながら見てます。僕らの中ではこのドラマは「生きてる」から、再放送も見てまう。
闇市の会から、お二人にメッセージ。
城谷さんへ:岸和田アパホテルにお泊まりだったそうで。このつながりで『心の傷を癒すということ』にも出られて、これからもこんな関係が続けていけたらと思います。
尾野さんへ:僕らは糸ちゃんの永遠の相方やと思てます。

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視聴者の選ぶ名シーン:パート2。
最終回の、ロンドンの聡子に電話するところから、「うちは宝抱えて生きていくよって」、お父ちゃんへのエアお酌、ミシンに手を置くシーン、糸子の顔の大写しまでが流れる。

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尾:そうだったねー。いい言葉ですねー。
比:「うちは宝抱えて生きていくよって」
尾:今の自分に言っているみたい。
城:ここは尾野糸子の最終回で、みんなが「真千子がいなくなっちゃう」って力を出したシーンです。
比:10年経ってもシーンが皆さんの中に残っているんですね。
尾:辛かったこと、しんどかったことが飛んでいくね。
比:半年間という朝ドラ特有の時間の流れでもあったわけですが。
尾:これを見て、朝「行ってくる」って言えるかな、私でいいんかな、と思ってた。
比:NHKの朝ドラの価値でもありますね。
城:長い時間かけないと描けないものがあるので。

比:皆さんにメッセージをお願いします。
尾:岸和田のみなさん、これまでも『カーネーション』というものを愛してくださってありがとうございました。これからも、『カーネーション』とだんじりと、私をよろしくお願いします。人の中で『カーネーション』が成長していく、生きている、と思うのが嬉しいです。これからも、どうぞ『カーネーション』をいさせてください。
城:まだ終わっていない気がしています。岸和田の人たちと、年に1回お会いできる機会です。
比:またファンミーティングができたら。
尾:次いつにする?
比:是非これからも、健康で、笑顔で会えるのを楽しみにしています。
城谷さん、尾野さんの順で退場。尾野さんはいつもの深々としたお辞儀。その後、うちわを取りに戻ってきて、手を振って退場。


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