見出し画像

ドラマ『グレースの履歴』がおもしろい

 BSで3月19日から放送されている『グレースの履歴』、脚本も演技も映像も優れていて、とても面白いドラマです。4話まで終わった時点でのあらすじは以下の通りです。

製薬会社に勤める主人公、希久夫の妻の美奈子は、グレースと名づけたカッコいい赤のスポーツカーに乗っています。ある日美奈子はフランスに旅行に行き、観光バスの事故に巻き込まれて命を落とします。希久夫は悲しみのどん底に突き落とされますが、ある日、弁護士から連絡をもらいます。美奈子は白血病を患っており、万が一の時のために遺言状を残していました。そこには「グレースは希久夫に譲る。大切にしてほしい」と書かれていました。運転のできない希久夫は一念発起し、免許証を獲得します。そしてグレースの運転座席に座り、エンジンを入れてカーナビを見たところ、なんと美奈子は、フランスに行くと言ってから一週間、日本中を旅していました。希久夫はグレースに残された履歴を辿り始めます。(極度の方向音痴だった美奈子は、クラシックカーにカーナビを搭載していたのです。)美奈子は元恋人に会いに行き、その後希久夫がかつて暮らした家を訪れていました。次の目的地に向かおうとした希久夫は、調子に乗ってスピードを出し過ぎ、エンジントラブルを引き起こします。そこに通りかかったバイクの女性から、腕の良い修理工を知っていると紹介されたところ、それは女性の祖父で、ホンダのエスハチの開発に取り組んだ人でした。希久夫はグレースがホンダの車であること、グレース大公妃がこの車の愛用者であったことを初めて知ります。さらに、修理をしてみると、なんと美奈子の車は、グレース大公妃が運転したものであったことがわかります。

 展開の面白さは言うまでもなく、このドラマの魅力の一つに、車でどこまでも旅したくなる、ということがあります。(運転免許を取る気などさらさらなかった娘が、やっぱり免許取るわ、と言い出したくらいです。)ここで思い出すのが、村上春樹『騎士団長殺し』で主人公が車に乗って旅を続けるシーンです。主人公は車中泊をしたり、時々ホテルに泊まったりしながら、ひたすら北へ北へと向かいます。そして、車が動かなくなったところで家に帰ります。私はこの場面を読んで、どこまでも車で行けるようになりたい!と思い、「一言主神社」で募集されていた「願いごと」に書いて出したのですが、残念ながらと言うか、当然のごとくと言うべきか、当選はしませんでした。ただ、その後も練習を積み、今では金沢日帰り弾丸ツアーなど、かなりのところまで行けるようになりました。
 さらにもう一つ、このさすらいシーンから思い出されるのが、同じく村上春樹の『ノルウェイの森』で主人公のワタナベ君が旅をする場面です。ワタナベ君は列車で行き先も決めずにあちこちを旅し、お金がなくなれば建築現場で働き、リュックの中にパンとトマトとチーズとチョコレートを入れてさまよい続けます。海を見ているときに親切な漁師からお寿司をご馳走になり、ようやく元の生活に戻る決心をして緑さんに電話をかけます。
 大学生だったワタナベ君は列車で放浪し、大人である『騎士団長殺し』の主人公は車を運転して旅を続けるわけですが、『グレースの履歴』を見ていると私の中に潜む放浪癖が刺激されるようで、ノマドライフをしたくなってくるのでした。


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?