安定感を目指して(練習メニュー編)

プリンは飲み物。

じんです。

今回も長いので、トレーニングマニアの方だけ見てみてください。

安定感には

「どんなレース展開(練習)やコンディションにも柔軟に対応できる力」

これが欠かせないと思います。

今回は自分の専門である
長距離(5000m)選手の視点で考えてみました。

<目次>
1.不足点を補うポイント練習
2.状況に応じたジョギング
3.メニューの微調整(修正能力)
4.トレーニングの割合

1.不足点を補うポイント練習

まずは失敗レース&練習パターンを3つ(A.B.C)挙げてみます。

【パターンA】
「始めの段階から息が上がって全くついていけなかった」

走力やコンディションに対して、「突っ込みすぎ」も考えられますが、スタミナタイプの方に多い印象。

〜おすすめの対策練習例〜
・600+400+300+200 2set
(r1′30-60″-45″ sr5′)

600は1500mの目標ペースより遅く
400は1500mの目標ペース
300.200は1500の目標ペースより速く

・400×10(r60″その場walk)
普段の400インターバルより速めに
1500mの選手はレースペースで400×5を2set

今の練習と並行して、最大酸素摂取量を引き上げるような練習を増やすと良い気がします。

【パターンB】
「2000-3000mまで楽な感覚だったのに、後半急に足にきてガタ落ちした」

スピードタイプの方に多い印象。
(僕はパターンBの失敗が多め)

自分の場合、前半突っ込みすぎずに中間疾走を大事にするような練習を加えると、この弱点が克服される傾向にあります。
生理学的に言うと、血中乳酸が増え始めるポイントをうまく引き上げるのが大事なのかなと。

〜おすすめの対策練習例〜
閾値走(6000-8000mPR)
5000mのレースペース+10″-15″/km
ダニエルズの計算式(後述)から算出してもOK

・600×3+2000〜3000+1000 ※実戦向け
(r200.sr600〜1000)
600を5000のレースペースより若干速め
2000〜3000を5000のレースペース+0-5″/km
1000を5000のレースペースー5″/km
※尊敬するレジェンドランナーに教えて頂いたメニューです

・1600×4(r400 or 2′:その場walk)
1-2本目は5000mのレースペース+5″/km
3.4本目は5000mのレースペース+0-2″/km
疾走区間は1.2周目を突っ込まないよう注意

ここで、リカバリー問題。

Patrickらの研究(2019)では
4分間走×6をrest1′・2′・3′の3群に分けて、
走速度、主観的なきつさ、最大酸素摂取量(90-95%)、最大心拍数に至る時間を測定。

その結果、走速度は3′rest群が優位に高く、4-6本目の主観的なきつさはrest1′の群が優位に高かったのに対し、最高酸素摂取量と最大心拍数に至る時間はどの群でも差はみられず、心肺にかかる負荷にrestの差は関係しにくいことが示されました。

以上の結果からミドルインターバルのrestはゆっくりとった方がお得かもしれません。

個人的には疾走区間で追い込むときはrestは2′
walk
。条件が悪かったり、調子の良くないときは疾走区間を遅くし、restを速めにして変化走のように追い込みます。

↓先週末は風が強い中1人でのポイントだったので、後者のような1600×4を選択

【パターンC】
「日体大記録会(高速記録会)は上手く走れるのに、選手権になると長い距離がもたない」

僕個人の考えでは
◯1人で走る時にイーブンペースを作れない&オーバーストライドによる燃費の悪い走りとなる
◯変化走の経験不足
◯メンタルの弱さ
等が原因ではないかと考えています。

〜おすすめの対策練習例〜
・1000×2+6000-8000PR+1000×2(r200 sr400)
前半の1000×2は10000のレースペース
後半の1000×2は5000のレースペース
PRはゆったり(通常のペース走+10″/km位)で。

☑︎様々なペース帯を経験し、ペース感覚を身につける。1000×2の所を工夫することで、展開の変化に対応する練習にもなる。動きが崩れない程度の量に留めることで、ペースの再現性が高まる気がします。

・ランニングフォーム(接地)の微調整
個人的にはスプリントドリルによる接地位置の微調整がおすすめ。これについては難しく長くなるので、今回は割愛。

2.状況に応じたジョギング

【個人的に採用しているジョギングの種類】

・スローjog(低速度・中速度)
・速めのjog(Eペース)
・ビルドアップjog
・ロングjog(スロー、Eペース)

<スローjog>
・ポイント練習が安定しない人や、疲労困憊(起床時の安静時心拍数が高めな)時におすすめ。

クロスカントリーコース(できれば起伏なし)は地面からのエネルギーリターンが少なく、疲労の軽減や筋肉痛があっても、怪我のリスクを最小限に出来ると感じます。

<速めのjog(Eペース)>
・起床時の安静時心拍が平常の時におすすめ。

・Jack Danielsの「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」によると

Eペースでのランニングは心筋を発達させるために効果的としています。理由は心収縮力が最大に達するのは60%HRmaxの時であり、Eペースはその程度の負荷であるからとしています。

・Eペースはダニエルズのランニング計算式(http://www.runsmartproject.com/calculator/)
から算出することができます。

僕の目指す5000m13′59に設定すると

km3′40-4′03。笑
あまりイージーではないので、1つの参考程度に捉えてます。

<ビルドアップjog>

忙しい時や研修などでポイント練習を詰めない時等、中強度練習のイメージでおすすめ。

<ロングjog>
初心者や、普段あまり長い距離を走らない方の基礎体力強化におすすめ。

シーズン中に試合を詰めている方(試合と試合の間等)、ペース走するほどの元気がない方には
Eペースでのロングjogを推奨します。

3.メニューの微調整(修正能力)

コンディション(内的・外的)により、その日出来るメニューを微調整することが安定感に繋がると感じます。

内的:脚が重い、筋肉痛がある
外的:風が強い、適温ではない、雨等

例1)風が強い日の対策
・競技場でのスピード練習
→設定ペースにゆとりを持たせる、周回が少ない練習にする、 追い風を利用する(200mインターバルで疾走区間を追い風にする)等

・ペース走
→なるべく風を遮る森林で走る

例2)脚が重い、筋肉痛がある日の対策
・設定ペースにゆとりを持たせる
・ポイント練習を1日遅らせる

以上に注意することで、練習の内容が安定してくるのではと思います。

4.トレーニングの割合

Seilerら(2006)の研究では
高レベルのジュニアクロスカントリースキー選手の練習内容は低強度:75%、中強度8%、高強度17%程度の割合と報告。

↑はPolarized(POL)トレーニングモデルといって、低強度と高強度多め、中強度少なめの内容になってます。

簡単に言うと
追い込むときは追い込んで、落とすところはしっかり落とす(中強度にならないように)
・ペース走やEペースランニングといった中強度の練習も低頻度ながら行うようにする

実際にStogglらの研究(2014)では
POLトレーニングは中強度中心のトレーニング(THR)、低強度中心のトレーニング(HVT)よりも優位に最高酸素摂取量やOBLAでの速度・パワーの伸び率が上昇。高強度中心のトレーニング(HIIT)とは同程度以上の効果を示したと報告。
※対象:48名のランナーを含む十分に鍛錬を積んだ持久系アスリート

僕もここ半年は
POLトレーニングモデルを意識しています。

最近は弱点が補われ、オーバーワークを脱して調子が安定してきた気がします。

個別性の法則を加味すると絶対に速くなる練習というものは存在しないですが、何か一つでも参考になれば幸いです。 

次回は最終章(第3段)戦術編。

ではでは!

【参考文献】
・Patrick(2019),The Effects of Recovery Duration on Physiological and Perceptual Responses of Trained Runners During Four Self-Paced HIIT Sessions

・Seiler(2006),Quantifying Training Intensity Distribution in Elite Endurance Athletes: Is There Evidence for an "Optimal" Distribution?

・Stoggle(2014), Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity, or high volume training

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