見出し画像

シンスプリントの治療・予防戦略

学生時代に一番苦しめられた怪我は
シンスプリント。

じんです。

最近はコロナウイルス蔓延の影響で
公園や路上で練習している方が多いのではないでしょうか。

今回はロード練習で生じやすい「シンスプリント」の治療・予防戦略についてまとめてみました。

<病態>

シンスプリントは「疲労骨折や虚血性疾患を除いた、脛骨後内側(すねの内側)の痛み」と定義されています。

実業団と大学生、高校生の陸上競技選手155名を対象に調べた研究では

全体の68%にあたる105名にシンスプリントの経験があり、そのうちの77名は2回以上経験していると報告されています(目黒・川口,2007)

スポーツ医科学研究所の受診記録によると
陸上長距離選手の外傷2位にランクイン。

一度発症すると完全復帰までに3ヶ月以上かかる場合があり(Moen,2012)、症状が改善しない場合は外科手術を行うこともあるので注意が必要です。

すねの内側の痛みが引かず、実は疲労骨折だったというケースもあります。

病院に受診し、レントゲン・MRI検査を受けることでその見極めが可能です。

<発生機序>

①引っ張り説(Anderson,1996)
すねの内側に付着している下腿内側屈筋(ヒラメ筋、長趾屈筋、後脛骨筋)の牽引力により筋膜・骨膜炎が生じ、疼痛が発生する理論。

曲げ応力説(Davis,1958)※エビデンス不十分
すねに繰り返しかかる痛みや曲げ応力により脛骨に微細損傷が生じ、疼痛が発生する理論。

☑︎基本的には急に練習強度が上がったり、靴の摩耗などで発症することが多いです。

靴の交換は500〜800kmまたは6ヶ月毎の交換が推奨されています(Byungjoo Noh,2018)

<シンスプリント危険度チェック>

姿勢に着目すると
片足立ちで、骨盤が反対側へ落下
座位⇒立位で足部アーチが10mm以上潰れる
等が発症要因と言われています(Becker J,et al.,2018)

☑︎シンスプリントの再発を繰り返したり、痛みが慢性化している方はこれらの姿勢の崩れを改善していくことが必要です。

<治療方法>

発症時期から計算して対策法を考えます。

【急性期:発症後2週間以内】

まず、アイシングを行い患部の炎症(腫脹・熱感・疼痛)の軽減を目指します。

シンスプリント患者は、足関節の背屈角度が減少していると報告されています(Yates and White,2004)

マッサージ&ストレッチによりふくらはぎの柔軟性を確保し、足関節背屈角度を向上させることが、シンスプリントの改善・予防に繋がることが示唆されます。

☑︎この場合のストレッチは、反動をつけずにゆっくり伸ばすことが大切です。

☑︎基本的に片足ジャンプでの痛みがとれるまではランニングを中止し、こまめなストレッチやエアロバイク等での有酸素トレーニングをお勧めします。

【亜急性期:発症後2-4週間】

炎症(腫脹後)は組織の滑走性が低下しているので、効果的です。

【慢性期(予防時期含む)】

筋力不足やアーチが低いことにより、姿勢が崩れることで、シンスプリントが生じている可能性があります。

①サイドプランク+上下肢振り出し

対象:片足立ちで骨盤が落下する方
目的:お尻(中殿筋)の強化、お尻を効かせながら手足を振り出す意識付け

②接地の動き作り(ドロップスクワット)

対象:片足スクワットで骨盤が後傾する方、ランニング中、後傾して接地する方
目的:お尻(大殿筋)の筋力強化、衝撃を膝ではなく、股関節で受け止める意識付け

☑︎3000mSCの着地の際は、特にこの動きが大切だと感じます。

③立脚後期(蹴り出し)の動き作り

対象:蹴り出しの際に骨盤が後傾している方
目的:効率的な前への重心移動(足関節ではなく股関節を優先的に使う意識付け)

④インソール

対象:立位でアーチが10mm以上落下する方
目的:土踏まずを作る
※テーピングなどでも代用可能

<もしシンスプリントになったら(まとめ)>

シンスプリントの痛みが出たら一旦休養

アイシングで炎症軽減。ストレッチで筋の柔軟性を確保しておく。片足ジャンプで痛みが無ければランニング再開。

柔らかいクロスカントリーで走るよう徹底し、練習強度を少しずつ上げる

原因(姿勢、ランニングフォーム)を追求・改善し再発の予防

この流れを徹底して、僕はシンスプリントを克服しました。

ただ、動き作り(筋トレ)やインソールを試す場合は走りの感覚が崩れることも懸念されます。

シーズン中に姿勢・フォーム改善に取り組む場合は近くの指導者と相談の上、慎重に取り組んでみて下さい!

痛みが引かず心配な場合は、病院受診をして医師の診断の元、治療を進めていくことをお勧めします。

何か不明な点や間違っている箇所があれば、コメント頂けますと幸いです。

ではでは!

<引用文献>

・Moen et al.,(2012)A prospective study on MRI findings and prognostic factors in athletes with MTSS.

・目黒・川口(2007)陸上競技選手のシンスプリント治療に関する事例報告

・Anderson MW, Greenspan A(1996)Stress fractures. 

・DEVAS(1958)Stress fractures of the tibia in athletes or shin soreness. 

・Clement D.B.,Taunton J.E.et al.,(1981)A survey of overuse running injuries.

・Taunton JE.et al.,(1988)The role of biomechanics in the epidemiology of injures.

・Joshua Mattock,et al.,(2018)A protocol to prospectively assess risk factors for medial tibial stress syndrome in distance runners.

・Becker J,et al.,(2018)Factors Contributing to Medial Tibial Stress in Runners:A Prospective Study.

・Yates and White(2004)The incidence and risk factors in the development of medial tibial stress syndrome among naval recruits.

・Newman P,et al.,(2013)Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners:a systematic review and meta-analysis

・Byungjoo Noh,(2018)Medial Tibial Stress Syndrome:Focused on Tibial Fascial-traction Theory and Prevention Strategies

・プロメテウス解剖学アトラス 第2版 p506-507

・スポーツリハビリテーションの臨床 p124

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?