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【Voicy文字起こし】 明晴学園の、バイリンガル・バイカルチュラルシンポジウムに登壇してきました。

このnote記事は、2022年7月11日配信Voicyなな先生のことばの発達ラジオの文字起こしです。
難聴児さん・ろう児さんのことをお話したので文字起こしを作成しました。

【2022年07月11日 08:00配信】
明晴学園の、バイリンガル・バイカルチュラルシンポジウムに登壇してきました - 言語聴覚士なな先生

言語聴覚士なな先生のことばの発達ラジオ
みなさんこんにちは、なな先生こと寺田奈々です。
この番組はことばを育むお手伝い、ことばの専門家である言語聴覚士が、お子さんのことばの発達についてことばのお悩みについて、言語聴覚士についてお話ししているラジオです。
今回は、明晴学園のシンポジウムに出てきました、というお話をしていきたいと思います。
それでは、行ってみよう〜。

先週の土曜日ですね、7月9日、東京都品川区にあります私立明晴学園のシンポジウムに出席しました。
2022年バイリンガル・バイカルチュラルろう教育シンポジウムという、毎年開催されている明晴学園のシンポジウムです。
今年は久しぶりの対面での開催とのことで、タイトルがズバリろう児の思考スタイル、ろう児は聞こえない聴児ではないというものです。

明晴学園の先生と、言語聴覚士として明晴学園で仕事をされている阿部先生と、私、寺田奈々で鼎談をするというスタイルでシンポジウムは行いました。
参加されていない方がほとんどだと思うので、詳しい内容については音声でお伝えすることが難しいかもしれません。
ご参加されていない方に向けて、どんな内容だったかということをかいつまんでお伝えすると、聴こえないお子さんーーー生まれつき耳が聞こえないお子さんのことをろう児と呼びますが、ろう児は単に耳が聞こえない音が聞き取れない・ことばを耳で聞き取ることができないというだけではなく、ろう児の思考スタイルを発達の過程で育んでいくということを明晴学園の先生方から教えていただく機会となりました。
今回参加者としてお集まりいただいたのは、言語聴覚士資格をお持ちの方、言語聴覚士を目指す学生さんです。
私の立場はシンポジウムの登壇者ですが、学園の中からろう児さん達を見ているわけではなく、お集まりいただいた言語聴覚士の皆さんと同じ立場から、ろう児のお子さんはどのような考え方をして、どのようにことばを育んでいくのかということを探っていきたい・一緒に考えていきたいという役割です。

聞こえないお子さんは1000人に1人いると言われています。その1000人に1人の赤ちゃんは聞こえるご両親から生まれることもあります。反対に、耳が聞こえない親御さん・お父さんまたはお母さん、あるいはその両方が耳が聞こえないろう者のご両親から、耳の聞こえる赤ちゃんが生まれることもあります。
可能性としては、いずれの組み合わせも起こり得るということです。

先天性の難聴児さん・ろう児を取り巻く議論では、どう発見するかという新生児聴覚スクリーニングについての話題であったり、発見された後の対応をどうするかというクリニカル・パスの問題だったりが扱われることが比較的多く、おそらくよりかつてよりは増えてきたと思うのですが、それよりももっと一歩踏み込んで、ろう児さん・耳の聞こえないお子さんがどのような思考スタイルをとっているのかという、より人の本質に迫るテーマで今回のシンポジウムが行われたというのが、とても魅力的で画期的で非常に新しいものだったんだろうなぁと、終えてみて思います。

医療的な観点でどんなふうに"患者さん"へ支援していくかという議論をしていくと、医療者の立場の意見になってしまい、支援どうして"あげる"べきかと選択を迫る・選択を急ぐような議論になってしまいがちかもしれません。
もちろんそうしたことも社会では必要とされるので、いろんな支援体制というのは広げていくべきだし、制度ができるとそこに人が入ってくるので専門家が増えて喜ばしいことではあります。

ただし、主役となる耳の聞こえないお子さんが一体どんなお子さんなのかという視点もすごく大事ですし、そうしたことを知るのはとても時間がかかるものです。
知らないことがたくさんあるなぁと私自身感じましたし、そういうことに対して窓を開くというか、アンテナを立てるというか、そこにピンを刺すことができたのが今回のシンポジウムの一番の収穫だったのではないか、というふうに感じています。

シンポジウムの終わりに、「ろう者の言語聴覚士が全国にたくさんいたらいいのになぁ」ということをぽろっと言ってみました。
ろう者の言語聴覚士、私が知る限りは日本にはまだいらっしゃらないと思います。
資格を取るのを禁止されているわけではありません。
欠格自由という、資格を取るのに制限があるという法律上の制約は撤廃されたと聞いています。
もし、ろう者の言語聴覚士がろう児の言語発達を評価することができれば、より深く評価ができると思いますし、耳の聞こえない赤ちゃんの支援がより充実したものになるんじゃないかなぁと思います。

実は、明晴学園の先生方によってもうそうした支援は既に始まっているんですけれどね。
今回の配信を聞いて、明晴学園ってなに?と思った華tは、NHKのドキュメンタリー番組「静かで賑やかな学校」というタイトルのドキュメンタリーをご覧になっていただきたいなぁと思います。
オンデマンド配信、インターネットで観ることはおそらく今現在ちょっとできないようなので、たまに再放送をしているそのタイミングで、ぜひご覧になっていただきたいです。

学園の授業の様子が生き生きと特集されていて、そして生徒さんが実際にどんなふうに考えて学校生活を送っているのかといったことが、詳しく描かれています。

そのドキュメンタリー番組を作ったプロデューサーさんの書いた本も発売していて、筑摩新書だったかな?から、読むことができます。
ぜひ調べてみてください。


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