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エジプトでパスポートを紛失してから日本に帰るまでの話④

2024/1/2(火) ルクソール→カイロ
パスポート紛失から2日目

母の応援

目が覚めると,母から「町の役場が夜間・休日対応しているみたいだっから行ってみたけど,委託の職員しかおらんかった。臨時で空くのは1/4(木)で,それを逃すと1/9(火)からになるわ」と,連絡があった。

我が母親ながら仕事が早いと思うと同時に,力になってくれそうなことに一安心した。息子をエジプト人にさせたくないためだろうか,ありがたい。

1/4(木)であれば,ちょうど日本大使館の開館日であり,これはラッキーであった。ただ,戸籍謄本はすぐに入手できるものなのだろうか?

インターネットで調べると,申請から入手まで1週間はかかるなどの記事があり,そうなると日本までの帰国は1週間延びるかも!?とうろたえた。「すぐ入手できるよね? 大丈夫だよね?」と聞いてみると,「前は即日でできたから大丈夫」とラインが返ってきた。

母親の言葉を100%信じたわけではないが,とりあえずほっとした。何とか戸籍謄本は入手できそうだ。

ルクソールでの唯一の観光

朝食会場に行くと,Mさんがいらっしゃったので昨日の顛末を伝えた。「今は大変かと思いますが,後になったらいい経験になるよ」と,慰めてくれた。

「で,今日はどうするの? ルクソールに来たなら王家の谷ぐらいは行ってみたほうがいいんじゃない?」

確かにルクソールについて3日が経とうとしていたが,行った場所といえば警察署だけだ。

本日の夜行バスで大使館のあるカイロに戻る予定なので,ルクソールにいるのは今日が最後である。ただ,観光すべきという気持ちもわかるが,このパスポートを持っていない絶望の状態では,楽しめないというのが正直なところだった。

今日の予定としては,カイロ行きのバスチケットをバスステーションで入手すること,そして渡航書のための証明写真を写真館で撮影することである。

写真館はインターネットで調べても場所がわからなかったので,宿のスタッフに聞くと,バスステーションのまでの間にあるとのこと。

ただ,10時開店。現在は8時であり,とりあえずはバスステーションで今日の夜行バスのチケットを手に入れ,そして街をふらふらした後,写真館に向かおうと思う。

バスステーションでは,乗るバスの時刻と席を選ぶだけで,簡単にバスの予約ができた。その後することもないので,ふらふらとナイル川の付近を散歩していた。

ナイル川付近のルクソール神殿

ナイル川の周辺にはローカルフェリー乗り場などもある。その時ふと「ルクソールに来たなら王家の谷ぐらい言ってみれば」というMさんの声が,頭の中にこだました。

時刻は9時であり,写真館の開店までは時間があるうえに,午後に行っても問題ない。王家の谷は,ローカルフェリーでナイル川を渡り,タクシーで20分程度の場所にある。

この先ルクソールに来ることなどあるのだろうか? 絶望中ではあったが後悔したくないため,王家の谷へと向かうことに決めた。詳細は省略するが,王家の谷は,広大な砂の谷の中に洞窟が20個近くあり,その洞窟は王の墓になっていて,中には壁画が描かれているなど,日本では見られない光景に息を呑んだ。

日本に返ってきてからも思うが,あの時王家の谷に行っといてよかったと心から思う。

王家の谷の遺跡

ツッコミどころの多い写真館

王家の谷を満喫し,写真館へと足を運んだ。写真館は電気がついておらず,休み?と思い,店主らしき人に質問すると,どうやら停電中とのことだった。

これでは写真撮影は難しいかと思ったが,「ノープロブレム」とのこと。写真はパスポート用に使うことを伝えると,入り口近くに立つように指示された。

そして,おもむろにズボンのポケットからスマホを取り出し,「Smile!」と言って,撮影し出した。

停電とはいえ,一眼カメラは動くのではないか,と心の中で思いつつ,そんな贅沢は言ってられなかった。

スマホであろうと,証明写真さえ手に入れば十分なのだ。店主はそのデータをスタッフの人に渡して,そのスタッフはバイクに乗ってどこかに消えていった。
「彼はどこに行ったんだ?」
「プリンター屋に持って行った」

停電中であるかもしれないが,カメラはスマホで,印刷は他のプリンター屋ということを考えると,誰でも写真屋になれるのではないかと思わなくもなかった。

15分ぐらいするとスタッフが戻ってきて,印刷された8枚の証明写真ができあがった。50ポンド(約350円)である。

大使館からのメール

これで,エジプトで集めるべき①ポリスレポートと②証明写真が手に入り,残すは日本の戸籍謄本のみとなった。

帰国までに道筋が見えてきた喜びもあり,段々と絶望も薄らいでいっていた。もしかしたら予定通り1/4(木)の深夜の便で帰れるかもしれない,と本気で思えてきた。

しかし,そんな夢を打ち砕くかのようなメールが大使館から届いた。
「渡航書の発行後に,アッバセイヤ入管事務所という場所で手続きが済んだ後で,晴れて出国できることになります。
この入管事務所では手続きに時間がかかりますので,2日程度は見ておいたほうが良いかと思います。そのため,1/4(木)の深夜の便で帰ることは難しいかと,思料いたします(鈴木:仮名)」。
添付されていたアッバセイヤ入管事務所のホームページを見ると,営業時間は9〜13時までとなっており,1/5(金)は休みとなっていた。

つまり,大使館で1/4(木)の午前中に渡航書を発行できたとしても,この事務所で足止めをくらう可能性が出てきたのだ。

過去のパスポート紛失者のブログによると,この事務所が一番の鬼門のような書かれ方をしていた。一体いつになったら帰れるのか,また絶望に襲われた。

つづく

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