真夜中の嵐に
びゅぅるうぅぅぅぅ
ぶわあっぼごぉぉおぉぉぉ
ぶぁわあああああああ
ばばばばっばばがががーん
ああ、嵐だ。
夜中に大きく轟く風の中で雷獣の怒号が響く。
久しぶりの夜の嵐。
夜の闇を一瞬で吹き飛ばす閃光、窓ガラスはばんばんと騒ぎ、木造の家はみしっきしっみみみみしっと鳴いている。
壁一枚。
ガラス一枚。
屋根一枚(?)。
洗濯機の中にポトリと落ちて、ごうんごうんと回されているような夜なのに、部屋の中って不思議なくらい安全だ。
洗濯機の中に紛れ込んだガチャポンの中で、
うつらうつらと揺られている。
さっきまで、がおーっ!って叫んでいた雷獣が、いまはごろごろごろってノドを鳴らしてる。
雷獣は分厚い雲の布団にくるまって寝るのかな。
嵐の日は上も下も無くなって、身体が軽くなる。
ぶおってやってくる風に傘を合わせて飛んでいた頃を思い出す。
ランドセルの重みさえなければ、そのまま家まで飛んでいけると信じてた。
空に一瞬で描かれる光の絵を追いかけては
どごろんと響くおなかの揺れを楽しんだ。
いつもは静かな地面がここぞとばかりに跳ね上がって踊る姿が光って見えた。
どんなに大きな声で叫んでもうるさいと叱られることがない特別な時間。
激しい雨のリズムと雷のドラムが、風の叫ぶような歌声が私にとってはフェスだった。
そうして空を駆け上がり、虹に腰かけて燃えるような夕陽に手を振る。
朝になって昨晩の嵐なんか無かったかのように青空がきらめいた。
でも、そこかしこに
草の新しい芽がパッと開くときの、
花の蕾がふくっと膨らむときの、
木の葉が濡れた体をぷるんっと震わせて水をはらうときの、
あの、匂いがした。
真夜中の嵐の
夢とうつつの間に。
なんてね。
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