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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ の感想(ネタバレあり)

MOVIX京都で鑑賞。結構混んでた。

思春期の女の子が同調圧力に振り回されてドタバタする青春映画なのだけど、劇中でも言ってるとおり物心つく頃からコミュニケーションツールとしてSNSが当たり前にある今の中学生の現状が新鮮&地獄。

主人公ケイラは学校では明るく振舞えないけど、承認欲求を満たす為にネットで同世代応援ユーチューブをやっている。

実際は視聴者いなくて切ないし、そこで言う事が全て「今の自分がなりたい自分」で、本当の彼女の現状と重なって悲しい。
あれをやり続けるとあの中でだけは、なりたい自分になれちゃうので例え誰も見てなくても中毒性があるんだろうなぁと思う。
僕自身SNSとの付き合い方が全然上手く出来ているとは思えないし本当観ててしんどかったなぁ、、、

ただ彼女はそういう現実の「なれない自分」を「なりたい自分」に変化させようと必死に藻掻いている訳だし、決して内に篭らず外の世界で生きようと頑張っている良い娘だと分かるので、あのお父さん同様、応援したいし心配でほっとけない気持ちになってしまう。

まあ「ダサいと思われたくない」というのは、どの世代の人間でも味わった、というか今も味わっている普遍的な葛藤だし彼女の事を馬鹿に出来る人間なんていないと思う。

あのプールパーティのくだりの居たたまれなさ。
他人から見ればあれ位の体型全然大丈夫だと思うのだけど、周りの女子連中がモデルみたいな体型の子ばかり(マジふざけんな)なので本人からすりゃ気にするなというのが無理な話だし思春期ならそりゃダメージもデカい。
彼女の恐怖心が痛い程伝わる更衣室で過呼吸になる所で思わず泣いてしまった。

ただプールに来ても誰も気が付いてないのが、それはそれで辛い。
あと見ているだけでしんどい誕生日のプレゼントコーナー。
でもこういうの毎回思うんだけどプレゼントしてやってるのに、なんでこっちが傷つかないといけないんだよ、って話ですよ。
サプライズでプレゼント貰うとかなら反応に困るのも分かるけど、事前に来るの分かってんだからどんなしょうもないもん貰っても笑顔で「ありがとう」を言う心の準備しとけよ!バカガキ!(個人的な意見です。)

ただその後、好きなエイデン君に声掛けてもらったりカラオケでいい感じに歌えたりして、自信を取り戻す。
この辺のさっき「死にたい」と思っていたのに一気に「人生の絶頂」に変わる心の振り幅とかめちゃくちゃ若さを感じる。

高校の体験入学の時にイケてるお姉さんと仲良くなり、ショッピングモールに遊びに行ったりするのだけどここのグループでの会話とか凄く面白かった。若い子同士でもめまぐるしく変わるSNSの変化で世代感覚が数年差でも全然違うんだなぁと当たり前ながら思った。

このお姉さんもどこまで本音でケイラの事を想っているのかは分からないけど、ケイラの立場からすればこの人を通して居場所を見つけられるかも知れない期待で胸が一杯になってたし、クソ男から車で送られるくだりは本当ハードだった。

その後、父親と一緒にタイムカプセルを燃やしながら「私が母親だったら私みたいな娘を愛せる自信がない」みたいな事を思わず言ってしまう所でポロポロ泣いてしまった。

自分で自分で愛せる自信がもう無いこと、ここまで語られてこなかった母親への想い、など彼女に感情移入してしまうのもあるのだけど、その他にかつての自分にも確かにあった思春期の自己嫌悪の時期とかを色々思い出してしまった。
父親の言葉も不器用で優しくて演じてたジョシュ・ハミルトンが本当素晴らしかった。劇中の父から娘としてのメッセージだけじゃなく、生きづらさを抱えた誰にも響く素敵なシーン。

他にはコミカルなシーンも沢山あって、何回も声出して笑った。
特に父親との会話シーン最初の食事シーンはウチの妹と父親のいつかの会話を見ている様な気持ちになった。あとバナナの所の父の「なんなんだ、一体、、、」って顔大好き。

それとラストの男の子とのチキンナゲット食べるシーンの微笑ましさにニコニコ。
明らかにそのテーブルだとその席じゃないよね。遠過ぎる事によるカットの切り替えに笑った。

これくらいの年頃の子を描いた青春モノとしても普通に良かったし、作り手が意識的に今の時代のこの瞬間を生きている空気感をすくいあげようと描いている事で、数年後とかに観るとより味わいが増しそう。

そんな感じで僕は大満足だった。この先も大変だと思うけどケイラちゃんの幸せを祈っている。グッチ―。

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