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イップ・マン外伝マスターZの感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。朝一の回だったけどかなり埋まってた。

こういう映画は京都では休業中のみなみ会館案件なので、遅れて出町座か、スピンオフ映画だし最悪やらないかも、、、、と心配してたけど、まさかのイオンシネマ京都桂川。一番近い映画館なのでありがたい。

本当最高だった!というか個人的にはイップマンシリーズ最高傑作だと思う。マックス・チャンのアイドル映画としても、こんな魅力が爆発してたのはドラゴン・マッハ以来じゃないだろか。

舐めてた雑貨屋の店主がマックス・チャンだった

これまでハリウッド映画や香港アクション映画の第一線に常に関わっていたのに、なかなか表舞台に出れなかった男、マックス・チャン。
前作の「イップマン継承」はその辺の彼の苦悩を折り込ませたチョン・ティンチ役を見事に演じていた。そういう意味でティンチの物語的には今回の映画が完結篇になっている。
ロッキーシリーズ等もそうだけど、こういう主演俳優の人生と主人公の人生が化学反応を起こしてより素晴らしさが増す映画は最高に決まっている。

キャラクター的にイップマン程は丸くないので理不尽な仕打ちに対しては、ほぼ我慢せず殴り込みをかけるあたりも好き。家を放火されて新しい住まいを見つけて落ち着いたと思った直後に、速攻で敵のアジトに乗り込んで全員ボコボコにしてアジトを全焼させるテンポの良さとか痛快で笑ってしまった。「借りは作らん、働く」とか言ってた割に、すぐ客のライターぶっ壊した所は「こいつ馬鹿なのでは、、、?」とか思ったりしたけど、周りの人がみんな良い人で良かった。良かった。

言葉よりアクションで語るキャラクターの深み

登場人物の背景はそういう、いい意味でのいい加減さを基本に分かり易く紹介されていくんだけど、アクションシーンで深みを出して語られていくのが本当に素晴らしいと思う。

例えばミシェル・ヨー演じるクワンがキットに説教してるシーンでクワンがキットの連れてきた大量の子分にリンチされそうになり、いい顔つきの側近の人と二人だけで子分たちと闘うのかと思いきや、そこにキットの命を取りに乗り込んでくるティンチとフー。
そこでクワンはキットを守るためにティンチと闘うという選択をする。
ここまできても弟を見捨てられないクワンの複雑な思い、どんな状況でも鉄の意志で彼女を守ってきたのであろう側近の男、恋人を殺された怒りを見事に体現したパワースタイルで敵を吹き飛ばしていくフー、それに殉じ義を通そうとするティンチ、言葉ではなくアクションで彼らのスタンスが観ていてだんだん深いものになっていく感じが映画的で凄く良かったと思う。

あと何と言ってもラストバトルでティンチが詠春拳をもう一度取り戻す所の感動は凄かった。

まず倒れた彼の目線になる所、ロッキーシリーズなどでもお馴染みなダウンした主人公の心象風景になるシーンは出てくれば間違いない。
イップマンシリーズにおいて木人椿は十字架とか仏像と同じ存在なので、彼が折れた木人椿をもう一度丁寧に直して再び立ち上がるシーンはまあ泣く。
ここから見事なのはこれまでのアクションと段違いに動きのキレが変わる点。僕は正直本人が詠春拳を封印してるとは言ってたけど動きはこれまでのシーンでも充分凄かったし、言うても使わなくても問題ないんじゃない?と思いながら観ていたので、ここからアクションだけで「もう迷いはない」という事を体現してるマックス・チャンの素晴らしさにさらに号泣。あとここでお馴染みのイップマンシリーズのテーマ曲がちょっと流れるんだよ!クリードかよ!最高過ぎる!バウティスタがフーを殺した技をかけようとして逆に投げ飛ばされる所は思わず拍手しそうになった。

どいつもこいつも武闘派ばかり、魅力的な脇のキャラクター

デイヴ・バウティスタの悪役っぷりも見事だった。身体能力的には、ほぼドラックスで半端な技が全く効かないパワーファイター。このただ力だけの男というのが、もう一度詠春拳を取り戻しティンチが技=心で勝つ展開に相応しい相手だと思った。

あとミシェル・ヨーもカッコよかった。やっぱりこの映画1番のスターだけあって単純にめちゃくちゃオーラがある。
弟の件で色々と板ばさみになる家長としての苦悩を見事に演じてて、女版ゴッドファーザー役がバッチリはまってた。
美しい剣さばきでのマックス・チャンとの対決はこの映画の白眉の一つ。

あとその弟キットもなかなか強烈なキャラクターだった。身体が弱かったり父親との関係があんまり良くなかったり、色々気の毒な事もありアネゴもあんまり強く言えなかったせいか、とんでもないワガママクソ野郎に育ってしまった男。悪行の数々をよく考えたら正直腕一本で済むレベルじゃないと思うが、もしかしたらあのしょんぼり旅立って行ったのは、今後のイップマンシリーズに再び登場して過去を清算する様な展開があるのかもな。

トニー・ジャーはよく分からないけど僕は出てくるだけで楽しい気分になるので、いるだけでオッケー。マックス・チャンとのバトルはドラゴンマッハ観て以来で熱い。しかし謎の殺し屋以外の情報がなくて一人だけリアリティが違い過ぎて笑った。あとティンチとの第二回戦の闘う理由がよく分からなかったの僕だけかな、、、急に襲い掛かってきた様に見えたし、ターゲットになってるとかならバウティスタを殺した時みたいに常に狙ってこなかったらおかしいし、、、まあトニー・ジャーだしいいよね。

あとバウティスタ殺害方法がぶっ飛びすぎててビックリした。あれ別にバウティスタのコンディション関係なく殺せそうだし、よく考えりゃティンチがあんなに頑張って闘った意味が薄れる、、、まあトニー・ジャーだしいいよね。

ヒーロー映画としてのツボ

あと僕がヒーロー映画に求める「普通の人にはどうする事も出来ない理不尽」に対して主人公が「任せろ、俺がやる」とカッコよく立ち向かうシーンがラストにあった事。今時あそこまで馬鹿っぽく燃えるセリフを堂々と入れてくる辺り監督には好感しかない。
映画秘宝の特集で岡本敦史さんがユエン・ウーピン作品はアクションの見応えと心地好い「ちょうどよさ」があると、書いていたけど本当にその通りだと思う。深い悲しみとか登場人物の重みを描きすぎないのが偉ぶった印象を残さなくてとても好き。

マックス・チャンは自ら製作会社を設立して、今後は監督兼主演映画を作るって宣言してるらしいので、この先の活躍も本当楽しみだ。

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