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シャザムの感想(ネタバレあり)

MOVIX京都にて鑑賞。MOVIXデイ万歳。

超人的な力を授かったらやりそうな事をアメリカの今の少年の目線に徹底して描いてるのが新鮮で面白かった。
若いヒーローモノだとMCUのスパイダーマンホームカミングとかもあるけど、彼はあくまで教科書的なヒーローの型に習って真面目に活動してたのに対して、コイツらはヒーロー活動じゃなく、「そこまでガキなのか、、、」というその場で思いついた事を片っ端から試していき、あくまで悪ふざけの延長線でキャッキャやってるのが微笑ましい。ヒーローというか大人の身体になって試してみたかった事で「ビールを買って飲みたい」とか「ストリップ劇場に入りたい」とかは全世界共通の中学生男子の夢なんだなぁ。

凄まじい量のギャグシーン

とにかくギャグが沢山あって楽しい。クイーンの「Don't Stop Me Now 」に乗せてスーパーヒーロー能力をYouTubeにアップするくだりとか軽快に笑わせてくれるのと同時に、能力的に何が出来て何が出来ないのかの説明にもなってて語り口としても巧み。

舞台がフィラデルフィアなのでロッキーネタぶっ込んでくるのも最高。アイ・オブ・ザ・タイガーに合わせて美術館の前でしょうも無い電気芸を披露してるのは爆笑した。(最終的に巻き起こす事態もヒドイ)。
ただ彼らが初めて美術館の前に座って2人でお菓子食べてるシーンは「クリード~チャンプを継ぐ男~」でのロッキーが言った「この階段の上に立つと飛べる気がした」ってセリフを思い出して、悩める少年二人の「俺らの人生変わるかも!」という高揚感も相まり不覚にも泣いた。

最近のヒーロー映画お馴染みの敵との間合いが遠くに離れ過ぎなのをギャグにしてるのは笑った。マーク・ストロングがいかにも悪役が言いそうな事を一生懸命話してる顔が面白い。

あとギャグを絡めながらビリーを見守る里親や仲間や警察官たちが基本的に優しいのも好き。彼に対して手を差し伸べる姿勢をみんな見せるのに彼は踏み出せないんだけど、なんというか大量に出てくるギャグが彼の不幸な境遇を守っている様に見えて実はすごく優しい映画な気がした。

主人公2人の魅力的なガキっぽさ

パンフにどこにでもいる14歳って書いてたけど警察官閉じ込めてパトカー乗っ取る普通の14歳はいないだろ。そこまで凶行に走るのは生き別れになった母親を探してもう一度暮らす事を夢見ているから。

シャザムに変身した状態の方が子供っぽさを隠さないバランスにしてるのは良いと思った。境遇から考えて彼は普通の子供として生きられなかった故にタフに装っているんだけど、スーパー能力を手にした別人になる事で本来持ってる陽気さを解放させてる感じが僕は嬉しくなったなぁ、ちゃんと子供なんだと分かって。

主人公の相棒化していくフレディ。ITでペニーワイズにゲロかけられて頑張ってた記憶が新しい、しばらく見ない間に大きくなったなぁ。 自分の身体の不自由さ故にビリーとは違う欠落を抱えている。登場からしゃべりまくって「ゲーム・オブ・スローンズだ」って言うシーンとか笑っちゃうんだけど、自虐的にジョークにする事で心を守ってる様で改めて考えるとちょっと切なくもある。(ちなみこのゲースロジョークはS1の第一話のネタだから見始めたらすぐチェック出来るよ。)だからサイドキックではなく彼自身がヒーロー能力手に入れて闘う所は本当心の底から「良かったね!」という気持ちになった。

とにかくこの孤独な二人がやっと親友を見つける事が出来てはしゃいでるのを観てるだけで楽しい。同年代の俳優二人の息のぴったり具合も素晴らしいんだけど、シャザム化した状態のザッカリー・リーヴァイの全く違和感なくここに入っていける名演が本当凄い。オフショットの写真見てるだけで幸せな気持ちになる。

その他最終的にシャザム化して闘う事になるのメンバーもみんなキャラ立ってるし、それぞれの見せ場の作り方もしっかりしていた。この辺はアナベルから通じる登場人物を紹介していく交通整理力の高い監督の手腕が光る。

そういやこの娘、死霊館顔の美人だと思ったらやっぱりアナベルに出てた娘だった。可愛い。

大人になれていないヴィラン

主人公の事を子供だとさっきから言ってるけど、今回一番大人になれていないのはヴィランであるシヴァナなのが映し鏡的で面白い。「あの時俺は特別な人間になれたのに!」と過去に囚われ、血の繋がった家族が弊害になって他者を思いやる事が出来ず大人になれない。境遇が真逆なのに主人公のあり得た未来でもあるキャラクター。

まあ、しかしそもそも今回一番悪いのは魔法使いのこいつだと思う。ヒーローの選別方法、乱暴過ぎるだろ。だって選別の試練の為に封印してる魔物使って(人を誘惑する力は残してるので完全に封印出来てないし)、そのせいでシヴァナの人生を狂わせてるんだから、お前のヒーローの選び方が一番害悪だろって気がする。ビリーをシャザムに選んだ理由もビタイチ納得出来ないし、シヴァナからすりゃふざけんな!ってなるよ、そりゃ。

この辺の若者に対して配慮のない魔法の試練を半ば無理矢理強制してくる感じ最近だとジュマンジに近い感じがした。何十年も心が囚われてしまう人がいたり、別の身体になる事で自分の生き方を見つめ直す所とか、最終的な解決策が他者との協力である事。(そういやシャザムはこないだのジュマンジの主演ロック様も製作総指揮に入ってたり次作のヴィラン演じるという話もあるみたいだ)

闘いのロジックの上手さ

ラスト文字通り1人じゃないから勝てる、という展開が全く予想出来てなくて驚いたし泣いた。この辺MCUの同年代ヒーローのスパイダーマンは「ホームカミング」で孤立無援になった時にヒーローとしての自覚が芽生えていたのに対して、シャザムは1人ぼっちの彼が誰かを信じる事でヒーローとして目覚めていく、という真逆の構図になってるのも面白いと思う。

あと敵が映し鏡的に同じ孤独を抱えていたからこそ分かる「嫉妬」をガキ故の生意気さで引き出すというのも上手いと思った。この辺の敵の強さのルール設定と闘いのロジックがちゃんとしてるのは偉い。これはさすがライト/オフの監督だなぁと思った。

そして敵を殺して解決にしないのも良かった。そこまでいくと他のDCヒーローと同じ苦い成長を経験して大人になってしまうし彼らは子供のままのヒーローでいて欲しかったので。

そんな感じで「魔法使いがクソ!」という要素以外はとても楽しく観れた。アクアマンと同じ位好きなDCEUの新たな傑作だと思った。

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