【小説 沙門清正】沙門SEISHO 祇園とZIONをかく語る


川豆田 恵 事務の女性
笹伊 博文 漢文講師
浜田 英語講師

「そうするとやはりまた、あの川豆田の虚言癖ですか」清正は目の前の沖浦和光の書いた本を読むのを止めながら、隣の席の背の高い男に聞いた。
「そうです。川豆田の虚言です。僕はあんなしわだらけの女に言い寄るような性癖はありません。」男はしっかりと清正の方に柔和な顔を向けて答えた。姿勢がよいのは学生時代に柔道をやっていたからであろう。仕立ての良いサイズのきっちりと合ったシャツで細身に見えるが、薄くはあるものの最低限の筋肉がついていることがみてとれる。

「浜田先生の言葉を信じましょう」清正はこともなげに答えた。清正が浜田と呼んだこの男は一人暮らしでありながら、自宅にウサギを飼っており、清正は、これは浜田が予備校の講師でありながら、依然としてストリートナンパをしており、声をかけた女を自宅に誘うための方便に使うためだと読んでいた。女に関して百選練磨の半田が、わざわざこどもが四人がいながらセックスレスを原因として離婚調停中の40過ぎの曰く付きの物件である川豆田を狙うことはあるまい。事前のスクリーニングでこのような地雷女は、外しているはずだ。

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