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8/30 ドナルド・キーン『明治天皇』上巻読了

おはようございます。
のろのろ台風サンサンは東にずれていきましたが、まだしばらく雨が降り続く予報の糸島。おかげで読書が進みます。

さて、ドナルド・キーンの『明治天皇』、なんと上巻は566ページ、重さもかなりあるため、携帯には向きません。
とにかくものすごい資料の量です。ドナルド・キーンさん、コレを書くにあたって、ありとあらゆる資料にあたったそうです。特に彼の場合、日本語だけでなく、英文資料もありますからね。
「註」に書かれた細かい文字を読むのが大変です。しかし、そこをちょっと我慢して読めば「なるほど」という面白さがある。

日本人がなかなか触れられない、書くことをはばかるといった方がいいのかもしれない「天皇」という存在。古事記や万葉集も研究されたキーンさんの視点からみた明治天皇、面白くないわけがない。
とはいえ、最初こんな大作、読み切れるか、ワタシ?と躊躇したのも事実。
しかし、いざ読み始めたら惹き込まれてしまいました。
本書は明治天皇の前の孝明天皇から始まって、幕末から明治にかけての動乱期も描かれていて、実はよく理解できていなかった日本史の復習にもなりました。
高校時代、司馬遼太郎の『燃えよ剣』で土方歳三ファンになり、京都の壬生寺や会津に行ったりしたもんです。たんなるミーハー、局所的なことは知っていても、潮流が読めてなかった。ですから、本書で幕末の大きな流れ、尊王攘夷とか、王政復古とかの意味について初めて知ったような感じです。
その流れのなかに15歳で即位した明治天皇がいたんですねぇ。

ミーハー的には、華流ドラマ『瓔珞<エイラク>~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~』の皇帝と後宮の関係が参考になりました。とにかく跡継ぎをたくさん作らなきゃならんのはいずこも同じなんですね。
さらに皇室の出産事情にはちょっとびっくり。乳児と出産した母の死亡率が非常に高かった。当時がまだ「出産は命がけ」の時代だったとは。

500円札でおなじみの岩倉具視が、明治天皇のおそばにいた人物だったこともこの本で知りました。グーグル先生によれば加山雄三は岩倉具視の玄孫にあたるとか、そんなことを知るとなんだか急に親近感ですね。

明治天皇はお酒がお強かったそうで、側近の方々が「酒量を控えますように」との提言が何度か出てくる。
また、日記はお書きにならなかったが、生涯にわたって和歌を何十万首おつくりになられたそう。そういえば、明治神宮の手水舎に明治天皇と皇后様のお歌が掲げてあり、毎月入れ替えられていたんでした。ワタシごときにも分かりやすいお歌が多くて、毎月新しいお歌を詠むのが好きでした。

これから下巻は戦争の局面に突入するので内容もハードになるかと思いますが、読み通したいと思います。ドナルド・キーンさんも熱量もすごいが、角野幸男さんの訳も素晴らしい。二人三脚とはまさにこのお二人のこと。
ちなみにキーンさんは日本語堪能であるにもかかわらず、あえて英文で原稿を書き、それを角野さんが日本語に訳し、それをもう一度キーンさんに戻すというやり方をしたそうです。角野さんもキーンさんと同じ文献にすべて目を通すことをしたそうで、質が上がるのはそりゃ当然です。プロの仕事は読み手にも快感です。
ご自身が日本語で書かなかったキーンさんの意図は「日本のことを世界に発信する立場」から。これはキーンさんが初めて英文訳の『源氏物語』に出会い、日本を知りたいとこころから願い、日本語を習得し第二次世界大戦の日本語通訳を経て、やがて日本に永住するにいたる長い物語の軸になるものです。キーンさんは、おそらく世界に向けて類まれな日本文化を発信する役目を担っていたのでしょう。
だからこそ、日本人が書かなかった明治天皇を書いた。
深い、深い愛と精神性を感じます。

ふとマイ書棚の内田樹コーナーを見たら、コレがありました。
面白かった印象、ポストイットもいっぱいついてる。しかし内容はほぼ覚えていない。くぅ~、コレも読み返さねば、です。

キーンさんは三島由紀夫とも親交が深かったそうです。
ドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』は鮮烈な内容で、いかにチキンヘッドのワタシでも三島の発言は忘れない。
「君たちが安田講堂で一言、『天皇万歳』と言えば、私は喜んで君たちとともに戦った」

日本人の根底には天皇の存在がある、これは大きいし、特異でもあると思います。こんなちっちゃな島国に、なぜ今世界中から人がやってきているのか、このことです。
で、このタイミングで『明治天皇』を読む必然。

ではでは今日もご機嫌元氣でありますように。
お付き合いありがとうございました。





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