近鉄特急ひのとりに乗ってみた

グラン昼特急に乗った翌日には近鉄特急ひのとりで名古屋まで戻った。ひのとりにはプレミアムシートとレギュラーシートとがあるが、たった2時間の乗車時間でJRのグランクラス相当の座席に乗るまでもないと思ってレギュラーシートにした。レギュラーシートは通常の特急料金プラス200円、プレミアムシートは通常の特急料金プラス900円なので、レギュラーシートとプレミアムシートとの差額は700円である。

レギュラーシートといえどもシートピッチが1160mmもあるし、バックシェル式なので後ろに気兼ねなく背もたれを倒すことができる。靴を脱いで足を乗せられるタイプのフットレストもついており、JR在来線の4列シートのグリーン車並である。ちなみに近鉄特急のシートピッチはサニーカーやビスタカーといった古い車両が980mm、アーバンライナー以降の新しい車両が1050mmである。バックシェルが場所を取るがそれでも新しい近鉄特急と同等の足元空間が確保されている由。

実際に乗ってみるとレギュラーシートながら想像以上に立派である。インテリアの質感は小田急VSE並みに高く、車内は静か。普通の近鉄特急の料金に200円プラスするだけで乗れるのは素晴らしい。4列シートではあるが、隣が空席ならむしろ3列シートよりも快適ではないか。

肘掛けにはAC電源がありWiFiもあるので退屈しない。テーブルは大きくてしっかりしているのでPCを使った作業もやりやすそうである。窓は座席1列ごとに1枚であり、窓割による座席の当たり外れが無いのが良い。

これだけ快適であれば比較の対象はEXこだまグリーン早特だろうか。ひのとりもこだまも1時間ごとでこだまグリーン早特で6090円、ひのとりは難波から名古屋までレギュラーシートで4540円、プレミアムシートで5240円と、プレミアムシートですらこだまグリーン車よりも安い。所要時間はこだまの1時間8分に対してひのとりは2時間8分と1時間余計にかかるが大阪南部や東部を起点にするなら所要時間の差が縮まる。

大阪線は河内山本を過ぎた辺りから大和川沿いの渓谷に入り、大和盆地を抜けて桜井を過ぎた辺りから山の中をぐんぐん登っていく。連続登り勾配でも110km/hくらい出ていた。伊賀盆地を経て青山峠を越えて川合高岡辺りから平野部に入る。伊勢中川のデルタ線を通過すればあとは名古屋線を走るだけである。

今では名阪甲特急でも津に停車するが、おかげで津で降りると数分後に名古屋行に名伊乙特急が来て、白子や四日市や桑名に行くことができる。反対方向も、津で名伊乙特急が出てから数分後に難波行のひのとりが発車することで接続が取れている。これらの駅から大阪方面へは名阪乙特急のアーバンライナーなら乗り換えなしだが、津でひのとりと乗り継いだり、伊勢中川で阪伊乙特急と乗り継ぐことで1時間に3本利用できる。近鉄の特急ネットワークはよく練られている。

意外にも津からの乗車もそこそこあった。名古屋行の急行から乗り継ぐと名古屋到着が20分ほど早くなるようである。

名古屋線は平野部を走り比較的線形が良いが、列車密度が高くて先行列車に追いついてしまうため、意外とスピードが出ない。そうしているうちに名古屋に到着する。車窓の景色が変化に富んでいるのは大阪線の方である。しかし車窓の眺めに興味がなくても車内で退屈することはない。たしかに2時間以上乗っていると途中で飽きてくることもあるがが、そういうときのためにプレミアムシートの前に飲み物の自販機があったり、ロッカーの前にフリースペースがあったりする。

飲み物の自販機はお金をいれるタイプのコーヒーマシンで、車内販売のコーヒーと同じくらいのコーヒーが車内販売よりもかなり安く買える。もちろんコンビニのコーヒーよりは高いが、荷物を持って移動するときにコーヒーカップを持ちたくないので、車内で購入できるのはありがたい。新幹線でも数両に1台くらいの割合で設置してほしいくらいである。使わなくなった喫煙スペースや車販準備室を自販機スペースに転用できないものだろうか。

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