若松線の蓄電池電車に乗ってみた

架線集電式蓄電池電車の元祖、若松線の蓄電池電車に乗ってみた。秋田の男鹿線の蓄電池電車のOEM元である。

直方駅と若松駅との間を走っており、直方折尾間では架線集電、折尾若松間では蓄電池走行である。架線集電区間では停車中に蓄電池に充電するが、力行時、惰行時、回生制動時には蓄電池への充電は全くなされない。

停車中に急速充電するとパンタグラフに接触する架線が熱で溶断するリスクがあるので、なるべく走行中に充電するのが望ましくて、停車中に充電するなら烏山駅のように剛体架線による充電が必要なのではないかと思っていたが、交流20000Vだと電圧が高い分、架線に流れる電流が少なく、熱容量にも余裕があるのだろう。停車中の急速充電で問題ないなら、架線集電時には電車と同じ回路にしてしまった方が制御がシンプルでコストが安いのだろう。

折尾と直方の間の駅で停車中に充電するとなると、往復する間に16回急速充電することになる。直方で20分停車し、他の駅で30秒停車するとなると、充電時間は30分弱である。蓄電池走行時間は往復で32分なので、架線から急速充電するならたしかに賄えそうな感じである。しかし折尾若松間の区間運転の場合、折尾駅でしか充電できない。折尾駅での折り返し時間は平均10分程度しかない。とはいえ、停車時間を差し引いて正味20分の走行に対して10分間の急速充電なら関電蓄電池バスと同じくらいなので、充電速度が同じなら何とかなりそうである。短時間の停車時間で急速充電できるなら、たしかに香椎線でも香椎駅での停車時間だけで充電できそうである。

男鹿線の蓄電池電車では力行時にも蓄電池に充電していたが、これは非電化区間の走行距離に加え、50Hz仕様は60Hz仕様よりも時間当たりの充電電力量が小さいというのもあるかもしれない。となると、男鹿線向けにはいろいろな設計変更が入ったのだろう。

回生制動時については、架線電圧が上昇すると回生失効のリスクがあることから、架線に戻るよりも蓄電池に充電できる方が回生制動が確実に効くのではないかと思ったが、プリウスのように満充電になると回生制動が効かなくなると充放電制御が複雑になるので、敢えて架線に戻しているのかもしれない。それで回生失効しないなら問題ない。筑豊本線の列車本数で回生失効しないかどうかはわからないが、鹿児島本線なら十分な電力需要がある。

蓄電池走行時には他の蓄電池電車と同様に蓄電池からの電力で力行し、回生制動時には蓄電池に充電される。

気動車との比較では、やはり蓄電池電車の方が音が静かで震動がなく乗り心地が良い。

しかし不思議なのは、ラッシュ時に1時間に4本、日中に1時間に2本走るくらいの列車本数ならどうして電化しなかったのかである。電化の妨げになるようなトンネルもない。しいていえば陸橋が3本あるくらいである。折尾若松間は複線だが、たしかに複線のまま電化するほどの乗客数かというとそうでもない。単線で1か所に交換設備があれば十分だろうが、単線化するのにも費用がかかる。それで蓄電池電車の方が電化よりもコストが安いという判断になったのだろう。

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