カタール航空に乗ってみた(過去の記録)

ヨーロッパへの格安ビジネスクラスの中でカタール航空が最も安かったので、遠回りだが利用することになった。ドーハまでの往路は成田発の777-300ER、復路は羽田行のA350-900である。

【カタール航空はなぜ安い】
カタールは天然ガスと石油の輸出が主産業なのでドーハハブではほぼ原価で燃料を調達することができ、それがコスト競争力の源泉になっている。カタールもアラブの他の産油国と同様に天然ガスと石油の輸出に依存した状態から脱却し新しい産業を育成しようとしているので、石油という原料に付加価値をつけて航空輸送というサービスを輸出しようとしている。乗客の大半は外国人なので外から運賃収入が入ってくるし、ドーハの空港での雇用も生まれる。

【成田発の777-300ER】
《成田への交通》
成田閉店間近なので成田への交通機関は空いている。道路もさほど渋滞しないので快適に移動できる。

《成田空港》
カタール航空はワンワールドに加盟しているので、地上業務はJALが行っている。

オンラインチェックインを済ませていれば多少早いものの、結局カタール航空専用の搭乗券に差し替えられるので、多少早い程度である。エコノミークラスだとオンラインチェックイン専用のカウンターがあるので並ぶ時間が短くて済むが、ビジネスクラスのカウンターは空いているので、普通にチェックインするのでも問題ない。

ラウンジはサクララウンジである。閉店間際なので空いているかと思いきや、そこそもの数の利用者がいるのが意外だった。機内で食べずにすぐに寝たいならラウンジでしっかり食べておけば睡眠時間を増やすことができる。機内食は離陸後と着陸前の2回出るので、離陸後の機内食を食べるつもりならラウンジではあまり食べない方がよいだろう。

時刻表では成田発22時20分だが、成田の門限対策で毎日22時発に変更される。カタール航空の発着はサテライト側の81番なのでラウンジからの移動を早めに済ませる必要がある。しかしその割には機内整備に時間がかかるようで、結局ゲート前で待たされる。

《座席》
成田便は比較的古い777-300ERなので、半個室タイプではなく、一昔前のビジネスクラスで標準の、横2列並んだ席でフルフラットになるタイプである。しかしこのタイプの方がフルフラットにした際に足元が広いので、夜行便にはこちらの方が向いているかもしれない。フルフラットにしてマットレスを敷くと寝台車くらいの寝台になる。

夜行便だとパジャマを貰えるので着替えれば快適だが、もともと長距離国際線に乗る際には楽な服装をするものなので、わざわざ着替えるのも煩雑である。しかしスーツで乗り込んでしまった場合にはパジャマに着替える方が快適だろう。このパジャマは薄くて着心地がよいので、旅先や自宅でも重宝する。パジャマはS、M、Lの3種類のサイズから選ぶことができ、全般的に日本人の体格では大柄である。

《機内食》
夜行便のため、1食目は軽食で2食目は朝食である。すぐに寝たいなら1食目を飛ばすとその分早く寝ることができる。軽食はアラビア料理と和食から選択できる。成田発でTFKのケータリングなので安心して和食を注文できる。夕方過ぎに食べたきりで空腹なら食べておいても損はないが、食器を片付けてもらえる頃には離陸から2時間ほど経過しているので、夜遅くまで起きているのはつらい。

ビジネスクラスでは好きな時に好きなものを注文できる仕組みだが、夜行便ということもあり1食目を離陸後すぐに注文する人が多い。2食目はめいめい目が覚めた時間に注文することになる。朝食はメインディッシュを選ぶことができ、アラビア料理だけでなく通常の洋食も選ぶことができる。

《機内エンターテインメント》
エコノミークラスも含めいまどきのオンデマンド方式なのでチャンネル数はとても多い。カタールはイスラム国なのでコーランはもちろんあるし、アラブ系のチャンネルは多いが、インド人の出稼ぎ労働者が多いのか、ボリウッド映画も充実している。「メッカに向かってお祈りする際には座席に座ったままでお願いします」なんて表示も出る。

《機内の雰囲気》
エミレーツほどこてこてのアラブ風ではないので、とっつきやすい。客室乗務員もフレンドリーである。

《飛行ルート》
成田B滑走路を離陸したら西に向きを変えて幕張から東京湾岸を飛び、そのまま都心を経て三多摩地区の上空を飛ぶ。眼下に横田基地が見えるが、高度を十分に稼げているのか、そのまま横田空域の上空を通過していく。さらに真っすぐ西へ向かい若狭湾や隠岐の上空を飛び、北朝鮮を避けるように少し南下して韓国北部の上空を飛んでから再び北京へのルートを取る。そのまま西に向かいウルムチの上空から高い山を越えて中央アジア各国の上空を飛んでいく。山越えの際には乱気流でよく揺れる。イラン上空ではそこかしこに街の明かりが見え、乾燥地帯なのに意外と都会である。そのままペルシャ湾を横断してドーハに到着する。定刻では朝5時着なのだが、この距離ほぼ大圏ルートで飛んで12時間40分もかかるはずはなく、定刻よりも1時間早い朝4時頃に到着する。成田には門限があるので出発が23時以降に遅れることは不可能であり、どうして所要時間にそんなに余裕を持たせるのかよくわからない。

【ドーハ空港】
《ターミナルビル》
ターミナルビルは1つだけで普通のサイズなので、そこだけ見ると乗り継ぎが楽そうに見えるが、この規模のターミナルビルだけで世界中に行くカタール航空の便のすべてを捌けるはずはなく、沖泊めがかなりの割合にのぼる。しかもバスゲートはターミナルビル1階にまんべんなくあるので、一番遠いゲートEまで行ったあげくバスゲートということもある。ボーディングブリッジのあるゲートと同じ数だけバスゲートがある。ターミナルを拡張できればよいのだが、あいにく拡張の余地がない。ランプバスはエコノミークラス用とビジネスクラス用とに分かれており、エコノミークラス用は他の空港と同様だが、ビジネスクラス用は座席がゆったりしている。ターミナルビルの端から端まで歩くことを考えればランプバスの方が楽だともいえるが、それでも少々時間がかかる。

ゲートDやEまでは遠いので、大空港によくあるゴムタイヤ式ケーブルカーがゲートCの真上に通っており、ゲートDやEの手前まで行くことができる。線路自体はゲートDとEのそれぞれまで伸びているが、実際の運用はゲートDやEの手前までのようである。

寒い季節にカタールを経由すると冬服を着ているにも関わらずカタールでは暑いので暑さ対策をどうしようか気になる所だが、幸いターミナルビルもランプバスも冷房がよく効いているので上着を脱げばどうにかなる。

《ラウンジ》
乗り継ぎ客用のセキュリティチェックを越えるとすぐ近くにラウンジがある。ラウンジは広大でダイニングエリアやクアイエットエリアがあるので用途に応じて使い分けることができる。シャワーはトイレの入り口にある。カタールはイスラム国なのでお祈り用の部屋もある。

【羽田行のA350-900】
羽田便は2019年1月1日からA350-1000になり、ビジネスクラスは最新のQ-Suiteになるので、あくまでも2018年12月31日までの情報である。尚、羽田便がA350-1000になった後でも成田便の機材は当面は777-300ERのままである。

《座席》
A350の長距離便ビジネスクラスで標準的な、一人掛けの座席を斜めに配置したヘリンボーン式である。カタール航空の787でも同様にヘリンボーン式を採用しているが、A350の方が胴体が太い分だけスペースに余裕がある。これはかつてブリティッシュエアウェイズのファーストクラスで採用されたものだが、ビジネスクラスのサービスレベルが向上した結果、ビジネスクラスで利用できるようになった。

ヘリンボーン式はA350の標準なのか、カタール航空に限らず、キャセイパシフィックやフィンエアーやチャイナエアラインやJALが採用しており、細かい造作は各社異なるが基本的な構造は同じである。長距離便のビジネスクラスの場合、フルフラットにできる最低限のサイズで極力スペースを切り詰めようとするので、おのずと同じような構造になる。フルフラットにする際に前の座席の横の空間に足を突っ込むので、座席を斜めに配置すると足元が狭い。また、座席の幅は座席としては十分だが、ベッドとしては狭い。その代わり座席のすぐ横にテーブルがあって小物を置く上で便利だし、そしてなによりも隣に人がいないのは楽である。

ANAで採用されているスタッガード式だと足元が狭くないが、一部デッドスペースができてしまう。単位面積当たりの座席数を確保しようとすると狭くなってしまう。また、スタッガード式だと内側の座席で隣の座席と並ぶことになるが、ヘリンボーン式だと座席が斜めなので隣の人と距離を置くことができる。カタール航空のQ-Suiteやデルタ航空のビジネスクラスは半個室タイプだが、これらもスタッガード式の亜種である。長距離国際線のビジネスクラスは今ではヘリンボーン式とスタッガード式の2種類が主流になっている。

飛行時間が長いので、夜行便でなくてもパジャマやベッドパッドの提供を受けられる。ベッドパッドがあるのと無いのとでは横になったときの快適さがかなり違うし、寝ないにしても楽な姿勢を取れる方が疲れにくい。

A350のブラインドはまず障子のような薄手のブラインドが下がってから、遮光用のブラインドが下がる方式である。昼間の便で外からの光が明るすぎる場合、ブラインドをすべて閉めてしまうと暗くなってしまうので、柔らかい光が入ってくるのはありがたい。

《機内食》
ドーハを朝に出発して羽田に夜遅くに着く便なので、朝食+軽食である。離陸後1時間半後くらいに食器を片付けてもらえるので、それ以降は好きに過ごせる。

《飛行ルート》
イラン上空で南に向かい、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、ミャンマー、中国南部を経て上海から日本に向かうルートだった。日本上空から羽田へは国内線でもおなじみのルートである。かつての南回りルートを彷彿とさせるルートで、大圏ルートから大きく南にそれている。大圏ルートで東から西に向かうと12時間近くかかる一方で西から東に向かうと距離が長いにも関わらず離陸から着陸まで9時間しかかからない。偏西風の強いルートを取ったのだろう。夜遅い時間の到着なので到着が早まればその分早く帰宅できて楽である。離陸から6時間くらいは昼間なので雲がかかっていなければ外の景色を眺めることができる。

《羽田空港》
羽田発着の国際線は運用時間帯が限られていることから、21時以降に到着便が集中する。そのため日本人向けの入国審査ですら長い列ができる。成田の入国審査が外国人向けレーンですらガラガラなのと対照的である。有人レーンは僅かしかなく、大半は顔認証の自動化ゲートである。指紋認証の自動化ゲートですら混雑している。その代わり入国審査を通過すればすぐ目の前がバゲッジクレームでその正面に税関があるので、そこから先は早い。

《羽田からの交通》
バスは国際線ターミナル始発なので国際線から乗る分には好きな席を選べる。遅い時間帯だと高速道路も渋滞していない。その代わり第2ターミナルと第1ターミナルで大勢の乗客が乗ってくるので混んでいる。

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