福岡長崎間で高速バス九州号と西九州新幹線とを乗り比べてみた

西九州新幹線に乗りに行った際、せっかくなので高速バスと乗り比べてみた。

往路は高速バスである。元々昭和町経由のスーパーノンストップ便、出島道路経由のスーパーノンストップ便、途中停留所停車便が毎時各1本走っているが、朝以外は出島道路経由のスーパーノンストップ便が運休しており福岡長崎間は実質毎時1本となり輸送力が半減している。運賃は片道2900円、往復5400円、4回分のWeb回数券で9000円である。所要時間は約2時間半。

天神から乗車したところ、日中にも関わらずほぼ満席だった。意外にも天神からの乗客よりも博多駅からの乗客の方が多かった。バスは相席だと流石に狭い。出島道路経由便が間引きされていなければ窓側席がほぼ埋まる程度で、それなら快適だろうし、高速バスの採算ラインは1台平均10人程度なので、満席運行は詰め込みすぎである。間引きする理由がよくわからない。確かに昭和町での乗降客がそれなりにいるのに対して大波止は長崎駅から近いので、出島道路経由の便はあまり便利でないかもしれないが、それなら昭和町経由の便を1時間に2本走らせるべきではないか。

天神高速バスターミナルから都市高速天神北入口まで15分ほど、そこから太宰府インターまで15分ほどで、九州自動車道に入るまで30分ほどかかる。太宰府インターから大村まで1時間程度と速いが、昭和町経由便は多良見インターから曲がりくねった長崎バイパスに入り、川平出口から一般道を走行するので大村から長崎駅まで1時間ほどかかる。とはいえ昭和町での乗降客が多いので仕方ない。逆に長崎駅が目的地ならやはり速い出島道路経由便に乗りたいものである。

車内が混雑していなければ車両そのものは快適である。高速道路巡航中には車内は静かで乗り心地が良い。USB電源とWiFiがあるので少々所要時間が長くても退屈しない。急ぎでなければ福岡から長崎まで3時間近くかかる途中停留所停車便の方が空いていて快適かもしれない。

復路は新幹線である。正規の運賃料金は博多長崎間の指定席で6050円と高いが、JR九州は高速バスに対抗するために安売り切符を販売しており、博多長崎間で7日前事前購入で3200円とバスの片道運賃とほぼ同じだがこの運賃は2023年9月30日までである。3日前事前購入なら3600円、事前購入不要なネットきっぷで4200円である。西九州新幹線開業に合わせて長崎方面の2枚きっぷが廃止になったので、今のところこれらが最安値である。往路はスケジュールが決まっていることが多いが、復路は現地の状況に応じて帰りの列車を決めることが多いので、往復で7800円くらいだろうか。だいたいバスより3割高である。

新幹線は日中1時間毎、ピーク時1時間に2本と高速バスと同様である。しかしバスよりも鉄道の方が圧倒的に輸送力が大きい。所要時間は最短で1時間20分だが通常は1時間半ほどである。JRはバスのように市街地で時間がかかることがないので、やはり所要時間では有利である。博多駅基準ならバスよりも1時間以上早いが、天神基準ではバスよりも30分早い程度である。所要時間の差がさほど大きくないので、乗り換えなしで天神から長崎市内に直通できる高速バスは便利である。

長崎駅の新幹線ホームは2面4線で、現状1時間に最大2本しか発着しない駅にしては過剰な設備である。将来新鳥栖まで開通すれば1時間に最大4本くらい発着する可能性もあるが、最初は2面2線の暫定開業でもよかったのではないか。

かもめ号は乗車率半分程度で長崎駅を発車した。ネットきっぷは指定席でも自由席でも同額なので4列シートの指定席を利用したが、さすがに広い。

新幹線のスピードは圧倒的で、発車して数分後には次の駅の到着のアナウンスとともに減速する。諫早からの乗車がそこそこあったのは無論のこと、長崎諫早間の乗客もいる。定期券専用新幹線特急料金回数券は長崎諫早間と長崎新大村間ともに4枚3400円、1枚当たり850円である。新幹線で通勤通学できそうなので、JR九州は諫早や大村で宅地開発をすることでも収益を得ることができるのではないか。

新大村でもそこそこ乗客がいる。従来大村から福岡へは高速バスしかなかったので、新幹線開業で便利になった。

嬉野温泉も新幹線開業までは高速バスしか利用できなかったが、こちらはせっかく新幹線が開業しても乗客がほとんどいない。嬉野はさほど大きな町ではない上、福岡行きの高速バスが毎時1本あるのに対し、新幹線の停車列車が少ないため、高速バスの方が便利なのだろう。高速バスで運び切れる程度の乗客しかいない町にどうして新幹線の駅を作ったのか理解に苦しむ。

武雄温泉駅ではホーム対面で乗り換えることができる。武雄温泉発着のリレーかもめなら武雄温泉駅到着時点ですでにホーム反対側にいるが、佐世保発のみどりと接続する場合にはみどりが到着するまで数分列に並ぶことになるし、停車時間が短いのでせわしない。

かもめに接続したみどりは武雄温泉駅をほぼ満席で発車した。しかし、新幹線はおろか在来線であってもバスよりも座席が広いので、満席で乗るなら高速バスよりもJRの方がはるかにましである。新幹線の6両編成は在来線の8両相当の輸送力があるが、新幹線からの乗客を在来線6両で受ければ明らかに輸送力が足りない。885系は6両だが編成を組み替えて8両にするなり、日豊本線用の787系と交換するなりして8両に統一すべきではないか。あるいは毎時1本かささぎにスジを取られているのは勿体ないので、かささぎを783系4両にしてみどりと併結して江北まで12両で走らせるなど工夫しないと、在来線側の輸送力に制約されて新幹線の乗客が増えない。

新幹線の目的は所要時間短縮だけでなく輸送力増強もある。在来線時代のかもめは肥前山口長崎間がほぼ単線だったことや、博多肥前山口間でみどりのスジもあることから増発に限界があった。新幹線区間では複線になったし車両も大きくなったので長崎側の輸送力は増えたが、在来線区間の輸送力増強も必要ではないか。

新幹線と高速バスを乗り比べてわかったのは福岡長崎間では、特急料金が値上げされたり武雄温泉駅で乗り換えが発生したにも関わらず、JRの方が依然として優位に立っていることである。だからこそ出島道路経由の高速バスが間引きされているのだろうが、復活させてもう少しゆったり乗れるようにすれば、対天神ではさほど不利ではないのではないか。新幹線が日中1時間に1本しかないのに対し、高速バスが1時間に2本あれば平均待ち時間が15分短くなるのでドアツードアの所要時間を15分短縮するのと同じ効果がある。

あるいは、1時間に3本の便で途中停車停留所を分散させ所要時間を均等化させれば、最速便よりも所要時間が数分延びても平均待ち時間が短縮されることで、ドアツードアの所要時間を短縮できたり混雑を緩和したりできる可能性がある。これは山陽新幹線に直通するのぞみで採用されている方式で、山陽新幹線ののぞみは姫路、福山、新山口のいずれかに停車するが、停車駅を分散させることで速達列車を1時間に3本走らせている。

福岡熊本間は新幹線開業後にむしろ高速バスの便数が増えたが、これは熊本駅の立地が市街地の中心部から離れており、市街地中心部基準では所要時間の差がさほど無いためである。一方、長崎駅の立地は悪くないので、バスだからといって有利なわけではない。


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