レンタカーで新型アクアに乗ってみた
トヨタレンタカーを手配する際にエコノミークラス、エコノミークラス車種指定、エコノミープラスクラス、エコノミープラスクラス車種指定の料金を見比べてみると、エコノミープラスクラス車種指定の料金とエコノミークラス車種指定の料金がほぼ同じだった。しかも最近はガソリン代が高いので、エコノミープラスクラスでハイブリッド車を車種指定すると、燃料代込のコストはエコノミークラスとほぼ同じだった。追加の支出なしに新型アクアに乗れるならそれに越したことはないということで新型アクアにした。本当はヤリスハイブリッドに乗りたかったのだが、あいにく在庫がなかった。
【諸元】
重量は1130kg。ヤリスクロスハイブリッドが1170kg、ヤリスハイブリッドが1060kg。ホイールベースは2600mm。ヤリスは2550mm、ヤリスクロスは2560mm。全高は1480mm。ヤリスは1500mm、ヤリスクロスは1550mm。全長は4050mm。ヤリスは3040mm、ヤリスクロスは4150mm。
車体の大きさはヤリスクロスよりも一回り小さいし全高も低い割には、ヤリスよりもヤリスクロスに近い重量である。リン酸鉄バッテリーが重いのだろうか。バッテリーは床下に搭載されるので、いかにも重心が低そうである。
【パワートレイン】
バッテリーを除けばヤリスやヤリスクロスと同様の、1.5L3気筒エンジンと組み合わされたハイブリッドシステムである。しかしアクアではバイポーラニッケル水素電池が採用されて充放電の効率が良くなったのか、電気モーターで走る速度域が拡大している。一般道の速度域ならほぼシリーズハイブリッドといえる。そのため、発進時には電気モーターで力強く滑らかに加速する。
上り坂や高速道路ではエンジンを動力として用いるようになるが、低負荷で発電しているときにはエンジン音がほとんど聞こえないのに対し、高負荷では3気筒エンジンならではの音がする。電気モーター主体で走っているときの燃費は素晴らしいが、高速道路でエンジン主体で走るようになるとたちどころの燃費が悪化する(といっても25km/Lくらいなので普通のガソリンエンジン車よりも圧倒的に良いが)。このエンジンは発電用に最適化されており、動力として動かすのはあまり得意ではないのではないだろうか。
高速道路での合流時にアクセルを踏み込むと一気に加速する。追い越し加速も楽である。高速域ではエンジンがメインだが、短時間なら電気モーターも回しているのではないだろうか。
【乗り味】
日本人好みの薄味。しかし先代と違って素材は良い。ステアリングフィールは先代同様に希薄だが、きちんと曲がる。乗り心地は良好。ヤリスのようなスポーツカー的な使い方よりも、ツアラー的な使い方の方が向いている。
一方、ヤリスはヨーロッパ人の好みに合わせているので、ハンドリングはかっちりとしているし、路面からの情報が重視されるので、足は硬めだし路面からの騒音や振動も入ってくる。ヨーロッパではBセグメント車に広さを求めないので、後席や荷室は狭い。さらにヨーロッパ人は車格相応に割り切るのでBセグメント車の内装は全般的に質素である。これらは日本人には好まれない。日本人が求めるのは広くて静かで乗り心地の良い車である。日本の公道ではあまり速度が出ないので、かっちりとしたハンドリングは求められない。
【シフトレバーとパーキングブレーキ】
アクアはハイブリッド専用でありMTの設定がないので、シフトレバーはプリウスと同様の誤操作しやすいタイプ、パーキングブレーキは日本のコンパクトカーでおなじみの足踏み式である。
シフトレバーは一旦右のNに入れてから手前に引けば前進、奥に押し込めば後退と直感的でわかりやすいし、エンジンブレーキをかけたいときにはそのままシフトレバーを手前に引けばよいので、慣れれば誤操作しようがない。Nレンジに入ると警告音がするので、うっかりNレンジに入れたままになることもない。
Bレンジに入れるとエンジンが回って負圧によるポンピングロスでエンジンブレーキが強くかかる。しかし下り坂で速度を抑えたいときにはエンジンブレーキが強すぎる。通常の下り坂ならフッドブレーキを踏んで回生ブレーキを効かせる方が便利である。
パーキングブレーキが電動ではなく足踏み式なのは意外だが、アクアはヤリスハイブリッドの高級版ではなく、日本人の好みに合わせた版ということなら、軽自動車等で日本人に馴染みの深い足踏み式にするのもわからないでもない。
【内装】
ヤリスよりもやや内装の質感が高い。ソフトパッドを多用している。カーナビ周りはいまどきのトヨタ車に共通のもの。MT車ではシフトレバーやパーキングブレーキがある場所がまるまる空いているのでドリンクホルダーとスマホ入れになっている。ドリンクホルダーの前のシャッターを開けるとUSB端子があり、スマホをここに接続するとAndroid AutoやApple CarPlayを使える。しかしUSBケーブルを接続したスマホをここに置くとスマホがはみ出してしまい、シャッターを閉められなくなる。
肘掛けの内側は小物入れになっており、中にDC12V電源がある。
【座席】
あまり気にしなかったが、長距離走っても疲れない。
【燃費】
Ecoモードで走って街乗りで33km/L程度、高速道路で27km/L以下、信号の無い郊外路で35km/Lくらいだった。WLTC燃費の1割引くらいの実燃費である。WLTC高速道路モードでは32km/Lもあり、さすがにそれは相当ゆっくり走らなければ無理ではないか。上り坂では30km/Lを割り込むが、下り坂を含めた山越えで30km/Lを超えているのは、上り坂での力強さを考えれば立派。高速道路から酷道までまんべんなく走って平均燃費が32km/L程度だった。満タン給油で900km程度走れるので、給油の心配なく長距離を走れるのはありがたい。
【総評】
誰にでもわかる良い車の見分け方は「長距離乗って疲れるかどうか」。今回約2000km乗って全く疲れなかった。そういう意味では良い車である。薄味なのはあくまでも日本人向けの味付けの問題であって、素材は良い。
【他車との比較】
ヨーロッパ人の好みに合わせて作られたヤリスと違ってアクアは日本人の好みに合わせているので日本ではアクアの方が売れるだろう。
日本での競合車種は日産ノートだろう。値段はほぼ同じである。しかしあいにく新型ノートには乗ったことがないのでわからない。
たしかにパワーがあって燃費も良いが、いざこの車をどのような用途で使うか考えると、これといった答えが出ない。街乗り用なら走行距離が伸びないので安価な自然吸気ガソリンエンジン車の方がコスト面では有利である(もちろんハイブリッド車の魅力は燃費だけではない)。長距離を走るなら燃費性能が効いてくるが、高速道路での実質燃料コストならMazda 2のディーゼルの方が有利。アクアはBセグメント車にしては頑張っているが、それでも質感は車格なりなので、質感を求めるなら同じ予算でCセグメントのガソリンエンジン車を買った方が質感が高い。快適さは車格相応。