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記事の墓場

公開されずに書きかけで死んだ記事たちをここに供養する。
しれっと消えていたらきっと死者蘇生される。が、多分ない


【考察】ファイアーエムブレムシリーズにおける竜と人と紋章と伝説の武器の話

死因:羅列するのがめんどくさくなった。

今更風花雪月の銀雪と煤闇の章をクリアしたので、熱があるうちに考察を書き殴る。ファイアーエムブレムシリーズに共通する設定の話。この記事は最新作風花雪月を含むシリーズ全作品のネタバレを含むので注意。

まずは、各シリーズの設定をおさらいする。

風花雪月の話

竜…ナバテアの民
女神の眷属、神祖ソティスに連なるレアと愉快な仲間たち。髪は緑色。
寿命は数千年と非常に長寿で高度な文明を持っており、その知恵を人間に与える事で共に繁栄してきた。しかし知恵を身に付けた人間が女神とその眷属に反抗的になった事で戦争となり、負けた人間たちは住む場所を地下深くに追われアガルタの民として以降フォドラの裏から女神の眷属たちへの復讐を画策するようになる。

武器…英雄の遺産
天帝の剣はソティスの墓を暴いて骨で作ったもの。十傑の英雄の遺産はその天帝の剣でザナドに暮らすナバテアの民を殺しまくってその骨で作ったもの。
基本的には適合した紋章を持つ者出ないと使えない(ゲーム的には使用できるが、設定上は適合した紋章が無ければマイクランのように魔獣化する恐れがあり、一方で適合した紋章が無くても紋章を持ってさえいればそのリスクは遥かに低いとされる研究もある)

紋章…紋章
ナバテアの民の血を飲んだ者は血に紋章が宿り、紋章の血と力は子孫へと受け継がれる。ただし、必ずしも紋章持ちの子どもが紋章を宿すわけではなく、紋章のない親の元にも先祖に紋章持ちがいた場合突如紋章を持った子どもが生まれる事がある。
また、直接血を飲んだ者は一般的な人間の寿命を遥かに超えて長生きする。
作中ではフォドラ十傑の初代は長寿であった事、また瀕死になった際セイロスの血を分け与えられたジェラルトは見た目以上に歳を取っている事が明かされている。

一言メモ
シリーズファンなら緑色の髪の人たちに「もしや」と思った人も多いのではないだろうか。風花雪月は過去作と比較してもかなり設定がきめ細かく作られていて、非常に考察しがいのある作品である。今作からファイアーエムブレムシリーズを知った人も多いと思うので、ここから過去作との設定を比較したいと思う。

暗黒竜と光の剣・紋章の謎・覚醒の話

(外伝・echoes未プレイですまない)

竜…マムクート
神竜のチキや火竜のバヌトゥ、地竜のメディウス(ラスボス)などが作中に登場する。
人間より非常に長寿で高度な文明を持った種族だが、人間の文明より数千年前のある日を境に、子どもが産めなくなり次第に理性を失い破壊の限りを尽くしてしまうようになった。
その対策として神竜王ナーガが竜石に竜の力を封印し、人の姿をとる事を提案した。
しかしそれに反抗的だった地竜の一派が案の定暴走し、神竜王ナーガやナーガ側についたメディウスによってファイアーエムブレム(炎の台座)と共に封印される。
時が下るとかつてナーガと共に人を守るために戦った竜たちはマムクートとして人に差別されるようになり、それがメディウス率いるドルーア帝国の侵略戦争を引き起こしたのが暗黒竜・紋章のバックストーリー。
尚、覚醒はチキの発言から考えるに紋章の謎のストーリーの約2000年後のアカネイア大陸を舞台にした作品。

武器…ファルシオン(神剣ファルシオン)
ナーガの牙で作った剣。マルス様のご先祖、アンリ1世はメディウスと戦うためにナーガの血を飲み、ファルシオンを振るった。覚醒では、ファルシオンを扱う事ができる王家の人間には聖痕が顕れるとされている(クロムには右肩に、


「Milk inside a bag of milk inside a bag of milk」お馬鹿な自分と俯瞰する自分の対話

死因:言いたいことが上手くまとまらないうちに熱が冷めた。

話題の狂気的ビジュアルノベル「Milk inside a bag of milk inside a bag of milk」とその続編「Milk outside a bag of milk outside a bag of milk」レビュー

※ネタバレ有

はじめに

恐らくわたしはどうにかして第四の壁を破る表現が含まれる作品が好きだ。それも厄介で五月蝿いオタクなので「画面の前のプレイヤーに話しかける」程度では満足出来ず、もっと構造的にプレイヤーを巻き込んでくるようなものが好みだ。例えば「Katana Zero」ではメタフィクション的な映像表現を極力減らす事によって逆にプレイヤーの没入感を高め、その上で狂気的な状況におかれるドラゴンの心情を共感させようとする作品だったし、最近読んだ漫画作品の「ファイアパンチ」は作品の中で作品を創る作業を行い、その説明をする事で読者に対して間接的に「ファイアパンチ」という作品の読み方を説明していて、その上でリアリティのある人物描写をしていたのがとても良かった。
「Milk inside...」もその例に漏れず、タイトルの通り入れ子構造的に画面の前のプレイヤーを巻き込んでくる作品だった。
「needy girl overdose」の感想記事でも触れたが、わたしは精神疾患やそれにまつわる問題と無縁の人間ではなく、作中に登場する少女が他人の事とは思えなかった。その事も入れ子構造としてゲーム体験を味わう上で大きかったように思う。
そういった背景もあって本作はとても面白いと感じる事が出来たので、記事にしようと思った次第だ。

自分の中の歪んだ認知の世界を見る自分

シリーズ1作目の「Milk inside...」は認知が歪んだ少女の視点で、少女と共に牛乳を買いにおつかいに行くという筋書きのビジュアルノベルゲームだ。
プレイヤーは少女のイマジナリーフレンドになり、おつかいの道中でコミュニケーションを取ることができる。ちなみに彼女は自分がビジュアルノベルゲームの主人公であることを自覚していて、画面の前のプレイヤーから見ると非常にメタい発言を繰り返す。

コミュニケーションを取れるとは言うものの、プレイヤーが選べる会話の選択肢はどこか意地悪で、人目を気にして緊張するあまり可笑しな振る舞いをする少女に対して批判的なものが多い。
多くの人にとっては牛乳を買いに行くことは造作もない事だが、少女にとっては様々な苦難を乗り越えなければならない事は描写から見て取れる。そんな彼女を嘲笑するのはとても心が痛む。

それもそのはず。結局のところ作中においてプレイヤーとは彼女の脳内に存在するイマジナリーフレンドに過ぎない。一般的にイマジナリーフレンドはいじめやネグレクトといった背景、或いはシンプルに遊ぶ相手が居ないことに由来する孤独感を克服するために生み出される事が多いとされるが、次作「Milk outside...」で語られるように彼女が飛び級出来るほどの年齢に対して飛び抜けた頭脳を持っている事、シリーズ通して描写される「普通ではない」彼女の言動、そして両親の性質を考えればプレイヤーのような存在が生み出されるのは理解出来る。


エッセイ的なもの:バッテリーという鎖

死因:言いたいことが上手くまとまらないうちにどうでもよくなった。

少し前にsteam deckの日本国内版の予約受付がスタートした。
ゲーマーとしては当然気になっていたデバイスではあるが、「switchじゃなくてsteam deckじゃなきゃダメ」なタイトルが悉く携帯機と向いてないので購入を見送ることにした。思い当たるのは主にリッチなグラフィックのゲームで、所詮は携帯機であるsteam deckではハイクオリティなグラフィックと言えどもたかが知れてるし、フレームレートも出せない。その上でプロセッサーの温度は上がるだろうし、それを冷やすファンは大きく速く回って音も出て、それらを動かす電力は小さなバッテリーから供給される。あんまり言うとネガティブキャンペーンのようになってしまうのでここら辺で控えておくが、少なくともわたしは魅力を感じなかった。特にバッテリーの持ちが悪い問題は携帯性をウリにするハードウェアとして致命的だ。

ここ何年か、身の回りのリチウムイオンバッテリーを搭載するデバイスが本当に増えた。スマートフォンもそうだし、ワイヤレスイヤホンだとか、家庭用ゲーム機のコントローラーだとか、Meta Quest2もそうだ。いずれにしても、無線化することによる利便性向上を試みた代わりに、定期的な充電が必要でバッテリー自体にも寿命が存在するという代償を背負ってしまった。特に、使用頻度が高いワイヤレスイヤホンやコントローラーは、バッテリーの寿命=機械の寿命になりがちで、わざわざお金を掛けて手間をかけてバッテリーを交換するより新品に買い替えて廃棄してしまおうという発想に至るパターンを周りでよく見かける。

このバッテリー寿命=機械の寿命=買い替えって構図が凄くメーカーに買わされている感じがしてわたしは


「ファイアーエムブレム エンゲージ」縛りプレイの話

死因:縛りプレイ自体が途中からゲーム性を失って飽きた。

はじめに

前回の記事で「『覚醒』以降、縛りプレイ文化があるからと難易度をプレイヤーに丸投げしていたツケが回ってきている」「自分で難易度を調整し高難度に挑みたくなるような仕組みがあったほうがいい」という事を書いたが、文章をまとめる都合上具体的に縛りプレイとはどのようなものを指すのかなど具体例を示せていなかった。

これでは今作や前作『風花雪月』など最近ファイアーエムブレムを知ったプレイヤーにとって不親切ではと思い、丁度わたしがトライしてみた縛りプレイが面白かった事もあって記事にした次第だ。
初心者プレイヤーの方でも熟練者プレイヤーの方でも、これを読んで興味を持った方は一例として是非参考にしてみて欲しい。

縛り内容

・全章を通して回復を含む杖の使用禁止

・特効薬の使用禁止(特効薬が使える頃にはスキル「スキンシップ」が継承できるので難易度が下がってしまう事を考慮している)

たったこれだけである。

(ちなみに、わたしは難易度ハード、クラシックモード、DLC無しという条件で行なっているが、この辺は人それぞれで構わないと思う)

何が面白いのか

・杖という安易な回復手段が無いので、被弾を極力抑えるようにユニットを動かさなくてはならない。ブレイク・チェインガードの重要性が非常に高くなる。

・ブレイクが重要になるので、必然的に体術の評価が上がり、弓・魔法・短剣の評価が落ちる。通常プレイでは体術が使いづらく、短剣が強いのでバランスが取れるようになる。

・ブレイクが自ターンにしか出来ない上、傷薬を使うと攻撃が出来ないので、ガンガン攻めた方が有利なゲームバランスとなる。基本的に高難度では牛歩戦術や閉所で待ち構える戦術が有効だが、このバランスによってブレイクを狙って攻めるか、不利ながらも待ち受けるかの駆け引きが生まれる。

・ブレイクと同じように、被ダメージを抑えるために積極的にエンゲージ技を使う必要が出てくる。「エンゲージをもったいぶってここぞという時にしっかり使う」というプレイングが通用しなくなる

・傷薬はインベントリを圧迫するので、キャラごとにリソース管理を求められる。多くの武器を扱いたければ極力被弾を抑えるムーブが必要になり駆け引きが生まれる。

・使いかけの傷薬は尚更インベントリを圧迫するので、いかに使いかけの傷薬を消すかの勝負になる。余裕がある時はアイテム交換で傷薬の使い回しをする必要が出てくる。

・他人を回復する手段が紋章士ミカヤのエンゲージ技「大いなる癒しの手」と紋章士カムイの継承スキル「スキンシップ」シトリニカの個人スキル「大盤振る舞い」しか無くなる。スキンシップを継承する場合スキルの幅が狭まるので戦闘力を取るか生存性を取るかの駆け引きが生まれる。


「閃の軌跡 NW」感想文

死因:最終回が酷すぎて記事にするのがバカバカしくなった。

TVアニメ「The Legend of Heroes 閃の軌跡 Northan War」の感想文(ネタバレ有)

はじめに

本作は軌跡シリーズファンとして注目せざるを得ないシリーズ初のTVアニメ化作品。
舞台は七耀歴1205年のノーザンブリア自治州。原作シリーズで言えば『閃の軌跡Ⅱ』と『閃の軌跡Ⅲ』の間の時系列だ。そしてノーザンブリアという地は原作中でしばしば語られる「北方戦役」の舞台になった場所でもある。

正直言ってこの作品にはほとんど期待していなかったし、感想文も書く予定はなかった。そもそも原作の『閃の軌跡』シリーズがあまり良い出来とは言えなかったし、原作での空白の期間を埋めるにしてもその後どうなるのか既にわかっているので展開が退屈になるのは想像が付いた。
更にゲーム原作のアニメは失敗するというジンクスはよく一般に知られているし、ファルコムという会社も任天堂やカプコンのような大きなメーカーではないので失礼ながら映像のクオリティもそこまで高くないだろうと思った。

しかしその予想は大きく裏切られることになる。なんと原作より"軌跡シリーズ"をやっているのだ。それも20分余の映像12本でだ。こういうのでいいんだよ。今回はそのレビューを書くことにする。


リィンの物語に対するノーザンブリアの物語

本作はリィン・シュバルツァーを中心に輪を形成し、絆と成長の物語を描いた原作とは対照的に、「英雄」というワードを共通点にノーザンブリアという弱く貧しい国を守るためにそれぞれの思惑で動く人物たちを群像劇のように描いている。その情報整理も兼ねて、登場人物たちの一部を紹介したい。

ラヴィアン・ウィンスレット

本作の主人公。祖国を裏切ったとされるかつての英雄ヴラド・ウィンスレットの孫娘。最初は「祖父とは違う人間になる」事を行動原理にし、"英雄"を毛嫌いしていたが、裏切りの真相がわかると祖父の言葉を思い出して"英雄"を目指し、"英雄の孫娘"という立場を利用して行動し始める。基本的には彼女の成長物語。

リィン・シュバルツァー

ご存知原作『閃の軌跡』シリーズの主人公。「灰色の騎神」という古代遺物兼主人公専用機を駆りエレボニア帝国の内戦を終結に導いた。が、全ては鉄血宰相ギリアス・オズボーンの掌で踊らされていただけで、内戦終結を口実に"英雄"に仕立て上げられ、プロパガンダに利用されるようになった。とはいえその実態も、自分を顧みず他人のために動く根っからのお人好しである。

グラーク・グロマッシュ

物語開始時のノーザンブリア自治州の実質トップ。塩の杭という大災害とそれに起因する政情不安、そして旧ノーザンブリア大公の亡命によって荒れ果てた北の小国を立て直した三人の英雄のうち一人。穏健派に見せかけた大物かと思いきや、結社に人形兵器を供与されたことから舞い上がり世界征服を目論んでいた小物。

自治州議員たち

三人の英雄の一人であるグラークを神のように崇める人たち。帝国の脅威を目前に親帝国派と反帝国派で内輪揉めをするし、いずれにしてもグラークがいれば安泰だという思考停止に陥っている。(これもグラークの思惑通りかもしれない)

ローガン・ムガート

人呼んで《極光のフェノメノン》(どこからフェノメノンという言葉が出てきたのかわからない)
覇権主義的な動きを強める帝国の脅威を前に、静観に徹するグラークに異を唱える若き急進派。カリスマ性があり目的意識も高く、国を変えて英雄になろうとしていた男。振り返ってみればグラーク陣営が見ていた状況もジェイナ陣営の思惑も知らなかったので踊らされていただけだが、持ち前のカリスマ性と慧眼によって生き延びる事ができた。

フェノメノン隊

国を憂い立ち上がったローガンを英雄視している者たち。急進派なだけに愛国心が強く士気も高い。

ジェイナ・ストーム

今回の一連の事件の黒幕。敵であるはずの帝国情報局のレクターや結社のカンパネルラとの繋がりを持っていた。今回は帝国にスパイを送り侵攻の口実を与えたり、グラークと結社を結びつけたりローガンを焚き付けたりしていたが、目的は恐らく自分が"英雄がもたらす現象"を僥倖として楽しむためでありサイコ。結局闇堕ちして部下になったかのように思えていたタリオンにあっさり斬り殺されたのでよくわからない。
軌跡シリーズあるあるの終盤によくいる位相空間や魔法らしきものの使い手でもある(本来ゼムリア世界では七耀石とそこから得られる導力によって誰でも火や風などの現象を引き起こせるものの、一部の実在する伝承や例外を除いて魔法は存在しない)

ヴラド・ウィンスレット

ラヴィの祖父であり、国をまとめ上げた三人の英雄の一人。ノーザンブリア復興の象徴的リーダーであったバレスタイン大佐を裏切り殺したとされていたが、実際には強硬派と穏健派で割れる軍内部の統一を図るために汚れ役を買って出た善人である。故郷の畑の地下にシェルターを作るという無茶苦茶をしている。

マーティン・S・ロビンソン

実は闇が深いやる気のないおちゃらけ上官。ランディ・オルランドとだいたい同じである。
金を積まれれば貧しい故郷のために仕事を受けざるを得ない都合上、ケルディック焼き討ちという大義のない民間人への暴力に加担する。それを負い目に感じており、ラヴィはじめ英雄になり得るまっすぐな若者への羨望などと言った複雑な感情を持ち合わせている。この辺もランディとだいたい同じである。
捕虜になったはずだがなぜ機甲兵の訓練を受けていて北方戦役に参戦したのか結局語られなかった。

タリオン・ドレイク

通称「タラちゃん」。生真面目な性格で破天荒なラヴィやおちゃらけ上官のマーティと度々ぶつかる。後半には闇堕ちしたらしくなぜかジェイナの部下になっており、これまたなぜかよくわからないがそれは見せかけだったらしく終盤でジェイナを裏切りあっさり終わらせる。彼の葛藤が見どころになっただろうにもったいなく感じた。筋金入りの生真面目なので彼なりに国を案じており、英雄になり得たかもしれない影の主人公。

イセリア・フロスト

その他軍の穏健派

帝国の脅威を感じ国を憂いているのは他と同じだが、同時に自分たちの出来る事の範囲を弁えている。ラヴィが英雄になるべく立ち上がった時に期待を寄せ立ち上がった。


【前編】Oculus Quest2は全ての"取るに足らない人間"におすすめしたいQOL向上マシーンだった。

死因:後編がお気持ちすぎるかなとまごまごしてたらタイミングを逸した。(2年前に書き終えていた)

前編 VR体験談

今までは手が出しづらかったVR

先日、ようやく我が家にもVRヘッドセットを導入した。Oculus Quest2だ。

VRは前々から気になってはいたが、VRヘッドセットはまだ黎明期のような雰囲気があった。価格で言えば高価だが全身をトラッキングすることができ視野角も広いものから、低価格で画質もそれなりのスタンドアロン型、更にはスマートフォンに取り付ける事でとりあえずVR動画が見られる簡易アタッチメントのようなものまであるし、メーカーによってもスマートフォンでいうiOSとAndroidのように対応アプリが違った。どこが"楽しむのに最低限必要なライン"か、或いはどこが"界隈でスタンダードになるか"がわかりにくい状態のように感じた。

更に"VR酔い"による相性の問題は当初から話題になっていた。相性が悪く楽しめなかった場合文字通りお蔵入りすることになるかもしれないし、その相性の良し悪しを確かめるためにVRを体験できる場所はかなり限られていた(去年から流行り病の影響でそういった場所に行きづらくなってしまったので尚更だ)
そんなリスキーな物であるにも関わらず、PC用VRの中では比較的低価格モデルでも5万円という額は高すぎるように感じた。(しかもそれは全身トラッキング出来ず画質も悪いから、ちゃんと楽しむなら、10万円超のモデルを買った方が良いという記事が当時散見されていた。)

VRゲームが半ば"スベっている"ように見えたのも購入を踏みとどまらせた原因の一つだった。
「VR元年」と呼ばれた2016年、PS4で比較的低価格でVRゲームが楽しめると話題になったPSVRが発売されネットを賑わせた。しかしあれから5年、未だにVRゲームを一般的にするような爆発的人気のあったゲームは無い。
やはりVR酔いに関する問題がVRゲームの開発の自由度を低くしていて、機器が高額である事がゲーマーへの普及を足止めしているのだと思われる。

いちゲーマーである私としてはやはりVRヘッドセットはVRゲームをやるために買うのが主の目的と考えており、VRゲームが当初想像していたより普及しておらず、プレイしたい魅力的なタイトルが無い事は致命的であった。
一応現在では「beat saber」のような身体を動かすスポーツゲームやいわゆる音ゲーはVRゲームの目玉のようになっていて、デバイスを持っていない私でも知ってはいたが、運動嫌いの私には身体を動かすゲームなどまるで興味がないし、何より一人暮らしの六畳一間で出来るゲームでは無いことは明白だった。

そういった理由からVRヘッドセットに手が伸びず、それどころか私の中では「VR=金持ちのガジェットオタクの道楽」という印象が強かったのだが、そんな中で発売されたのがOculus Quest2だった。

スペック高くて便利で安い!なんじゃこりゃ!

Oculus Quest2は2021年9月現在シェアを急拡大し覇権を握ろうとしているVRヘッドセットだ。
それもそのはず、Quest2は他のVRヘッドセットと比較して圧倒的という言葉では足りないくらいコストパフォーマンスに優れる。一番安いモデルで38000円弱で販売されているにもかかわらず、画面解像度だけで言えば今VRガチ勢に人気との噂のハイエンド機種、Valve Indexより大きいし、3年前にコントローラーなど込みで15万円で発売されていたHTC VIVE proと比較しても全身トラッキングと視野角を除けば遜色ないハードウェア性能を持っている。

更にQuest2はスタンドアロン型として単体・ケーブルレスで稼働する以外に、ゲーミングPCなどグラフィックボードを搭載したPCとUSBケーブルで繋げばPC用VRヘッドセットとして稼働させる事ができる。
PC用VRとして稼働させるとOculus Rift向けのコンテンツやSteamVRとしてSteamで販売されているVRコンテンツにも触れる事ができ、つまりは1台でOculus Quest向けアプリ、Rift向けアプリ、SteamVRのアプリを動かす事ができる。恐らく、今販売されているVRヘッドセットの中で最も多くのコンテンツに触れられるデバイスだと思われる。

そんなとんでもない物が2020年10月に発売された訳だが、翌年8月、本体ストレージ容量が最も小さいモデルが64GB→128GBにアップグレードされた。お値段そのままでだ。

もう私は抑えが効かなくなってしまい、流行り病の影響で貧乏生活を送っていたにも関わらず、ポチってしまった。


はじめての仮想現実

装着して、感動した。

これはすごい。思わず声を上げてしまった。仮想現実とはよく言ったものだ。目の前に謎の大きな空間があった。
更に感動したのはコントローラーのトラッキングだ。目の前の謎の大きな空間の中に、本体付属のコントローラーが落ちていて、それを手に取ると本当にコントローラーだった。

要は、現実世界のコントローラーの位置に対応する仮想現実内の位置にコントローラーの3Dモデルが置かれており、その3Dモデルを手に取ろうとすると現実のコントローラーを手に取っているということだ。
感覚的には寸分違わず正確で、手の感覚と仮想現実における視覚的情報がリンクし、とても没入感があった。

チュートリアルを終えるとホーム画面に辿り着くのだが、そこは一つ部屋のように出来ていた。奥には大きな窓があり,所謂サイバーパンク的なビルが立ち並んでいるのが見える。
驚いたのは横を向いた時だった。この部屋はメニューコンソールがある面だけではなく、前後左右上下全てがしっかりと部屋として作りこまれていた。

その瞬間にはこのバーチャルマイホームに愛着が湧いてしまった。憧れのサイバーパンクである。夕陽が差していてとてもエモい。そして広い。現実世界の女性一人暮らし六畳一間の汚部屋とは月とスッポンの差だった。

お金と手間が掛からない範囲で色々試してみた。

足取り軽く、手身近に出来るものからVRコンテンツを試すことにした。
まずは、YouTube VR。起動するとおすすめVR対応動画が挙がっているが、一つ適当なものを取って再生してみると、また感動した。
エンコードされた映像故に画質の劣化は多少あるものの、やはり”本当にそこにいるかのような没入感”がある。私はほとんど海外に行ったことがないので、家に居ながら海外の街並や雄大な自然をまるでその場にいるかのように見られるのはとても貴重な体験に思えた。
「360°」で検索するとVR対応の動画が表示されるらしく、検索すると世界中の遺跡や海中、景勝地から町並み、水族館や猫カフェに至るまで様々なVR対応動画がアップされているのがわかる。VRがあれば行けない場所は無いのではないだろうか。

なお、YoutubeはVR用だけでなく普通の動画も見ることができ、その場合は謎の空間に浮かび上がった巨大なスクリーンで見ることになる。その巨大なスクリーンは掴んで好きな場所に移動させたり縮小拡大することが可能で、これもまた没入感があって偶にはいいかもしれない。(配信のコメントは見られないようで、玉に瑕だが…)
更に映像配信繋がりで付け加えておくと、AmazonPrimeVideoもOculus Quest版アプリがあり、こちらは仮想の映画館のような場所でアマゾンプライムの動画コンテンツを見ることができる。こう書くと良さそうに聞こえるが、音響は映画館水準ではないので私は正直あまり魅力を感じなかった。やはり映画館の良さは音響設備だと思う。高級なヘッドホンを繋げば多少それらしくはなるかもしれない。

しかし、Youtube然りAmazonPrimeVideo然り、自宅で仰向けに寝ながら大画面で映像コンテンツを楽しむ事ができるのはVRにしかできない大きな長所だ。私は映像コンテンツを見たり絵を描いたりする用にiPadを持っているが、もう要らないんじゃないかという気がした。

VRゲームも試してみた。

次にSteamVRにてVRゲームを試した。新しくVRゲームを買うのは避けたかったので、所持しているゲームでVR対応ゲームを探し、「WarThunder」をプレイすることにした。


おおまかに説明すると、「WarThunder」は戦車や戦闘機でドンパチするゲームで、そのリアルさに定評がある。基本無料、いわゆるF2P型のゲームの割に本格的なフライトシムの航空戦を体験することができ、2016年にVRに対応したタイトルだ。

テストフライトにてコックピット視点にしてみると、これもとてつもないリアリティ、没入感があった。私は普段椅子に座ってゲームをプレイしているのだが、その椅子はもはやコックピットに据え付けられたシートだった。目の前には様々な計器が並んでいて、数値までよく見える。左右を見ると、旅客機の窓から外を見る時のように翼が見え、フラップやラダーの動きもしっかりと再現されている。私はその時スピットファイアのパイロットだった。

離陸してからしばらくして、機体の旋回を試みた時に強烈な違和感を感じた。
90度曲がる景色に、私の三半規管が全力でエラーを吐いている。これが所謂VR酔いというものだとすぐに理解した。

幼少期から車酔いしやすい体質だったのでなんとなく察しが付いていた事だが、やはりわたしはVR酔いする体質であることが分かった。メカニズムとしては三半規管の感覚と視覚的な感覚のズレが原因のように思える。

「WarThunder」のように頻繁に上下が入れ替わるゲームや平面的な移動をするゲームは酔いやすいようだ。少しがっかりした気持ちだが、逆に考えれば液晶画面でプレイしてもなにも感じないのに、VRだと激しく違和感があるのはVRに圧倒的なリアリティを感じているからだ。VRを本物のように感じられるのは良いことであると、ポジティブに捉えたい。

自身がVR酔いする体質だと判明したことで、前述のように”お蔵入り”する可能性も考えられたが、ゲーム以外の用途でも思っていたより日常生活に大きく役立ちそうなのでとりあえず最悪の事態は避けることができた(詳細は後編にて)

なにかと噂のVRChatも試してみた

「VRChat」はVRが流行り始めた当初から噂になっていたことを覚えている。「バ美肉=バーチャル美少女受肉」とはVR内で美少女のアバターを身に纏うことによって周囲にちやほやされ、あたかも本当に美少女に転生したような気持ちを体験する事で、当時のオタク界隈のTwitterでは流行語のようになっていた。その頃から「VRChatとかいう異世界コミュニティがあるらしい」ということはなんとなく知っていた。

わたしがインストールした頃は、「Vket」というVRChat内の大規模イベントが開催されており、特設ワールドではクリエイターや企業の方々が展示物を出していた。せっかくだからと足を運んでみると、まさに”生きている”異世界といった感じで感心した。

オープンワールドゲームが流行の昨今、その中で完結した一つの世界が体験できることはきょうび珍しくもないが、ワールド内では距離が近い他のユーザーの会話も聞こえ、YouTubeで見たようなキャラクターの置物も見え、そもそもVRということもあって明確に現実感がある。「他の人もここに来ているんだなぁ」と、はじめてMMORPGをプレイした日のように感心していたのだが、その時事件は起こった。

知らない他のユーザーに話しかけられたのである。

わたしは全力でコミュ障を発動させてしまい、どうしたらいいかわからずそのまま「Go Home」を選択、VRChat内の自宅に帰ってしまった(話しかけてくださった方には本当に申し訳ない)

「VRChat」は想像していたよりかなり現実に近いコミュケーションツールだだった。わたしのようにMMORPGをプレイしたことがある人なら、仮想の空間で人と話すということを想像しやすいかもしれないが、MMOのそれとは全く別物だ。

まず一人称視点でVRなので自分がその場にいるような感覚がある。MMORPGのようにキャラクターは画面の中の我が子、写し身という感覚ではない。
次に違う点は自分も相手も頭の動きがトラッキングされるため、どこを見ているかはっきりと分かるというところだ。
現実においても知らない人と目が合うと(いろいろな意味で)ドキッとするが、VRChat内ではその辺を歩いていたキャラクターが自分の方に歩いてきて、目を見て話しかけてくる。
MMORPGなら知らぬフリをしてその場を凌げたかもしれないが、ここはVR空間。自分の動きも相手に知られているため、「聞こえなかった」なんて言い訳は通用しない。わたしは現実においても人と目を見て話すのが苦手な本物のコミュ障であるため、"怖い"と感じてしまった。

「バ美肉」という概念を初めて耳にしたときは、正直に言うと憐れみのような感情を抱いてしまったのだが、これは明らかに”陽”向けのツールだ。認識を改めさせられた。
VRChatに関しては、これからTwitterで仲間探しをしたり、コミュニケーションをする覚悟をしたりして、念入りに準備を整えてから参加しようと思う。初めは怖いと感じてしまったが、リアルの外見に囚われず、外出の手間もかからないのは現実と違う大きなメリットだ。必ずいいところがあると思う。また参加した際には記事を書こう。

Oculus Quest2の良くないと思ったところ

体験レポの最後に、使っていてネガティブな意味で気になったところ、良くないと思ったところについて書く。

①視野角

まず一つ目に視野角が狭いと感じた。他の機種のVRヘッドセットを使ったことがないので、Valve INDEXのような視野角が広いハイエンド機種だとどのように見えるのかわからないが、やはりリアルの視界と比べるとどうしても"覗いている感"がある。特にプラネタリウムを見ているときなど、本来現実では視界いっぱいに広がる光景があるときなどは現実との視野角の違いを感じてしまった。

②画面の滲み

もう一つ気になるのは画面の滲みだ。視界の端の方が滲みが酷いので光学的な問題だと思うが、ものすごく目に悪そうな感じがして、子どもの利用が制限されているのも頷ける。自慢でもないが私は現実での視力が両眼とも2.0なので、余計に滲みが気になっているのかもしれない。

光学的な問題となるとハイエンド機種になっても解決するのかどうか疑問だ。素人考えだが補正しすぎるとぴったりピントが合う場所を探すのが難しいんじゃないだろうか。映像コンテンツを見ているときなど、ちょっとしたズレで滲みが増すと気になって仕方がなかった。

それと、調べたところ気のせいでは無かったのだが、Oculus Link使用時に映像が若干ぼやける。これは、PCで描写された映像を圧縮、ケーブルで転送してからQuestのプロセッサで展開処理を行なっているためらしい。
とてもポジティブに表現すればふんわりした雰囲気で綺麗だが、やはり気になるものは気になる。

③Oculus Link使用時の給電

Quest2を使っていて最も気になったところは、Oculus Link使用時(PCと接続してPC用VRとして使っているとき)本体の電池残量が減ることだ。
調べてみたところ、PCのUSBからの給電はType-Aコネクタでは規格上0.9Aが上限であり、その場合は充電が追い付かず緩やかに電池が減るようだ。
AmazonなどではQuest Link向けにType-A→Type-CのUSB3.2gen1ケーブルが売られていて、中には3A充電を謳っているものもあるが、かなりグレーというか黒なんじゃないだろうか。
両端Type-Cコネクタなら最大3Aの充電ができるようだが、私がAmazonで探した限りでは
・USB3.2gen1(5Gbps)
・長さ5m
・両端Type-C
の条件を満たすケーブルはQuest2本体の1/4以上の価格の純正ケーブルしか存在しなかった。Type-C(オス) to Type-Aコネクタを使って両端Type-Cケーブルを実現することもやってみたが、やはり電池残量は緩やかに減った(Type-Aポートに刺すより多少はマシかもしれないが)

そもそも、Oculus LinkはQuest2がPC用VRとしてOculus Riftのように稼働する仕組みであるわけだが、Quest2の電源はPC用VRのように
AC電源→VRヘッドセット
ではなく、
PC→バッテリー→VRヘッドセット
となっている事で、バッテリーが無くなると動かなくなるのが厄介なポイントだと思う。

まとめ

Oculus Quest2を起動して一通りの事を試した。後半の記事では本題である、Quest2でQOL向上に繋げる話を書いているので、読んでもらえれば幸いだ。


【後編】Oculus Quest2は全ての”取るに足らない人間”におすすめしたいQOL向上マシーンだった。

後編 全ての"取るに足らない人間"たちへ

本題に入ろう。私は「取るに足らない人間」の一人である。

勉学は苦手でまともにやってこなかったし、人とのコミュニケーションも苦手だ。なんのスキルも長所もないし、その上で甘ったれているのでこれからリソースを消費して習得しようという気も起きない。おかげで今、心身を削って社会の歯車を演じていることになっているが、これは自己責任で、努力をしなかったからだと言われれば全くもってその通りだとも思う。

しかし自分の境遇を嘆き、自己憐憫に浸りたくなるときもある。なぜ自分だけがこんなに不幸なのかと。例えばわたしは両親との仲が悪い。若者の低所得化が叫ばれる昨今では、実家暮らしや、実家の支援を受けられるというのは大きな経済的メリットになるが、そんなものはない。だから立て直す余裕が生まれにくい。それに私はちょっとした肉体的ハンディキャップも抱えていて、日常生活には支障はないが就職の際大きな足枷になる。事実、転職の際に何度か落とされたものだ。最近では多様性やハンディキャップへの理解など、テレビでもよく聞くワードになったが、現実にはごく一部の希少で有能な人間が立派でお金の余裕のある会社に雇われている、或いはギリギリの会社が”何でもいい人”をちり紙のように使っているに過ぎない。
そして、生きていく中で失敗する回数が増えるほど前に進む足取りが重くなり、負のループに陥る。
気がつけば周囲はやれ自分磨きだの結婚だの昇進だので浮かれているが、そんなものは取るに足らない人間には無縁のものだ。住む世界が違う。所詮は現実における五体満足で心身健康、自分がその世界に必要だと自分で思える限られた人間たち向けのコンテンツに過ぎない。

このような境遇に身を置き、自分のことを"取るに足らない"と表現する人間は表面化しないだけで世の中に大勢いるだろう。それどころか、私のように趣味に興じられる人間はまだ恵まれている方だと思う。世の中の暗いところは見えないだけで広く存在しているのだ。そんな暗闇に住む人間の中には、「VRのようなものは金持ちの道楽、夢のまた夢、そんなものに使うお金はない」と思っている人もいるかもしれない。かつては私もそう思っていた。

しかし購入してから印象を変えられた。VRは明らかに「娯楽のための道具」「ガジェットオタクを喜ばせるデジモノの一つ」「意識が高いクリエイターのためのお立ち台」の域を超えている。少し使用してすぐに将来自動車やスマートフォンと同じく生活に密着するデバイスになると直感した。現時点でさえVRはQOL( = Quality Of Life、生活の質)を向上させることができる。しかも、コスパがいい。VRでできることは、実際に現実でやるよりも遥かに心理的・経済的コストが安く済む。VRは、私のような"取るに足らない人間"にこそ必要、とまで言い切ることができる代物なのだ。

今回はそんな過去の私と同じようにVRの有用性をいまいち想像しづらい人のために、VRヘッドセットによってQOLを上げる方法をいくつか紹介する。

その前に


その前にまず、外に出るのは大変に労力がかかることである、という価値観を共有しておきたい。
朝起きる、シャワーを浴びる、髪の毛を乾かす、服を選ぶ、服を着る、化粧をする、髪の毛をセットする、外を歩く(特に夏は眩しいし暑い、汗っかきは死にたくなる)、電車に乗る(人がいっぱいいるし待ち時間がだるい)など。
それ以前に、服や靴、化粧品を買うのも労力がかかる。お金もかかる。美容院に通うのも一苦労だ。
更に私は忘れ物しやすいし、服を決めるのが苦手なので、前日に全部支度をして、服も決めておいて電車の時間も調べてアラームをセットする。待ち合わせ時間に間に合う電車の時間を調べたら、その3時間前に起きられるようにする。
"外出"と一言に言っても、本当に大変な作業なのだ。毎週のように外出している人は恐らく私とは違う種族の人間だろう。

それと私ははっきり言って人が嫌いである。人がたくさんいるところには行きたくない。
旅行は好きだが観光地に人が大勢居るのを見ると気が滅入るし、身近なところで言えば電車も街中もショッピングモールも人が多くてあまり好きではない。
2020年の春頃は流行り病の影響でどこにもほとんど人がいないような状況だったが、そんな様子を見て歓喜したものだ(飲食や観光業界他の方々には申し訳ないが)

本記事のテーマは、外出するのは大変、という価値観がないと成立しないので、主にこういった後ろ向きの感情に共感出来る人に向けた記事となる事を先に理解していただきたい。


更にもう一つ、本記事ではOculus Linkを使わないと触れられないコンテンツについてもQuest用コンテンツと一緒くたに語っている。Oculus Linkは高価なゲーミングPCで動かすことが前提で、申し訳ないがゲーミングPCを持ってない人に対して配慮が欠けている内容になっている。一応、Quest2は複数のアプリストアにアクセスできるデバイスであることもあり、どのストアに該当アプリがあるのか明記しておくので、そちらを参考にしていただきたい。


■GoogleEarth VR(Steam VR) ・YouTube VR(Questストア)でバーチャル旅行をしよう

GoogleEarth VRはSteamVRで公開されているアプリで、もちろん無料である。
従来のGoogleEarthで見られる3Dマップをジオラマのように俯瞰したり、ストリートビューで探検することもできるアプリだ。
さすがにストリートビューは立体視には対応していないが、地球上のほぼ全ての場所に行く事が出来る、しかも無料というのはとてもコストパフォーマンスに優れる。
海外の行ってみたい場所に行くも良し、地元の街を空から俯瞰するも良し、昔住んだ事がある場所に行って懐かしむも良し。
そのまま使っても良いが、ある程度行動に縛りを設けて、(例えば、都市間移動は俯瞰視点、それ以外はストリートビューのみ使用など)バーチャル旅行的な企画を立ててみるのも面白いと思う。旅行とはそれなりに時間と労力がかかるものなので、時間がかかって少しめんどくさく感じる方がかえって本物らしくなるのではないかと思う。
YouTube VRも基本的には同じものだが、こちらでのおすすめは動物園や水族館の360°動画を見ることだ。園の公式YouTubeアカウントの動画なら、ガラスを隔てることなく間近で動物たちを見る事ができる。可愛い動物は多分ストレスを軽減する効果がある。ペンギンも見られる。疲れてしんどい時に良い。
リアルの水族館や動物園に行くと人でごった返していて、動物を見に来ているのか人を見に来ているのかわからない時も多々あるが、VRなら人が映っていない動画も多い。そう言った意味で余計な気疲れをせず純粋に動物の可愛さを摂取できる動物園・水族館の360°動画はおすすめしたい。
現時点では残念ながらGoogleEarthVRはSteamVRにしか無く、Quest2単体では動かせないのでそこは注意してほしい。


■探索系・ウォーキングシミュレーターゲームで空間を感じる


YouTubeやGoogleEarthと似たような趣旨になるが、仮想の空間を作って、その中を探索させるようなコンテンツは各ストアに数多く存在する。旅行と似たような感覚で色々な世界に訪れることが出来るわけだが、特筆すべきは他人が全くいないことである。
例えば日本の観光地と言えば神社仏閣は欠かせないが、有名な場所は十中八九観光地化されていて、大勢の人で賑わっている。京都がわかりやすい例だ。
何年か前の京都では金閣寺や三十三間堂・伏見稲荷など有名なスポットでは人をかき分けないと目当ての物を見ることすら出来ず、侘び寂びもへったくれもないという状態だったが、VRでは人がいない状態で思う存分様々な建築物を探索し、深く味わう事ができる。
また、時代と共に失われた景色を再現したコンテンツもあり、こちらの場合は現実ではもう見る事が出来ない風景を見てノスタルジーに浸ったり、歴史を体験することができる。VR酔いには気を付けたいところだが"人目を気にせず空間を感じられる"のが探索型コンテンツの長所だ。

↓良かったものがあれば追記予定


■VRプラネタリウムで満点の星空を楽しむ


満点の星空を見たくても、都会じゃそんなものはとうに見られなくなったし、田舎に旅行しても夜中に外に出るわけにもいかない。しかも星が綺麗に見えるような田舎はお金と時間がかかるし手軽ではない。では代わりにプラネタリウムに行こうと思えば、あるのは子ども向けの学習施設ばかりで、行ってもファミリーやカップルで賑わっていて落ち着いて見られたものじゃない。
あと、天体の知識はあるから解説なども不要だし、ただ満点の星空をぼーっと眺めていたい。

そんな我儘な願望を叶えてくれるのがVRプラネタリウムだ。HOMESTAR VRというアプリが今一番ポピュラーで、私もこれを購入している(Quest版、Rift版どちらもあるが、Quest版の方がケーブルレスで取り回しが良いのでそちらを購入している)残念ながらVRヘッドセットの視野角の問題で"視界いっぱいに広がる星空"ではないが、それでも没入感はあるし、ベッドに寝転がってただただ静かに星の煌きを眺めているとリラックスできる。

BGM、星座の線、星座や星の名前、太陽系惑星などはON/OFFが可能で、その土地の星景を再現するモードや、星空が綺麗なスポットの地形を模してあるモードもある。私のオススメはその「満天の星空セレクション」モードで、これは地形だけではなく環境音なども追加されていて、プラネタリウムというより"本物"に似せているようなモードだ。よりリラックス効果が期待できる。星空は多分ストレスを軽減する効果がある。

■VRChatなどソーシャルVR


"人と話すのは得意じゃないけど寂しい"
"人は嫌いだけど人と交流したい"
私のようにそんな拗らせた感情を持ってしまった時はソーシャルVRの世界に飛び込むのが良い。
外出する支度をする必要が無い、外見に囚われないのは大きな利点だ。
自身の見た目にコンプレックスがある人、外見的特徴・性別に依存しないコミュニケーションがしたい人にとっては理想の環境だろう(尤も、私には多くのユーザーが美少女アバターを身に付けている時点でだいぶ性別・外見的特徴に縛られているように映るが、現実よりは幾分かマシだろう)
私もまだあまり馴染めていないのが、気を付けなければならないのはVRはリアリティがありすぎる故、"リアルだとおとなしいのにTwitterだと饒舌になるタイプ"の人間はこけしのように無口になる恐れがあるということだ。大抵の人間はそう器用に変われるものではない。進学したら違う自分になれると思っていても案外変わらなかったりするのと同じだ。
かと言って無理に自分を演じるのは疲れるし、コミュニケーションとは元々体力と精神力を消耗するものだ。オリジナルアバターでフルトラッキングしてキラキラしている可愛い女の子が眩しすぎてしんどくなることもあるかもしれない。SNSと同じく、用法用量をよく守って適度に使うのが良さそうに思える。
私はまだ準備が整っておらず、ほとんど体験出来ていないが十分に楽しむことができた際には記事を書くつもりなので、"取るに足らない人間"のソーシャルVRの使い方が気になる方は気長に待ってもらえると嬉しい。


最後に


ところで、私は深海生物が好きだ。
海の生き物は全般的に好きだが、特に深海生物はちょっとグロテスクなところがキュートで良い。好きが高じてnoteのアイコンにしているくらいだ。

シーラカンスやオウムガイなど、生きた化石と呼ばれる深海生物の多くは、太古の昔に生存競争を繰り広げる栄養豊富な浅い海から、生き残るために光の届かない深海に逃げてきた結果、淘汰される事なく現代までその姿を保ったまま生きてきたと言われている。
無意識的に深海生物、ひいては深海という環境に親近感を覚えているところもあるのかもしれない。

VRは全ての人の現実にとって代わるものになり得るかはわからないが、現実で生きていくのが難しい人にとってはいくらか生活をマシにするものだ。
私もまだ買ったばかりで、とてもVRの事を知っていると言える立場ではなく、今後もどこまで"VRで維持する生活"を実現できるかわからない。
しかし、私のような"取るに足らない人間たち"にとっての深海、日が差すことが無くてもある人たちにとっては生きていける場所になってくれる事を願いたい。

今回の記事は金欠とゲームと仕事が忙しい事もあり、アプリを紹介する記事としては内容がかなり薄くなり、相対的に自己憐憫の方が濃い内容になってしまった。
今後もQOL向上に役立つコンテンツを探していくつもりなので、見つけたら追記する。

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