ピタゴラス素数が2つの平方数の和で表せることの証明

ほぼ自分用かもしれませんが、現実逃避で気づいたら執筆していました。証明は『数学原論』(ブルバキじゃない方)に書いてあったものを自分の言葉で書き直しただけです。手元に本がなくて自分の簡単なメモノートを読み返しただけなので、嘘が入っていたらすみません。

証明するステートメント

奇素数$${p}$$について、$${p=a^2+b^2}$$となる自然数$${a,b(< p)}$$が存在する$${\Leftrightarrow p}$$は4を法として1と合同

を示します。十分条件は合同式から自明ですが、必要条件は少し難しいです。ではやっていきましょう。

前提知識

体とか環とかその辺りの初歩だけ知っていればOKです。ユークリッド整域ってなんかよくわからんノルムみたいなのあったなとか。あとはイデアルで環を割ることができるととてもよい。

命題を同値で言い換える

以下では$${p}$$を奇素数とします。自明ですが、$${p=a^2+b^2}$$となる自然数$${a,b(< p)}$$が存在することは、$${p=(a+b\sqrt{-1})(a-b\sqrt{-1})}$$となることと同値です。これはつまり、$${p}$$が複素数の範囲で"因数分解"できるということを表しています。逆に、そのような自然数$${a,b}$$が存在しないことは、環$${\mathbb{Z}}$$に$${\sqrt{-1}}$$を追加した環$${\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]}$$(ガウス整数環とも呼ばれるもの)において、$${p}$$が素元であることと同値です(なお、ここではガウス整数環がノルムを与えることでユークリッド整域であることなどをナチュラルに使っていますが、少し考えれば納得してもらえると思います)。

ところで、単項イデアル整域$${R}$$において、$${R}$$の元$${a}$$が素元であることは、それが生成する単項イデアル$${(a)}$$が$${R}$$の素イデアルであることと同値です。また、単項イデアル整域において、(0でない)素イデアルと極大イデアルの概念は一致します。従って、$${\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]}$$において、$${p}$$が素元であることと、$${(p)=p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]}$$が極大イデアルであること、従って剰余環$${\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]/p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]}$$が体であることは同値です。

以上をまとめれば、

$${p=a^2+b^2}$$となる自然数$${a,b(< p)}$$が存在する$${\Leftrightarrow \mathbb{Z}[\sqrt{-1}]/p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]}$$が体でない

という結論を得ます。

複素数環について

ところで、これは有名な話ですが、複素数整数環は、普通の整数環上の1変数多項式環をイデアル$${(X^2+1)}$$で割ったものと同型です。イメージ的にはこの剰余環をとる操作によって$${X^2+1}$$の解である$${\sqrt{-1}}$$を導入するような感じです。ちゃんと書けば、

$${\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]\cong\mathbb{Z}[X]/(X^2+1)}$$

です。というかむしろこれが正式な定義だと思ったほうがいいかもしれません。同型写像は$${a+b\sqrt{-1}\mapsto a+bX}$$で与えられます。従ってイデアル$${p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]}$$で割る操作のことも言い換えられて、つまり

$${\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]/p\mathbb{Z}[\sqrt{-1}]\cong \mathbb{Z}[X]/(X^2+1)/p(\mathbb{Z}[X]/(X^2+1)\cong \mathbb{F}_p[X]/(X^2+1))}$$

となります。$${\mathbb{F}_p}$$とは、$${\mathbb{Z}}$$を$${p}$$を法とした合同で計算する有限環で、$${p}$$が素数の時には体になります。このイデアルで割ってるところは雰囲気で察してください。上の言い換えを用いれば、

$${p=a^2+b^2}$$となる自然数$${a,b(< p)}$$が存在する$${\Leftrightarrow \mathbb{F}_p[X]/(X^2+1)}$$が体でない

というところまできました。あと少しです。

あとは多項式の議論に落ちる

$${ \mathbb{F}_p[X]/(X^2+1)}$$が体でないということは、$${(X^2+1)}$$が極大イデアルになってくれない、つまり環$${\mathbb{F}_p[X]}$$において$${X^2+1}$$という多項式が既約でない(2つの多項式の積で表せる)ということと同値です。言い換えれば、$${ \mathbb{F}_p[X]/(X^2+1)}$$が体でないならば、$${\mathbb{F}_p}$$上で$${X^2+1=(X-a)(X-b)}$$なる自然数$${a,b(< p)}$$が存在します。

ところで、唐突ですが、$${\mathbb{F}_p[X]}$$上の多項式$${X^p-X}$$を考えます。この多項式は(フェルマーの小定理より)任意の自然数について$${p}$$と合同であることから、$${\mathbb{F}_p}$$の全ての元を解にもつ方程式です。従って$${X^p-X}$$は$${X,X-1,\ldots,X-(p-1)}$$の全ての多項式で割り切ることができ、また次数の比較から、$${\mathbb{F}_p}$$上において

$${X^p-X=\Pi_{n=0}^{p-1}(X-n)}$$

が成り立ちます。従って、$${ \mathbb{F}_p[X]/(X^2+1)}$$が体でないことと、$${\mathbb{F}_p}$$上で$${X^2+1}$$が$${X^p-X}$$を割り切ることは同値です。そして、このことは、$${p}$$が4を法として1と合同であることと同値です(このことは単純に多項式の除算をやっても分かりますし、$${\sqrt{-1}}$$を代入して納得してもらっても構いません)。よって、

$${p=a^2+b^2}$$となる自然数$${a,b(< p)}$$が存在する$${\Leftrightarrow p}$$は4を法として1と合同

という結論を得ます。お疲れ様でした。

最後に

こんなことしてる場合じゃないのに現実逃避でnoteの記事なんて書いてしまいました。メンタルが限界です。誰か助けてください。

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