見出し画像

2021.4.3 イベント報告

こんにちは。BONDでは、前回2月に引き続き、先日「仮放免者のお話を聞く会」を開催しました。お二人の方にお話していただいたうち、今回は大学生のAさんのお話を報告させていただきます。

1.プロフィール

Aさんは、日本で難民申請者で仮放免中のご両親のもとに生まれました。そのため生まれた時から仮放免状態に置かれ続けています。
小中高と、すべて日本の公立学校を卒業していて、周りの友人はほとんどが日本人だそうです。

しかし、仮放免者は、「住民票を持てない」「都道府県をまたぐ移動の際に事前の申告と入管からの許可が必要」などの制約の下に置かれています。そのため、入学試験が本当に受けられるのか、という不安があったり、校外学習・修学旅行の際にその都度入管への申告が必要など、周りの友人とは異なる困難にも再三見舞われてきたそうです。

さらに、高校生の時、入管に県境をまたぐ移動の許可を求めに行ったところ、「帰国以外の行動は避けてください」と繰り返し言われた経験を、大変腹立たしい記憶として、お話してくださいました。
なぜならば、Aさんは日本で生まれ育ったのであり、両親の母国を訪れることは彼にとって「帰国」とは到底言えないからです。
これらの苦しい境遇に見舞われながらも、熱心に学業に取り組んできたそうです。

2.大学生として

Aさんは現在大学生であり、依然として仮放免の状態に置かれています。周りの友人は日本人が多く、趣味の合う人も多々いるそうですが、彼らには自身が仮放免状態にあることをオープンにはできていないそうです。

さらに、周りの大学生は就職活動など、将来の進路を考える時期でもありますが、Aさんは異なる状況に置かれています。
なぜならば、仮放免者は就労許可がないからです。現在、Aさんはアルバイトさえできていません。

そのため、せっかくやりたい仕事・分野が見えてきているにもかかわらず、就職のために何の準備もできない状況です。「どうすればいいのか」という一言に、Aさんの本音がにじみ出ていました。

現在唯一できるのは、「入管からの在留特別許可」を待つことだけです。
その上、2ヵ月に1度の入管への出頭の度に、職員から「なぜ帰国しないのか」「収容される可能性もある」などという言葉をぶつけられます。

「帰国」という言葉が不適切なのは、先に指摘した通りです。

3.入管、入管法改正への想い

最後に、入管や現在議論になっている入管法改正への想いを話してくださいました。

一番は、日本で生まれたのに「不法在留」というレッテルを貼られること
これが、Aさんにとって許しがたい部分だそうです。

法改正に関しては、「もっと仮放免者一人一人の状況を把握して待遇を考えてほしい」という切実な想いと共に、「収容施設の運用には税金が使われているのだから、入管にとっても今の状況はよくない」という鋭い指摘もありました。

まとめとして、「入管にも外国人にとっても納得できる法改正の整備がなされるべき」という言葉で締めくくられました。

4.お話を聞いて

同じ大学生として、Aさんの今の置かれている状況は、想像を絶するものだと思いました。

とりわけ、「帰国」という言葉への戸惑いや、就職活動を目前にしたどうしようもない不安が吐露されていたのが印象的でした。

Aさんのお話にあったように、入管はもっと一人一人の境遇に寄り添った対応をすべきだと思いました。

政府、入管は退去強制命令が出されて以降も帰国しない外国人を一括りに「送還忌避者」とあたかも命令に従わない悪者のようなニュアンスで呼んでいます。

しかし、その実情は、今回お話いただいたAさんのように、日本で生まれた学生、子どもたちも多く含まれているのです。入管が公表している数字でも現在国内に300人が日本に生まれながら在留資格が無い状態で生活しているのが実態です。

しかし、政府、入管はこのような当事者の実態を正面から見ることなく、命令に従わない外国人をとにかく国へ帰すことしか考えない「送還一本やり方針」を貫いています。今国会に提出されている入管法改正案もこの「送還一本やり方針」を進めていくためのものでしかありません。

私たちBONDは、政府、入管の進めようとしている、当事者の事情を無視した入管法改正に反対し、今回お話してくださったAさんのように、入管から「帰れ」と言われても帰国を選択することのできない事情のある当事者の方に在留特別許可を与えることを求めて今度も取り組んでいきます。

文字起こししてしまうと、どうしても臨場感に欠けてしまう部分があります。この記事をご覧になって関心を持った方がいらっしゃれば、今後も同様のイベントを開催していくため、ぜひご参加いただければと思います。