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中学生腐女子が地方イベントにサークル参加した話


私の観測するタイムライン上で何やらnoteが流行の兆しを見せているので、便乗がてら投稿したいと思った。
いつ飽きるのかも分からないけれど、どうせなので長文自分語りを中心に使っていきたいと思うよ。


というわけで、せっかくのオタクのアカウントなので、オタクになり、ちゃんと行動を起こし始めたワンステップ目についての自分語りを展開したい。

※おおマジにマジの話だけど、ちょっとだけフェイクが混じることは容赦

私が同人について知ったのは小学5年生の時で、詳細は省くが友が間違えて買ってきた非公式アンソロを覗いたときにそのアンダーグラウンドさとくんずほぐれつなされる“推し”の状況の意味不明さに圧倒され、瞬く間に腐女子になった。

そのあと、きちんと同人イベントの存在を知ったのは中学生になる手前くらいだったと記憶している。

当時高校生の文通相手から「遊びにおいで」と誘われたのである。

(注釈 当時の私はインターネット環境が一切無かったので当時のオタクとのやり取りはリア友か文通しか無かった。)

それは家から電車で数駅の場所で開催された本当に小さなイベントだった。わかる人に言うと、「オールジャンル同人誌即売会 50sp規模 だいたいおでライみたいな空気感」である。
本当にローカルで、地元民が思い思いに好きな作品のラミカとかシールとかポストカード(だいたい自家制作)を頒布する。プチオンリーもないし、むしろサークル頒布物に印刷所が絡んでいるほうが稀である。

これが人生で初めて一般参加したイベントとなった。

(関係ない話をするが、初めての参加がこの規模で本当に良かった。事前の準備も何も必要なく、後述するが頒布価格も大規模イベントに比べて非常に安価な傾向があるので雰囲気やイベントの何たるかを肌で体感するチュートリアルをやさしく終えることが出来る。なので、特にお金があまりなかったり、人が密集する空気感を知らなかったりする子は最初はそういうイベントから徐々に知っていくべきであると思っている。

よくインターネットで耳にするが、初参加がコミケ、例大祭だったとおっしゃる若い人は本当にすごい。何かやばい「圧」みたいなものに押しつぶされやしてないか。老婆心ながら心配になる。まあ、その分、クッソ楽しいんだけどね。)


閑話休題。
文通相手(以下A)は、当時人気ジャンルのイラストのコピー本と台紙に印刷して切り抜いたシールを頒布していた。
正直、そのジャンルのことはよく知らなかったのだが、念願の仲良しAの作品がカタチになっているのだから、買わないわけがなかった。

Aのサークルは非常に人気であった。
理由は明白で、人気ジャンルである上に絵が非常に上手いからである。
参加人数もそう多くないイベントで列が形成されていたことから、即売会を初めて経験した自分にさえその事実を実感させた。

そして、Aの表情。緊張して顔はよく見られなかった気がするが、確かにその顔は、笑顔といわずして何と言えるのかわからない。すがすがしい顔をしていた。気がする。
もしかしたら当時のフィルター補正かもしれないが、そう思わせるほどにあの空間は良かった。

クラスの隅っこでオタクの話をしている自分を肯定してくれる空間。登場人物全員オタク。オタクしかおらん。そんなことある?
私が人に気を遣わずにありのままオタクであっていいというのだ。

思えば、学校給食の時間、いかにしてJ-POPっぽいボカロ曲を流してパンピ(これってもう死語なんですかね)に受け入れて貰えるかと画策していた時期だった。ラノベに書店のカバーをつけてあたかも一般図書であるかのような振る舞いをしていた時期だった。夏休みの読書感想文でボカロ原作の小説を題材にあげ、いかに感動的かを書き連ね、またもやパンピに「ふーん、意外とそういうのも面白そうじゃん」と言わしめるかと努力していた時期だった。机に病んだボカロ曲の歌詞を落書きして、いかに深い世界が我々の中に広がっているかをアピールしていた時期だった。

そんな「努力」を一切せずとも、ここにいるみんなは同志で、仲間で、戦友である。
BGMで流れるボカロ曲やアニソンを口ずさんでも一切合切許され、肯定されるのだ。

即売会、めちゃめちゃ楽しかった。


さて、中学生当時の私は既に絵を描いていた。
何なら誕生日に親から買ってもらった廉価版の板タブを持っていたし、美術部に所属してゴリゴリに二次元イラストを錬成するタイプのれっきとした自称「底辺絵師」の身分だった。
作品がカタチとして残る。それを知らない人が見てくれる、何ならお金を出して買ってくれるかもしれない。いや、出してくれなかったとしてもあの「場」には確かに同志との交流がある。

中学生というのは何かと万能感に浸ってしまうものである。
当時の自分もその例に違わず、底辺絵師を自称しながらも、心のどこかで「中学生なのにこんなに上手だなんて凄い」「こんなに行動力があって素晴らしい、中学生なのに!」「大人顔負け!」といったタイプの褒めを期待している。中学生の絵描きは全員これになりたがっている。全員。一人残らず。
そして当時、自分のイラストには謎の自信があった。

(ちなみにこれは自信があった中学生のイラストである。どう思う?)

そんな中でAを見てしまった。彼女の姿は、自分が思い描く大人顔負けの学生の姿、素敵な人気絵師像そのものであった。

書き手として参加したくなるのも当然だった。


要するに、彼女になりたくなってしまったのだ!


そうと決まると行動は早かった。前回のイベントで貰ったチラシの裏面に記載されているサークル参加用紙に記入して、サークルカットを描いて、ポストに投函。入金まですぐに済ませてしまった。そのイベントの参加費はまあまあ安かったのでお小遣いとお年玉でどうにかなった。普通にすごくない?
(このイベントは、参加者は義務教育を終えてから云々~といった規定はなかった。普通のイベントはもっとこまやかなルールがあるものだが、おそらく小規模ならではの緩さだろう。そういう意味ではかなり運がよかったと言える。)


そこでは確か、ボカロキャラのシールを作った。デフォルメでキャラを描きまくり、100均で買ったシール台紙に印刷して、切って、完成。定番のローコスト同人グッズだ。
せいぜい紙に印刷する程度のことしかしたことがなかった当時の自分からすると、「シール」になった自分の絵がインクジェット印刷機から出てくる様子が、たまらなく愛おしかった。すごい、あの空間で見たモノが自分の手で錬成されている。

本当は本を作れたら良かった。当時から4コマ漫画のたしなみはあったが、明らかな手間がかかることは理解できていたので避けた。この冒険はのちに行い、ちょっとしたドラマを作ったのだが別の話になる。

前日の夜は眠れたっけ。眠れなかった気がする。何と言ったって、自分の絵に値をつけて売る(正式には頒布だけど)のだ。バイトもできない中学生がそんなことをやっていいのか、というか、成立するのか。
そんな感じのことが頭を駆け巡る。

準備は万端だ。郵送で送られてきたサークルチケットを片手に、かなりの重装備で朝早くに起きた。親から「どこ行くの」と普通に怪しまれていたが、「ちょっとね、○○市に遊びに」とだけ伝えてそそくさと家を出た。運よく家族は放任主義であったためそれ以上の追及はされなかったが、絶対に挙動不審だっただろうなと今にして思う。
この日のために結構な準備をした。当時の推しキャラをイメージしたダサいキャップをなけなしのお金で購入したことも覚えている。なにが必要で何が必要でないか、どれだけの数を刷ればいいのか見当もつかないから結構な数印刷してよなよな切り抜いていた。絵も、かわいいと言ってもらえるようにたくさん勉強したのだ。

慣れない設営は、それらしい什器をダイソーで揃えてもたもたと行った。ラックにサンプルを貼り付けて、値を設定する。

「1枚20円 6枚で100円」
(※当時のレートに従った結果。このイベントではこれか50円くらいが相場。)

そして、主催さんの声が響く。
「それでは、第〇回、即売会を開催します――」
拍手の音。あ、ここで拍手するんだ。

人が入ってくる。めっちゃ通り過ぎていく。みんな何を買うの?やっぱりAさんのラミカ?

とにもかくにも不安しかなかった。そりゃあそうだ、数回行ったか行ってないかの即売会に右も左もわからないまま、インターネットもままならない状態で、勢いに任せて参加して不安にならない中学生など存在しない。即売会の“そういうもの”を何一つ理解できていなかった。

通り過ぎる人を目を丸くしながら見守り、自分の絵がサークルカットとして載っているパンフレットをにやにやしながら眺めていたときだった。

「かわいいー!ミクちゃんですか~?」

誰か来た。

「6枚で100円なんですか~?じゃあミクちゃんと、リンちゃんと…」

誰か……というか、その人、私のシールを欲してない?欲しいのか?私の絵が?私の描いた初音ミクが…???

100円を受け取り、言われた通りのシールを手渡す。

「アッ、アッ、アリガトウゴザイマス」

なんか、売れた。

びっくりした。私の絵を見て、かわいいと言って、100円も払って、貰っていってくれた。

マジ????????

その後もちらほらと人が来てくれた。今にして思えば1枚20円の脅威の敷居の低さが功を奏したとしか言いようがないが、とにかく人が私のスペースに来て、私の絵を見て、お迎えをしてくれた。あの妄想が、小規模とはいえ、ほんの数人とはいえ叶ってしまった。


その時から、私はサークル参加の魔法にかかった。


売り上げは雀の涙である。超絶安価なサークル参加費の回収さえできていない。Aさんの人気と比べるのもおこがましい。

しかし、確かに人が来て、数ミリとはいえ好意を示してくれた。それだけで十分であった。気づけば、Aさんへの憧れから、巨大な自己満足へとその感情が変化していた。私の絵がシールになった。そして人が見てくれた。すごい。すごいぞ即売会。



今も、この魔法は解けずにいる。私は中学生の好奇心と感動を未だに引きずっている。きっと、同人に触れる人間の多くはこの魔法の被害者だ。

コミケに出る6割だか8割だかのサークルは赤字だと聞くが、それでも、直接他者に認めてもらえるあの瞬間のためにえげつない時間をかけるのだ。

それはとんでもない狂気の産物であり、文化だ。

いやはや恐ろしい。


今の私は腐女子としての活動は一切していない。(しいて言うならフォロワーに女装を推奨していることくらいである。)
だが別のジャンルで同人活動は行っているし、何ならそのためだけに大阪やら東京やらに飛んだ。頒布物も、プリンターで錬成するシールやラミカやポストカードから、印刷所に製本を頼めるくらいになった。大人になって、今の自分はあの時より金もあるし環境も整いつつある。


おい、見てるかクソ根暗クソオタクの中学生の私。今も残念ながら何一つ変わっちゃいないが、一つだけ、お前のせいで私はどうしようもない世界に片足を突っ込んで離れられなくなってしまったぞ。どうしてくれるんだ。今、大人になってしまった私は「やれること」が増えつつある。シールどころの騒ぎじゃないんだぞ。
お前があの時飛び込まなかったら、Aさんへの憧れだけで終わらせていたら、今頃どうなってたんだろう。想像もつかん。Aさんはもう結婚して同人からは足を洗ったんだぞ。私はどうしたらいい。助けてくれ。



この話、実は前編である。

長くなったので次に回すことにするが、要するにこの魔法が一度解けかけた、という話をしたい。調子に乗って、漫画を描いたときの話だ。
またそのうちに……


【追記】
編集部様のおすすめ記事に掲載されたとの事でものすごくたくさんの方に見ていただいたようです……ありがとうございます……恐れ多い……

前編と言いながら後編をまっっったく書いてないので申し訳ないですね

そのうち書きます、まじで書きます 待ってて……

元々Twitterの身内向けに俺の話を聞けーー!!!と投げたnoteだったので女装云々とか意味のわからないワードが飛び交って困惑されていることと思います。
まさかこんなに見てもらう機会があるなんて思わなかったもので……本当にすみません……

また忘れた頃時に懐古をしに投稿しますので、期待せずにお待ちくださいね!

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