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【ナニWAA! 第24回セッション】レポート

〇開催日時2022年7月22日(金)19:30~21:30

〇テーマはじめの1滴の村からつなぐ、つなげる
~源流と生きる地域の未来を~

〇登壇者
加藤 満(かとう みつる)さん
1988年生まれ。奈良県橿原市生まれ。
心理的安全性アンバサダー、川上村オンラインコミュニティ”かわかみらい”運営モノノフ(ももいろクローバーZファン)、乃木坂46好き。
HSP携帯ショップ勤務、金融会社を経て、2017年4月より奈良県川上村職員(行政マン)。2018年6月には、総務省行政管理局企画調整課に短期交換留学。1級河川紀の川の源流に位置する村として、水源地の村づくりを進めており、総合計画の進行管理や村づくりを進める事業立案等企画系の仕事に従事。総合企画担当。水源地の村づくりの推進のためのロードマップづくり、SDGs推進、産官学連携、全国の源流とのつながり形成、コミュニティづくりなど地方の現場で携わる。今までの地域は「不自由な共生」自由を求めて都市に出たけど「自由だけど孤独」これからは「自由な共生」川上村に関わる誰もがワクワクできる社会の構築を目指している。
関わる全ての人が幸せに。

〇モデレーター
山口 真寿美(やまぐち ますみ)
保険会社で営業に従事。Team WAA!セッションに参加し、Team WAA!のビジョンに感動する。関西でもTeam WAA!のビジョンを広めたいと、2018年にナニWAA!を有志メンバーで立ち上げる。多拠点生活への憧れが強く、ワーケーションへの関心が高い。

皆さま
こんにちは。
7月のナニWAA!セッションは川上村役場の加藤満さんをお迎えしました。
冒頭には村内の施設「匠の村」の素敵な風景も紹介くださり、とっても和やかで温かいセッションとなりました。

【加藤満さんの自己紹介ストーリー】

1988年、奈良県橿原市生まれ。
2017年28歳の時に川上村役場へ入庁されます。現在は水源地課配属となり、総合企画系の業務と観光が一緒になった部署で企画系の仕事をされています。コーラスグループ“華音”に所属。
実は、川上村ご出身ではないという加藤さん。奈良県の橿原市のご出身だそう。小さい頃は典型的な「エセ・真面目っ子」だったと振り返ります。
都会への強い憧れから、大学では横浜へ。大学では学園祭実行委員に所属していたそうです。ここには企画部・総務部・会場部・編集部・物品部・経理部など各部局があり、社会人の真似事みたいなものを体験されました。大学を途中退学され、携帯ショップ、金融業など様々な会社で働き、「ライスワーク」をして過ごす日々に。「何で生きているのか、このまんでいいのか」と思って働いていた20代の終わりに、小学校からの友人から、川上村役場の募集を紹介してもらったことが転機になり、現在、川上村役場にお勤めです。

奈良県川上村とは


奈良県南東部に位置し、面積:269.26K㎡(95%が山林)、吉野川の最源流があり、川に沿って26の集落が点在しています。古くから林業で栄えた村で、吉野林業発祥の地。歴史的には南北朝時代に、南朝側が吉野にあったということもあり、悲哀の歴史の舞台になります。明治の市町村制以降、合併という道を選んでおらず、2019年に村制施行130周年を迎えました。
人口的には65歳以上が55.5%で過疎化が進んでいる地域になります。2014年消滅可能性都市として全国第二位となりますが、近年では移住定住施策もう打っているので、子供の数が一部増加しているそうです。

2つのダム建設


川上村の歴史を語るうえで欠かせないのが2つのダム建設。発端は伊勢湾台風の襲来となります。東日本大震災や阪神淡路大震災と比較しても、大震災レベルで被害をもたらし、大きな傷を与えた台風です。この台風をきっかけに大滝ダムの建設計画が始まります。吉野川・紀ノ川の洪水調節が主目的でした。村役場含めて、村の中心部や493世帯が水没することになりました。
一方、大迫ダムも建設が始まります。こちらは農業用水を目的としたダムとなり、151世帯が水没することとなり、併せて600強の世帯が水没、当時の川上村の世帯数からすると1/3が水没してしまうという、村にとって、大きなインパクトを与えた事業になりました。
村にとってはダム建設反対運動というのが激しく、ダム反対一辺倒ではあった中、村の意識を変えた、今でも村長が語り継いでいる、3人の人との出会いが大きかったそうです。

長野県川上村の前村長・藤原忠彦さん
国土交通省の職員だった、竹村公太郎さん
早稲田大学名誉教授の宮口侗廸さん

藤原さんは当時、全国に6つあった「川上」町村を集まめ、川上村の明るい未来を考えようという、川上村サミットの開催を実施いたり、川上町村連絡協議会を設立して、平成8年に東京事務所を開設されたりとさまざまな活動を共にしてきました。

竹村さんは、国交省の職員なのでどちらかというとダム建設推奨する立場だったのに、ダムをつくる側の人間が、村の心情に寄り添って作っている人もいるんだな、と気づかされたそうです。

宮教授は、「川上宣言」を起草されました。これは村の道しるべであり、理想像となります。ダムの反対運動を続ける中でダムを逆手にとって村づくりを始めていこうと歩み始めたのが、今、川上村がテーマにしている「水源地の村づくり」となります。

川上宣言


一、私たち川上は、かけがえのない水がつくられる場に暮らすものとして、下流にはいつもきれいな水を流します。
一、私たち川上は、自然と一体となった産業を育んで山と水を守り、都市にはない豊かな生活を築きます。
一、私たち川上は、都市や平野部の人たちにも、川上の豊かな自然の価値に触れ合ってもらえるような仕組みづくりに励みます。
一、私たち川上は、これから育つ子ども達が、自然の生命の躍動にすなおに感動できるような場をつくります。
一、私たち川上は、川上における自然とのつきあいが、地球環境に対する人類の働きかけの、すばらしい見本になるよう努めます。

最近では小学校の教材にも川上宣言が使われているそうです。川上宣言には利他の精神が含まれている、と言われることが多くあるとか。川上村は、きれいな水を流すところで、より自分たちの世界観を広げて考えている、流域の人の生活も含めて考えているのがこの川上宣言であるという、誇りが川上村にあるような気がします。これが利他の精神を思い起こさせるのでしょうね。

加藤さんが大きく影響を受けた人


栗山忠明・川上村村長
「国が守るべきは国民と国土。日本列島を身体に例えるなら、国道は背骨、河川は血流、その河川に水を届ける源流である私たちはまさに日本の心臓」と栗山村長。村長は大滝ダム反対の急先鋒だったそうですが、川上村への想いは人一倍お持ちの方。流域が安全で安定しないと社会や町は機能しない、という考えをお持ちで、加藤さんは栗山村長から「どんな状況に陥ろうと、あらめない」という想いを学ばれたそうです。

箕浦龍一さん
5年前に総務省と川上村で若手職員を1週間短期交換留学することとなり、加藤さんは総務省へ行くことになります。仕事をするうえで自分がどこにいるか、どんな立場にあるかは関係ない、ということを五感を通じて感じたことが得難い経験になりました。
自分の思いひとつでどんなことでもできる。
「しあわせ」になることから決して逃げない。
当時は人生にふてくされていたという加藤さんは、生きる希望をもらったとお話しされました。そしてこの恩返しは2人に返すより、人のつながりを通じで水源地の村づくりの思いを伝えてることで返していきたいと思うようになりました。多くの人との出会いを通じて自然と共存する感覚を一人でも多くの人に伝えていきたい、それを実現するべく、事業に取り組みます。

地域づくりインターン事業とオンラインコミュニティ


都市部の大学生が2週間、川上村に滞在し、五感を通じて、寝食共にして、暮らしを体感して、水源地の村づくりを考えるというインターンです。動いて考えることで自分たちができることを考えます。時には学生が盆踊りを手伝ったりすることも。このインターンを通して学生から、体験することの大事さ、自分がどう感じるのか、そこから自分は何をしたいのか、を加藤さんは学ばれたとのこと。
自分がしたいことは何か、人のつながりを通じで水源地の村づくりの思いを伝えていきたい。多くの人との出会いを通じて自然と共存する感覚を一人でも多くの人に伝えていきたい、そう考えておられます。

また、2020年7月に、川上村のオンラインコミュニティ「かわかみらい」を起ち上げ、運営をしています。月に一度、1時間の対話をZoomで実施したり、FBグループでの交流を行っています。2022年5月には「あなたに会いたい~水源地の村で かわかみらい in奈良県川上村」をリアル開催されました。
川上村を通じて一人でも多くの人に「しあわせ」になってもらいたい。そのためには自分の幸せを感じられる人間になりたいと思われている加藤さん。いろんな人と出会える、多様な価値観を包摂する川上村になってほしいという願いがあります。

やっぱり、川上宣言は格好いい!


参加者からのインターンで来た学生は村にどんな影響をもたらしているのかというご質問がありました。外の人を地域の人が受け入れる感じになってきたと加藤さんは言います。地域づくりインターン事業が外の人材を受け入れるきっかけになったそうです。続けて、村の方とインターン事業で来ている学生の場を作るにあたってどんな工夫をしているかという質問。これには、気負って工夫はしておらず、うまくいかないことも普通で、出会う場だけはセットして、うまくいくか行かないかはその人との相性だというお考えをお持ちでした。

また、川上宣言の最後の条文「川上における自然とのつきあいが、地球環境に対する人類の働きかけの、素晴らしい見本になるように努めます」の具体的なことを教えてほしいというご質問がありました。

加藤さん、じつはこの条文が最近のお気に入りだそう。コロナになって村の人と接するようになって、必要以上におびえてないように加藤さんには見えるそうです。村の人たちは自然との距離感をはかって生活しているなと感じているとのこと。林業含めて自然は自分たちに恵みを与えてくれてる。でも自然が牙をむくこともあり、それは普通のこと。自然との人間との距離感を自分の中で置き換えている人が多いと。コロナにしても、かかりたくない思いは持っているけれど、そういうこともあるよね、という感覚を村の人たちは持っておられると思われています。村に事業的にまだまだそこまでいっていないのが現実ではあっても、ここまで言い切っている川上村ってすごいな、と感じながら、川上村に住まれているそうです。
地球環境問題が多く取り上げれらる昨今、それに先駆けて、25年前から言い続けている川上村は本当に格好いい、と加藤さんはいいます。

今回のセッションで一番印象に残ったのは、「自然を保全するとは何事だ。人間ごときが自然をコントロールできるなんて思うな」と、村の方がお話しされたというエピソード。

自然と共存して暮らしてきたからこそ、出てくる言葉だと思いました。
川上村から飛び出して、東京でも川上村のファンミーティングを実施される加藤さん。栗山村長がおっしゃっている、きづな・つながりを大事にされています。もう少し、村の人と外の人が接する機会、お互いの思いを交換する機会を作ることが、川上村にとっての課題の一つと感じてらっしゃいました。

ナニWAA!も川上村へ行く機会を設け、加藤さんにもぜひ、会いに行きたいと思います!

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