プロローグ 破壊と再生


私が私として生きることを放棄して約半年近く。

気がついたら知らない部屋にいた。

私だけど私ではない。そんな生活痕跡がちらほらと。



そして、この身体が一人暮らしをして4ヶ月が過ぎた頃、私の身体は物理的に死にかけた。



ああ、寝過ごしたらしい。電車に戻らなきゃ。

意識はそう思っていたはずなのに、私の身体は前のめりに転倒していた。視界が揺れ、鈍い音と共に顔面が側引戸に当たり、ホームドアのサイレン音で我に返った。



「このままじゃ物理的に死ぬ。私はまだ死にたくない。

この身体を、生かすことのみ考えなければ。」そんな冷静なことを考えていたらしい。



結果、この身体は挟まれかけたところをギリギリのところで引き剥がし、脳震盪を起こすというやり方で生かすことを選んだ。本当ならば脳震盪を起こしたところで意識を失ってもおかしくなかったが、気力がそれを止めた。

通行人が声をかけてくれたお陰で椅子に座れたが、正直自分の身体よりも、電車が遅延しなかったか…そのあたりを心配していた。



思えば、そこから少しずつ意識や記憶は薄れていたのだろう。

気がついたら、駅の処置室にいて、電話をかけ終えていた後だった。

発語や会話の受け答えはまともだったものの、上司の声を聴きながら、「この人、名前は知らないけど何だか落ち着く声だなぁ」とぼんやり思っていた。



思えば、私はあのときに一回死んだのだ。物理的に。



そう思わないと精神が持たなかったのかもしれない…。












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?