【第5回】講義概略

第5回なにものゼミにお越しくださりありがとうございました。

第5回の講師ゲストは、HSP専門カウンセラーで、ご自身もHSP当事者でいらっしゃる、繊細の森の代表、武田友紀さん。今回は『HSPとSNS』、『HSPと人間関係』の2つのテーマで、「HSP当事者かも・・・?」というなにものゼミメンバーとともに「HSP座談会」を行いました。


今回の更新は、お越し頂けなかった方向けに講義の概略をまとめていきたいと思います。


HSPとは、生まれつき「非常に感受性が強く繊細な気質もった人」という意味で、英語の「Highly Sensitive Person」の頭文字をとって「HSP」と呼ばれている。HSPは環境や性格などの後天的なものではなく、先天的な気質、生まれ持った性質。統計的には人口の15%~20%。つまり、5人に1人がHSPだと言われている。


HSPには「DOES」という4つの性質がある。

D:深く考えるDepth  

O:過剰に刺激を受けやすい Overstimulation

E:感情反応が強く、共感力が高い Empathy & Emotional

S:ささいな刺激を察知する Subtlety



"「繊細さ」とは?"
武田さん
「HSPの人はたくさん感じ、細かく深く考える性質を持っている。『その性質を大切にしてください』というと、『悩みを大切にしてください』と受け止められてしまうことがある。たとえば『人の目が気になる」』いうことを大事にしたほうがいいんですか?と言われるけど、そうではない。繊細さとは上の4つの性質のこと。その中に『不安』や『一目を気にする』という言葉はない。『悩み』ではなく、『性質』を大切に。

"繊細さと混同されやすい「神経質」"

武田さん
「『間違ったらどうしよう』という不安から書類を何回もチェックするのは神経質。書類をパッと見た時に、『あ、こうしたらもっといいのに。』とパッと思ったり、誤字脱字にすぐに気づいたりするのが繊細さ。この違いは、行動の背景に『不安』があるかどうか。不安のあまり、行動が細かくなるのは神経質。神経質は後天的に身につけた『生きていくための対処法』。神経質の状態は、カウンセリングを通して改善していけるもの。繊細さとは自然にしていて、色んなことに気づき、考えるという性質。」



【HSPとSNS】
"SNSからの意図せぬ情報に心を振り回される"
事前のアンケートでは、「SNSは意図せずともいろんな情報が目に入ってくるので、例えば過激な発言や、辛いニュースなど見て、疲れてしまう、精神的にダメージを受けてしまう」という意見が多く見られた。

→当事者メンバーたちもそれに共感。
メンバー1
「たとえ自分宛のものでなくとも、入ってきた情報に強く心を動かされてしまうから、SNSでは基本的に情報を自分からは受け取りにはいかないようにしてる。」

武田さん
「例えば虐待のニュースがあったときに、昔だったら新聞みたいに自分から情報を取りに行かなきゃいけなかったから、与えられた情報で止まるんですけど、いまSNSとかだとクリックしたらどんどん情報が出てきちゃう。HSPの人たちはそういった情報を受け取るたびに、自分のことのように痛みを感じてしまうから、痛みばかりの世界だと思ったりする。」

→ 情報を見る前にこれは自分に必要な情報かをチェックするということ。自分にとって必要かどうかという視点で、閲覧する情報の取捨選択をする。

→ある程度、違う人間に起きたことだって切り分けて考える。他人であることを忘れない

→社会で起こっている出来事に心を痛めたら支援している側を見たり、実際に寄付をしたりと行動に移す。辛い情報をみて感情が溢れた時は、一旦インプットをやめる。別の視点からその出来事を見たり、その感情に自分が応えるような行動をとることで心がパンクしないで済む。


"発信する時にとても気を遣う"
メンバー2
「自分の発信する内容、そこで使う言葉がねじれて伝わらないようにかなり気を遣ってる。発信する時には、あくまで自分の最近考えてることを発散したいだけで、特定のものとか人とか事柄に対してではないんだよ!というのをあえてディティールとして盛り込んだりする。それでも悩んじゃって載せられないものは、誰かを傷つけてしまう可能性が、自分の中にあるボーダーラインを超えちゃってるんだと思うから、そういう時は発信しない。」

武田さん
SNSをどういう場所として使うか、という基準を自分の中に持つのがいいと思います。

・思ってることをブワーッと吐き出す場所にする
・見たときにホッとできるような場所にする
・インプットのためだけに使う
・アウトプットのためだけに使う

などなど。そうすると、情報を管理しやすくなって、余計な刺激を受けにくくなる。」


「HSPの人は、1つの物事からブワッと芋づる式に沢山のことを考えるので、インプットしすぎると情報酔いしたりする。

・目が冴えて眠れなくなる。
・情報を見ると気持ち悪い感じになる。

これは、情報過多の合図

インプットをお休みにして、アウトプットしたほうがいい。ブログやSNSに書くでもいいし、ノートに丸を書いて"今日はこんな気分"と簡単に書くだけでも◎」


「刺激が入ってきたら、刺激を流す」 が大事!

また、情報が大量に無作為に流れてくるという面では、HSPにとってSNSはマイナスな存在だけれど、深く考える自分にとっては逆にSNSはプラスな存在になっているという声も。

メンバー1
「私は基本的にずっと何かを考えてる。ときどき考えすぎて心がパンクしてしまいそうなときがある。そういうときに限定公開のSNSとか比較的closedな空間で思ってること、考えてることを発信する。SNSは気軽に表現できるし、それに対して友達が面白いリアクションをしてくれるから、そういう意味ではSNSはプラスに働いてる。」


【HSPと人間関係】
"何気ない言動に傷つく"
事前のアンケートでは、「相手の表情や発言から、常に相手が何を考えてるかを感じ取って振り回されてしまうという意見や、今の自分の発言で気を悪くしたり、傷つけていないかなと考えて、不安を感じやすい」という意見が多く見られた。

メンバー2
「話を聞いてるときの、仕草とか間とか、そういった言語化しきれない情報から、相手が私の話をちゃんと受け止めてくれてないなと思う時がある。誰だってそっけない対応をしちゃうのって当たり前にあることで、むしろ傷つく必要ないのに、傷ついてしまう。そしてそういう対応をしたら相手が傷つくことがわかるからこそ、自分が発する時には、相手の言葉とか内容をあまり蔑ろにしないようにしてるけど、逆に自分ちゃんと受け止められてなかったなと思ったら、すごく申し訳ないって思う。」

→相手からの何気ない言動に心を痛めるだけでなく、自分のしてしまった相手への何気ない言動にも心を痛める。


"色んな人から発せられる情報に気づいて疲れる"

メンバー1
「大人数の飲み会が苦手。なんでかというと、他人の視線や些細な仕草から、この人何か足りないな、この人今イラッとしたなという風に、色んな人の表情や仕草から一気に情報が入ってきて、自分が何に合わせたらいいのか分からなくなっちゃう。それですごく疲れちゃって、あまり得意じゃないなと思った。」


"苦手な人ほど近づいちゃう"
メンバー1
「相手が自分のことを理解してくれてないのに、よく思われてないというのがすごく嫌。自分のことを知ってもらいたいし、関係をできればよいものにしたいから、この人私のこと嫌いなんじゃないかなって思ったら、傷つくって分かってても、行っちゃう傾向がある。好奇心なのか、向上心なのかわからないんですけど。自分から自爆しに行っちゃうことが多い。」

→相手の自分に対するマイナスな感情を察知しやすいだけでなく、自分を知ってもらわなきゃ!良い関係を構築しなきゃ!と近づいていってしまう

これについては、メンバー2から
「私は大雑把になることを覚えた。私こういうひとです、わかってもらえないならいいですっていう割り切りを身につけた。例えば、嫌な対応してくる人に対しても、みんなと同じように接したら、もし相手からいい反応が返ってこなくても良しとするというように、自分の中で"~したら良し"というポイントを作った。」 
という意見も。

武田さん
「誰とでもいい関係を築きたいという気持ちがHSPの人は多い。でもそれをやる必要はなくて。無視したりしなくていいけど、挨拶がしっかりできるくらいの距離感を保てればいい。それと、長期で見るということが大事。短期で自分のことを分かってもらおうとせずに、5~6回くらいで話せるようになるかもっていうふうに考える。」

「相手の気持ちがわかると、自分の気持ちも同じように相手に伝わると思ってしまう。それが苦しいんですよね。相手を傷つけないように自分の心の中で悪口言っちゃいけないとか、相手のことをよく思わなきゃって思ってしまうから。でも、相手は意外と分かってない、自分ほど相手には伝わってないんですよね。それが分かると自由になれる。」


"大袈裟?気にしすぎ?"
メンバー1
「私の悩みに対して、『うんうん、わかる。でも気にしすぎだよ!』って言われると、やっぱり傷つく。私は自分の感情にちゃんと向き合った上で「ツライ」と思ってここで話しているのに、それを気にしすぎだよ、大袈裟だよって言われることがすごく多い。」

「大袈裟、気にしすぎ、あとはクソ真面目と言われたことがあって、自分の繊細さをよくないことだと思っちゃってた。私はいろんなことを考える人間なんだ、じゃなくて、大袈裟に受け取ってしまう人間なんだと思ってた。だから何かに悩むたびに、これは大袈裟なんだなと思って、また落ち込んじゃったりして。周りに話を聞いてもらっている時も『大袈裟だな』って思われているんじゃないかという不安が大学に入るまでずっとあった。」

武田さん
「社会に出た後も、『そんな考えてたら仕事進まないでしょ』と言われてしまうことがあって。でもそれって繊細さんにとってスタンダードな感覚だし、それを自分の良さだと思ってもらえたらいいかなと思います。」


"幼少期、辛かったこと・嬉しかったこと"
メンバー2
「幼稚園の時、大きな音がすごく苦手だった。先生が怒っている声とかにかなり敏感で。友達がちょっと大きい声で注意をされてた時に、『怒られた』と思って泣いてしまったことがある。恐怖と『やらかしてしまった』という焦りがあった。ちょっと注意されてるだけでも、『あの子怒られてる。どうしよう。』みたいなのがずっとあった。」

メンバー3
「小学生の頃からあったのが、みんなが遊んでいる時に友達の輪に入れないということ。私のことを誘ってこないとということは、私のことをいれたくないのかなと色々考えてしまって。その様子を見ていて目があった時にフッと目をそらされてしまうと、そこからさらに色んなことを100くらい考えてしまう。入りたい気持ちはあるんですけど、1個のことに対して100、200くらい思考してしまうので、なかなか入れないというのが、それが中学高校でも続いてた。今でも、飲み会とかに行くと黙ってしまう。」

武田さん
「HSPの人は新しい環境に馴染むのに時間がかかる傾向がある。そこにいる人たちがどういう状況か、自分が入っても大丈夫そうかを、すごく観察して考えてからじゃないとなかなか輪に入って行きにくい。」

メンバー1
「私は自分の感性の部分を、小さい頃先生に褒めてもらえたのがすごく嬉しかった。」


"「自分が幸せかどうか」という基準を持つ"
受講生からの質問
「大学生活の中でいろんな経験をしたいと思い、いろんなことに挑戦しているものの、考える時間が長い分それを全てこなすことがなかなか難しい。『深く考えてしまう自分の性質』と『やりたいこと・やらなきゃいけないこと』との両立はどうしたらいい?」

武田さん
「自分のキャパシティは大事にしたほうがいい。一つ一つを深く細かく考えていくから、マルチタスクは苦手な傾向にある。HSPの中にはHSSという刺激を追求するタイプの人がいて、その人たちは新しいことをしていくのが好きだけど、刺激は受けやすいので、新しいことするたびに疲れてしまう。自分の体の状態を感じて、自分が幸せでいられる範囲でやったほうがいい。」


"あなたはなにもの?"
私は武田友紀です。
何者でもなく、一人の人間です。

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