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水俣病訴訟、国と県が控訴

私が子供の頃、4大公害病として習った、水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく。戦後の高度成長期に起こった代表的な産業公害です。

水俣病は化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物を、魚、エビ、カニ、貝などの魚介類が直接エラや消化管から吸収して、あるいは食物連鎖を通じて体内に高濃度に蓄積し、これを日常的にたくさん食べた住民の間に発生した中毒性の神経疾患です。原因となった企業はチッソ (株) (水俣工場) です。

私が学校で食物連鎖による化学物質や毒物の食物濃縮について学んだのもこの水俣病からでした。生物が、外界から取り込んだ物質を環境中におけるよりも高い濃度に生体内に蓄積する現象を生物濃縮、あるいは食物濃縮とか生体内蓄積などと呼んでいます。

水俣病や新潟水俣病の有機水銀、イタイイタイ病のカドミウムをはじめとする重金属や、ダイオキシン類やPCB (ポリ塩化ビフェニル)、DDT (ジクロロジフェニルトリクロロエタン) といった化学物質が生物の体内などに蓄積しやすいとされています。また、セシウムなどの放射性物質の生物濃縮についても議論になっています。

これまで水俣病と認定されておらず、救済策の対象にならなかった関西などに住む128人の原告全員を水俣病と認定して、国などに賠償を命じた大阪地方裁判所の判決を不服として、国と熊本県は10日、大阪高等裁判所に控訴しました。チッソは4日にすでに判決を不服として控訴しています。

[NHK 2023年10月10日 18時50分]

判決は9月27日大阪地裁が、特別措置法の基準外でも水俣病にり患する可能性があるとする初めての司法判断を示して原告全員を水俣病と認定し、国と熊本県、チッソに合わせておよそ3億5000万円の賠償を命じていました。

[NHK 2023年9月27日 21時30分]

公害被害の恐ろしさ、公害被害者救済の難しさをまざまざと見せつけられた思いです。公害が原因と考えられる健康被害で苦しめられてきた人々を広範に救済する道を国や県はいち早く開いてほしいと願います。

新しい化学物質や化合物、放射性物質等、生物への蓄積や私たちの健康に及ぼす影響については必ずしもすべて明らかになっているとは言えません。2度とこのような問題を起こさないためにも慎重な対応と環境や健康のモニタリングの重要性を感じます。


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