喪心の帰宅の後に食ぶ夕餉 滋味なることにまだ喜べり

深まれる秋に募り来 しき頻と憂世の辛み 晴らし難かり

病み深き 年明くる先暗かりて覚束なきは爪の灯火

願わくは眠りしままに小舟乗り川をわたりて西へ行きなむ

拙き字 筆先の毛を二、三本 引き抜き書きて かたちなほなり

食らうとて鮒にも劣り水臭し澱みて見えぬ節穴の真魚

人生に投了したき時もある 千日手打つ無為な日々過ぎ

底辺の不満の徴 道化師が暗示するのはセカイノオワリ

一筋の糸に縋りて這い上がる望み無情にぷつりと断たれ

よみぢゆく 片道切符手に在りて 渡る船賃銭六文也

一度でも我を軽んじ袖にせし社は潰れよと祈りてしこと

恥多き履歴書送り 祈られる 冥福のため終活をせむ