人工内耳の利点とメンテナンスの課題〜制度の継続と充実を〜

第96回

難聴ソルのゆんたくTime

2019年(令和元年)5月9日 島原新聞掲載


私は人工内耳をしてから今年で6年目になります。自分では大きな変化は感じませんが、周りの方から「前は聞き返すことが多かったけれど、今はそれがなくなったね」、「遠くから呼んでも気づくようになったね」などと言われます。

そのようなことを聞くと、知らず知らずに聞こえているんだなと思い、手術をして良かったと思います。人工内耳は体内機を一度埋め込むとそれを一生使うことになります。一生メンテナンスをする必要があります。電池代もかかります。自分の耳でありながら、多くの費用が必要です。

私達、人工内耳装用者にとっては人工内耳対外機の助成制度があることは大きな安心です。

この制度は、長崎県内のすべての市町村で平成29年度から始まり、令和2年の3月末までの期限がついています。ただし、雲仙市には期限がありません。できれば、この制度を無期限にして欲しいものです。

なぜなら、人工内耳はとても高価なもので、私もそろそろ買い替えの時期(5年ごと)になるのですが、次に替えたいと思っている機種はメドエル社のソネットという機種で99万5217円するのです。これを5年ごとに買い替えるのは大変なことです。

長崎県内では、上限額40万円の補助があります。これはとても心強いことです。特に、雲仙市の場合は上限額が110万円で、機種の制限もなく、県内ではとても恵まれた環境です。この人工内耳対外機助成事業は、本当に命綱です。

島原市の実績を福祉課に尋ねたところ、なんと0件とのこと。島原半島内では私自身も新聞記事に度々人工内耳のことを書いていますし、島原市の広報誌にも助成事業については説明が掲載されていましたので、他の地域より認知度はあると思っていました。また、県全体で助成事業を行っているのも長崎県だけで、とても恵まれた環境なのです。

人工内耳は難聴者、ろう者に限らず高齢難聴の方も手術をして利用することができます。

実際、私の友人に高齢難聴で人工内耳をつけて活動の場を広げている方が沢山いらっしゃいます。81歳になる知人は、「人工内耳をつけて良かった」と言って、現役で社会活動をされています。

人工内耳を装用することで、社会とのつながりを持ち、人生が拓けます。多くの方に人工内耳をもっと理解していただきたいと思うのです。私は島原新聞で、その都度その都度人工内耳の情報をお伝えしていますが、県全体にもっともっと人工内耳のことを発信していきたいと考えています。

機会があれば、様々なメディアを使って分かりやすく人工内耳のこと、そして人工内耳の助成について周知を深めたいと思っています。ただ、情報を受け取る側が無関心であれば、せっかくの情報も生かされていないこともあります。今、自分には関係のないことでも、いつかは我が身の問題、そして身近な人の問題になることもあります。

人工内耳のことも、皆さんが自分のことと捉えて考えてくださると理解が深まると思います。

人工内耳は聞こえの利点とその後のメンテナンスの経費の問題が同時に発生します。

だからこそ、本人に負担にならない軽度の助成事金があることが欠かせません。「利用者がゼロだから打ち切り」とならないように、多くの方にご理解いただき、この制度が末永く続き、充実したものになることを願っています。

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