辛さではなく楽しいこと~見えなくとも、きっと未来は~

第54回

難聴ソルのゆんたくTime

 

2013(平成25)年12月28日 島原新聞掲載

 

「行く先は言わない。そのほうが楽しい」

 

これは映画「ライフ・イズ・ビューティフル」で主人公グイドが息子ジョズエに言った言葉です。この言葉は私の心の中で強く印象に残っています。私にとってこういう風に生きたいという人のあり方を教えてくれた映画です。皆さんはご覧になったことがありますか?少しあらすじを紹介します。

 

第二次世界大戦前夜の1939年、ユダヤ系イタリア人のグイドは、叔父を頼りに友人とともに北イタリアの田舎町にやってきた。陽気な性格の彼は小学校の教師ドーラと駆け落ち同然で結婚して、愛息ジョズエをもうける。

 

やがて戦時色は次第に濃くなり、ユダヤ人に対する迫害行為が行われる。北イタリアに駐留してきたナチス・ドイツによって3人は強制収容所に送られてしまう。

 

母と引き離され、不安がるジョズエに対しグイドは嘘をつく。「これはゲームなんだ。泣いたり、ママに会いたがったりしたら減点。いい子にしていれば点数がもらえて、1000点たまったら勝ち。勝ったら、本物の戦車に乗っておうちに帰れるんだ」。絶望的な収容所の生活もグイドの弁術にかかれば、楽しいゲームに様変わりし、ジョズエは希望を失うことなく生き延びることができた。

 

ナチスの撤退後、ゲームの「シナリオ」通り収容所に連合軍の戦車が現われ、ジョズエたちを解放する。ジョズエは母と再会することができたが、そこに最後まで息子を守りぬいたグイドの姿はなかった。(Wikipediaより引用)

 

この映画をみて涙を流しました。戦争がもたらした悲劇に胸を締めつけられる思いと同時に、絶望としか言いようのない時代の狂気の中で精一杯、家族を守ろうとするグイドの姿に感動しました。

 

特に印象に残っているのは最後のシーンで「行ってくるよ」とジョズエに見せたグイドの陽気な笑顔。この映画の前半ではグイドの底抜けに明るい姿を描いており、コメディー映画を思わせるような感じです。後半は戦時色が濃くなり、明日死ぬかもわからないという状況のなか、それでも明るく振る舞い、家族を想うグイド。究極の家族愛がここにはありました。どんな状況下においても気持ちを明るく持つことでその状況をゲーム風にも笑いにも代えることができる彼の姿を見て、こういう生き方もできるのかと思いました。

 

私も突発性難聴になったと気づいたとき、目の前が真っ暗になりました。「このまま両耳とも聞こえなくなったらどうしよう」と将来が不安でたまらなかったのです。そんなときに冒頭の言葉「行く先は言わない。そのほうが楽しい」が自然に浮かび上がってきたのです。

 

行く先(未来)はどこか、そして何が待っているのかは誰にもわからない。ならば「辛いことが待っているのではなく、きっと楽しいことが待っている」と考えたほうが希望を持つことができます。この映画の主人公グイドにそのような考え方を教えてもらいました。

 

ライフ・イズ・ビューティフル―人生は美しい。

 

人生を美しいものにするのは自分の心なのでしょう。いつもグイドのように笑顔を絶やさない。そんな自分でいたいと思います。

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