日本語対応手話と日本手話は異なる言語〜違い理解し条例を〜

第95回

難聴ソルのゆんたくTime

2019年(平成31年)4月16日 島原新聞掲載


4月5日付の島原新聞の見出しに大きく「手話言語条例の取り組みは」という言葉がありました。私は何だろう?と思い、内容を確認しました。市が条例の制定を進めているとのこと。これは大変喜ばしいことだと思います。

全国的に手話言語条例が制定されていますが、この条例は、誰のために、なにを目指した条例なのかをきちんと理解しておくことが必要です。

皆さんは手話には2種類あるのをご存知ですか。一つは「日本語対応手話」。もう一つは「日本手話」です。違いがわかりますか。

日本語対応手話というのは、ある程度日本語の文法と文章を理解し言葉をつなげて表現する手話です。

一方の日本手話は、手話を主な言語として使用するろう者の方々が使う手話です。

手話だけを見ていると、分からないかもしれませんが、明確な違いがあります。

例えば、「私は長崎に住んでいます」ということを伝えたい時、日本語対応手話の場合は「私・長崎・住む」と表します。日本手話の場合は、「私・住む・どこ・?(うなずきをいれて)・長崎」と表します。

いかがですか?違いがわかりますか?

言葉の並べ方が違うのはもちろんですが、一つ一つの単語を表す手話の形も違うのです。

同じ聴覚障害者であっても補聴器や人工内耳の装用により、主に音声言語を使って日常生活を過ごしている難聴者。音声言語獲得した後に失聴した中途失聴者。手話を言語として日常生活を過ごしているろう者との違いがあります。

最初の2者は、様々な支援機器を使用し、日本語対応手話も取り入れながらコミュニケーションを行っています。

ろう者の方は日本手話を最大のコミュニケーション手段としています。

ですから日本語対応手話と日本手話は使用対象が違うものなのです。

ひと言で、手話といっても、この二つは全く違う言語ととらえておかなければなりません。

日本手話を使う方と日本語対応手話を使う方が会話をしても、意思の疎通がうまくいかないことが多いのです。

手話通訳をする方もいろんな段階があり、「手話通訳士」の資格を持った方なら、この両方に対応することができ、健聴者、ろう者、難聴者、中途失聴者をつなぐ役割を果たして下さいます。しかし、この手話通訳士の数は少なく、基本的には手話通訳者が活動している現状のようです。手話通訳者の方は、日本語対応手話を使う方が多い感じがします。ろう者の方には少し分かりづらい面もあるのではないでしょうか?沢山の方に手話を学んでいただき、日本手話の必要性を感じてほしいと願っています。

全国的に進められている手話言語条例の手話とは、日本手話のことを指しています。島原市でも日本語対応手話と日本手話の違いを正しく理解して、この条例を意義のあるものにしていってほしいと思っています。

ただし、難聴者や中途失聴者にとっては、日本語対応手話は手段の一つであり、それが全てではありません。

要約筆記や音声認識などの様々なコミュニケーション手段を活用しています。

手話言語条例が手話に特化されているものなので、それとは別に「情報コミュニケーション条例」という条例を考えていただくことで、難聴者、中途失聴者、高齢難聴者の社会参加を促して欲しいと願っています。

そうすることによって、手話に対し理解を深めると共に、本人の希望やコミュニケーションの場面に応じて様々なコミュニケーション手段を選択できる環境を確保し、全ての人が共生する社会の実現に近づくと思います。

新年度から、庁舎の福祉部署の窓口に手話通訳ができる人を配置する予定とありました。贅沢な希望かもしれませんが、できれば日本語対応手話にも日本手話にも対応できる方がいてくださると、全ての聴覚障害者にとって幸いだと思います。

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