次世代のためにも〜人工内耳 全市町で補助を〜

第106回

難聴ソルのゆんたくTime

2020年(令和2年)5月28日 島原新聞掲載


平成30年4月5日付の新聞に、人工内耳の買い替え時の公的助成が始まったこと、そして、令和元年5月9日付の新聞に、人工内耳の利点とメンテナンスの経費の課題について書きました。書いた当初は、これから人工内耳を買い替える予定のある時、次世代の子ども達やその親が困らないようにという思いで書きました。

この公的助成が平成31年度(令和元年度)までで一旦終了するということでしたので、駆け込みになりましたが、私も申請しました。1か月後、交付の決定通知書が届き、無事に助成を受けることができました。念願の助成制度であったので、とてもありがたいことだと思いました。助成制度のための署名活動を行ったときは、私はまだ補聴器を使っていましたが、人工内耳を実際に使っている人のために必要だという思いで活動していたのです。その後、私自身が人工内耳を装用し助成を受けることになるとは考えてもいませんでした。自分のこととなると、この助成制度は本当に必要なものであると改めて実感しました。やはり3年で終わりというものではなくて、期限を設けずに聴覚障害者を支える制度であり続けてほしいと願わずにはいられません。

現在、人工内耳の周知度が上がってきています。1歳から両耳装用できるようになっています。幼い頃から人工内耳をつけた子どもたちは、健聴者に近い音の世界で生きることができます。実際に長崎県内でも人工内耳を装用した女子高校生が吹奏楽部で活躍されており、NHKの番組にも取り上げられています。また、バレエダンサーになりたいという夢を持ち、様々なコンクールに挑戦している中学生の女の子もいます。彼女は幼児期に人工内耳を装用したそうです。人工内耳は多くの聴覚障害者に希望を与え、世界を広げてくれます。生きていく上では、なくてはならない耳なのです。ただ問題になるのは多額の費用です。

基本的には5年を過ぎると対外機は故障しやすくなり、場合によっては購入が必要となるほか、医療の進歩でより聞こえが良い新機種が世に出た場合は購入したくなりますよね。その費用が片耳だけでも、私が装用する機種の場合50〜60万円以上かかります。それ以上100万円までかかる機種もあります。両耳だといくらになると思いますか?幼い頃からつけ続けると、どれだけの負担になるでしょうか?人工内耳は一度手術すると一生涯つけ続けることになります。補聴器に戻すことはできません。その人の一生を左右するほどの大事なものでもあります。

人工内耳をつけた方々が安心して自分らしい人生を歩んでいくためにも、助成制度をなくしてはいけません。また、自治体によって長崎県内でも雲仙市のように助成があるところとないところがあります。住んでいる地域によって助成を受けられないというものも不公平ですね。人工内耳は体の一部なのです。切れ目のない助成制度の確立が是非とも必要です。

私は以前、人工内耳をなくしたことがあります。その時は全額負担で新しいものにしました。そのことを思うと、今回助成を受け6割程度を補助してもらうことができ、本当に助かりました。通知決定書が届いたときはホッとしました。

ただ今回、長崎市での申請にあたって戸惑うことが多かったのも事実です。書類が多くて複雑であったこと、そして担当者が不慣れでお互いコミュニケーションがうまく取れなかったことなど、順調にはいきませんでした。最初に申請の流れや様式の記入例を視覚化して渡してもらえると分かりやすかったと思います。書類の訂正などを電話してこられたのですが、電話ではやはり聞き取りづらかったので、メールなどでやりとりをした方が間違いはなくなると思いました。聴覚障害者とのやりとりは、視覚的なものにしてただければ安心です。

自分も含め次世代の子どもたちが一生涯にわたり人工内耳をつけて社会で活躍するためにも、長崎県をはじめ、県内の各市町で助成を受けられるようにしていただきたいです。そして、申請手続きの簡素化と公的助成の継続を是非ともお願い致します。

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