人工内耳買い替え~公的助成がはじまる~事業期間は限定

第81回

難聴ソルのゆんたくTime

 

2018(平成30)年4月5日 島原新聞掲載

 

平成29年度から人工内耳体外機の公的助成が長崎県内の各市町で始まりました。平成26年2月5日付の島原新聞にも記事を書きましたが、ようやく、私が待ち望んでいた助成制度が確立しました。とても嬉しいことです。島原市では平成27年に、直接市長さんにお会いして陳情をしたときから、ずっと前向きに進めて下さりました。おかげで島原市における人工内耳の認知度は高く、理解をしてくださる方が沢山いらっしゃいます。これを機に人工内耳が普及していくことを願います。

 

この助成が必要だと感じたのは、私自身の体験からです。私は35年近く、補聴器をつけていましたが、一度も無くしたことはありません。

 

それなのに、人工内耳をして1年経っていない頃、ある日突然無くなったのです。どこに行ったのか、どうして無くなったのか、全く分かりません。1週間探しても見つからなかったので買い替えることにしました。そのとき初めて、買い替えには一機、60万円以上かかることを知りました。その場で青ざめたことを覚えています。これからは無くさないように大事にしようと強く思いました。

 

いま人工内耳はなくてはならない体の一部です。私は時期を見て、もう片方の耳にも人工内耳の埋め込み手術をしようと計画しています。

 

初めて左耳に人工内耳を入れた時は、どんな音が入ってくるか?どのくらい聞こえるようになるのか?新しい世界への好奇心や希望ばかりが先立って、その後の機器にかかる費用のことなど全く考えていませんでした。人工内耳についても注意しないといけない点もいくつかあることを知っておかなければなりません。今、難聴の友人3人から「自分は人工内耳手術を考えているのだけれど、メリットばかり説明されてデメリットを聞くことがないので、デメリットも教えてほしい」というようなことを聞かれました。メリットを感じることが多いのは事実だけれども、買い替える時の費用が一番のデメリットでしょう。軽自動車1台分程度の出費になることもあります。ですから、今回の助成制度の確立は非常に喜ばしいものです。上限は40万円ですが、これまでより負担が軽くなります。

 

以前、島原市へ陳情に行った時、人工内耳装用の子どもがいらっしゃるお母さんにも同行してもらいました。その方が「私達、親が元気なうちは色々と援助ができるからいいですが、娘が一人立ちしていった時、私たちがいなくなった時のことを考えるとやはり公的助成があったほうが安心です」とおっしゃっていました。親の気持ちになったら、そうだなと共感しました。子どもからお年寄りまで、金銭面で心配することなく人工内耳を利用して音のある世界で生活できるようにしていって欲しいものです。

 

今回の助成制度の内容をよく見てみると、少し疑問点もあります。助成対象となるのは五つの条件を全て満たしている人に限られている点。事業期間が平成29年から平成31年となっている点。特にこの事業期間が3年間しかないというのはどういうことでしょうか。先ほどのお母さんの話からも、末永い助成を希望されていることが分かります。人工内耳の装用の普及、そしてその後の安心を保つためにも、期間制限のない公的助成を望みます。

 

難聴者だけではなく、多くの方々にも長崎県下で人工内耳体外機買い替え時の公的助成が始まったことを知って頂きたいです。そして、事業期間が3年という問題があることも知っておいて欲しいと思います。

 

まだまだ考える余地はありそうですが、聴覚障害者や人工内耳装用者にとっては新しい時代への一歩を踏み出すことができました。これからも皆さんの協力を得ながら、ますます良いものにしていきたいものです。

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