耳マーク活用で状況改善に工夫を

第73回

難聴ソルのゆんたくTime

 

2016(平成28)年7月16日 島原新聞掲載

 

平成28年4月から「障がい者差別解消法」が施行されたが、これに先立つ同年1月に医療分野において事業者が講ずべき対応の指針として「医療関係者向けガイドライン」が制定された。このガイドラインにおいて、医療関係事業者は障がい者に対して合理的配慮を提供することが求められている。特に聴覚障がい者に対しては「情報提供等についての配慮や工夫」が重視されている。

 

実際、聴覚障がい者にとって病院に行くことは、ただでさえ具合が悪いうえに大きな不安と緊張感を伴う。なぜならば、受付や会計で名前を呼ばれても分からない。医師や看護師、薬剤師の説明が聞き取れない。検査時の指示が聞き取れない。などといった事態が起こりうるからである。

 

自分から自身の聴覚障がいの状態を伝え、医療機関に対して、具体的にこうして欲しいと言うことができる人は比較的スムーズに病院通いができるだろう。しかし、自分から伝えられない人、また伝えたくない人にとっては、病院行くことそのものが怖くなってしまいかねない。私はこのような状況を改善するために耳マーク活用を勧めたい。島原半島では耳マークが普及されているが、うまく活用できているのであろうか?

 

今考えているのは耳マークシールの活用である。病院側は患者さんのことを気がけてみて、耳が聞こえにくいと思った患者さんのカルテに(本人の許可を得て)耳マークシールを貼る。そのことによって病院内のスタッフ全員がその患者さんの情報を共有することで、適切な対応ができる。

 

例えば何回も名前を呼ぶのではなく、その患者さんのところまで行って肩を叩いたり、筆談ボードで知らせるなどの配慮ができるはずだ。このような配慮をすることにより、診察までの流れが滞ることなくスムーズにいくのではないか。病院としては目で見てわかるコミュニケーションを行う配慮が必要である。聴覚障がいを持つ患者さんに対して音声だけで話すことは極力避け、文字表示や耳マークの活用など視覚的情報を提供することが必要である。

 

また、聴覚障がい者自身は、耳マークを診察券に貼る、耳マークのカードを見せるなどして自分の状況を知ってもらうことも大切だ。病院は細かいコミュニケーションが欠かせない。そのためには自分のことを伝える必要がある。一度伝えておけば、その後も安心して受診できる。聴覚障害者も勇気を持って耳マークを活用して欲しい。耳マークは、耳が聞こえにくい人は誰でも使ってよいものである。聴覚障がい者に限らず高齢で聞こえにくい方もどんどん活用して欲しい。

 

私ももちろん病院に通う。以前は診察室前の一番前に座り、いつ呼ばれるかいつ呼ばれるかとずっと周りを見ていて気が抜けなかった。しかし、この頃診察券に耳マークシールを貼り自分の状況を伝えるようにした。すると受付の方や看護師さんが私のことを覚えていてくれて、肩を叩いたり、手を振ったりして私が分かるように対応してくれるようになった。このおかげでリラックスして1人ででも病院に行けるようになった。

 

自分のことを伝えるというのはとても大事なことである。病院に行くことに抵抗のある方はこの機会にぜひ耳マークを活用してみてはどうでしょう?

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