飛行機内での情報~文字でも伝えてほしい~

第83回

難聴ソルのゆんたくTime

 

2018(平成30)年6月2日 島原新聞掲載

 

最近、飛行機に乗られたことはありますか?私はANAが好きでよく乗るのですが、ことし4月1日から機内Wi-Fi(ワイファイ)=無線でインターネットが利用できる=が使えるようになり、空の旅をより楽しめるようになりました。

 

さっそくゴールディンウィークに搭乗した時、ワクワクしながら試してみました。映画や雑誌などが豊富にあり、時代が進んでいるのを肌で感じました。まだ観たことのない映画が流れていたので、鑑賞していると急に画面が変わりました。「アナウンス中…」という画面がしばらく続いたのです。何が起こっているのか分からずにいましたが、機内アナウンスが音声で流れているのが分かりました。でもその内容は私には聞き取れません。

 

私は度々飛行機に乗っていますが、最初に行われるCAさんの救命胴衣の着用方法の説明も見ているだけで、まったく聞こえていません。パフォーマンスにしか見えていないのです。いろんな説明をしているみたいだなと思っていましたが、ちゃんと聞こえて理解できているわけではありません。緊急時の対応などはパンフレットを見て何とか分かる程度です。「機内お手伝いが必要」と事前に伝えておけば、ある程度はCAさん達が気がけてくださいますが、すごく忙しいときは手が回らないようです。これがもし、緊急時の場合はどうなるのだろうと不安はあります。皆さんが思っている以上に飛行機の中では聞こえていないことが多いのです。

 

そこで、今回の機内Wi-Fiが利用できることによって、視覚的な情報が得られると思い期待していました。確かに娯楽は楽しめます。

 

しかし、肝心のアナウンスは文字情報で表示されることなく、「アナウンス中」のみ。私もアナウンスの内容が知りたいのです。音として聞くのは難しいのですから、画面に内容を文字で表示してもらえれば、もう言うことはありません。

 

「富士山が見えています」「シートベルトをお締めください」「到着時間が遅れています」など、こういうアナウンスがなされているようですが、私には聞き取れません。こういう現実があるということを知っていただきたいものです。

 

平常時は問題ないのですが。緊急時はアナウンスだけでは状況が全く伝わりません。不安がよぎります。

 

実はヨーロッパで飛行機に乗った時、とても怖い経験をしました。イタリア・ベネチアの空港からトルコ・アタテュルク空港へ向かっていたときのことです。もうすぐ着陸するという時に着陸せず再び上昇して旋回を始め、室内灯がピカピカと点滅し、不気味な音が聞こえ始めました。CAさんが何かしゃべっている様子。しかし、全く何を言っているのかが分からないのです。

 

何がどうなっているのかが分からずパニックになりました。「もしかしたら、クーデターが起こって着陸できないのかもしれない」、「ここで墜落するかもしれない」と怖いことばかり考えて、死を覚悟しました。

 

もしも、海に着陸したら、口の中に人工内耳を入れて海水から守らないといけない。ボスフォラス海峡を泳いで渡らないといけないと、そんなことを考えました。そして家族の顔やこれまでの人生が走馬灯のように駆け巡りました。もうだめだと思い、隣に座っている夫の手をしっかり握りました。と同時に、ドンという振動が伝わり、無事に着陸しました。

 

何が起こっていたのかは全く分からないまま、生きていたことに感謝しました。とても怖かったです。このときも、英語でもいいから文字情報があれば、状況を理解し落ち着いて対応ができたのにと思います。

 

ANAで機内Wi-Fiサービスが始まったのは画期的なことです。これに「アナウンス中」ではなく、機内での情報を視覚情報として乗客全員で共有したいものです。

 

羽田空港には体の不自由な人向けのチェックインカウンターがあり、そこにはUDトークアプリを入れたタブレットがあります。これは非常にありがたいサービスです。機内でもこのUDトークのアプリ情報を得ることができれば、なんの不安もなく飛行機に乗ることができます。

 

UDトークの活用もぜひ考えていただきたいのです。もし、UDトークが難しいのであれば別の方法で何か検討してほしいというのが切実な願いです。

 

全ての人が安全な空の旅を楽しむために、いろんな意見を聞いて進化し続ける飛行機、航空会社であってほしいと思います。ぜひ、よろしくお願いします。

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