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かん味処vol.2 「惑わされない」ブランディング講座

 菅慎太郎さんを講師とした一次産業者向けの経営講座「かん味処」。
その第二弾が開催された。
 前回のPOP講座では、大切なことは「いい商品を作ること」、そして「商品の良さをきちんと訴求すること」がテーマだった。そして、優先順位を間違えた「なんちゃってブランディング」は要らないと菅さんは言っていた。
 巷には、ブランド・コンサルティングやマーケティング・コンサルティングなど、事業の手助けをするカタカナの仕事が溢れている。そもそも、それらは何なのか。どう付き合っていけばいいのか。前回の講座で少しその答えが見えたものの、より深く知りたいと思った。
 今回のテーマは、ブランディングに「惑わされない力をつける」である。

1.増える販路の選択肢。産直ESが直面する厳しい時代。

 冒頭、3月12日に発表された日本郵政と楽天の資本業務提携の話から始まった。

楽天は現在、西友と手を結び、ネットスーパーとして生鮮品をネット販売している。そこに日本郵政の流通網が加わり、物流が強化される。楽天ポイントや楽天IDを使ってネットで生鮮品を購入できるとなると、消費者にはプラスになる。一方で、ポケマルや食べチョクなどの産直ESにとっては、今後の立ち位置や戦略をしっかり定めなければ、大変厳しい時代になってしまうというのだ。
 これは、一次産業者にとっては販路の選択肢が増えるということでもある。ネット販売だけではなく、JAや道の駅、さらには六次化など、生産者にとって事業の選択肢はさまざまである。このような状況の中で、「一次産業の生産者は、自分の身の丈に合ったスタンスを確立してほしい」と菅さんは言う。事業の選択肢のひとつである、いわゆるコンサルタントといわれる専門家にどう頼るか、も含めしっかり選ぼうということだ。

2.コンサルタントって何する人?

 そもそも、コンサルタントとは何か。それを考えるには、まずは事業のプロセスを細分化してみる。商売は、「つくる」「運ぶ」「売る」の大きく3つに分かれる。各プロセスにおいて、頭を使う作業(知識の取得や、戦略を練るなど)と、身体を使う作業(人や機械が物理的に働く)とに分けられる。この頭を使う作業が、いわゆるコンサルタントが担える部分だ。

 では、マーケティングやブランディングとは何か。これは、「つくる」プロセスの前後にある作業だ。「マーケティング」は、商品を「つくる」前に、そもそもどういう商品を作るかを市場や消費動向、トレンドなどから考える。「ブランディング」は、「つくった」後で、宣伝や広告を行うもの。パッケージのデザインなどもこれだ。しかし、本当に注力すべきは商品を「つくる」ことそのものだ。
 この「つくる」部分を強化するために、例えば農家なら生育技術の向上や土壌改良のために、農業コンサルタントや農業指導員といわれる人の知恵を借りるということもできる。

 このように、コンサルタントに役割は多様である。しかし、ここで注意しなければいけないのは、自分自身でやるべき部分と他者に頼む部分を、きちんと見極めなければいけないということである。

3.自分の事業をちゃんと把握する。

 どこまでを自分の力でやるのか。その見極めのためには、自分の事業を把握することが大切だ。そのひとつがコスト管理。
 原価計算をきちんとする。つまり、ある商品をその値段でその方法で売るのは赤字か黒字か、きちんと把握するということだ。例えば、遠方のマルシェに出かけるのに交通費や宿泊費、現地での出費をすべて換算してほんとにプラスになるのか?そこで出会ったお客さんは、マルシェ以外でも顧客になってくれるのか?売上金額よりも「利益率」を重視する。費用をかけすぎて手元に残る分が少ないなら、持続的な継続は難しくなってしまうのだ。

4.専門家「風」に惑わされない。

 ブランディングやマーケティングのコンサルタントはその呼び名も多様ながら玉石混淆だ。その中で専門家と専門家「風」の人を見分けるには、「数字の話がちゃんとできる」ことを菅さんは挙げている。ただカッコいいカタカナを並べたりふわふわと抽象的な話ばかりする人ではなく、実績をゴールに据える人を選ぶということだ。

 生産者には多様な選択肢がある。販路でいえば、JA市場流通、地域の直売所、産直ES。生産や販売を助けてくれる専門家、委託業者。自分の事業にあった選択をすればプラスになるが、そうでないと無駄なコストをかけて事業を圧迫してしまう。コストをかける優先順位は、本業=「作物をつくること」だ。そして、ほかのプロセスで苦手な部分はどこか。苦手な部分を自分でやるのと、他社にゆだねるのではどちらがコストがかかるのか。お金だけでなく、時間もコストだ。それを自分自身でしっかり分析できるようになろうというのが、今回の一番の趣旨だと感じた。

 私も、何かうまくいかないことがあると、ついカッコいい響きや耳障りのいい言葉に救いを求めてしまう。惑わされてはいけない。自分のやるべきことをしっかりとやり、必要なところを得意な人にお願いしよう。
 それは、心地のいい言葉ではなく、菅さんのようにズバッと、時に頭が痛くなるようなことを言ってくれる人がいいのかもしれない。



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