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抗生物質で太らせる

世界中で豚や牛や鶏に大量の抗生物質が使われています。それは感染症の予防が目的ではなく、効率的に「太らせる」ためです。これには腸内細菌が深くかかわっているのです。
ある種の抗生物質で腸内細菌叢の多様化を低下させると、人為的に肥満フローラ(デブ菌優勢)へと誘導することができるのです。肥満フローラは宿主にエネルギーを過剰に供給してくれます。するとどうなるのか。同じものを食べても脂肪を溜め込みやすい、いわゆる太りやすい体質になってしまうのです。
肥満フローラはまず、エネルギー貯蔵システムに障害を与えます。それが常態化すると満腹中枢が機能不全になります。そうなると、どんなに食べても脳は飢餓状態と錯覚しているので、常に食べ続けていなければ気持ちが収まらない精神状態に陥ってしまいます。これが「過食症」です。

過食症にさせられた動物は、制御不能の食欲にまかせて食べ続けるため、内臓脂肪や体脂肪をどんどん貯めこんでいきます。おそらくインスリン抵抗性(インスリンの作用が十分発揮できない状態)を発症していると思われます。そうなると当然、体重増は早くなります。ということは、出荷までの飼養期間は短くなり、飼料費の削減になります。感染予防の抗生物質はもはや本来の目的ではなく、生産性や経済重視のために乱用され、それが常態化していくのです。そんな損得勘定のために動物の健康が今も損なわれ続けているのです。

2000年以降、腸内細菌の研究が飛躍的に進むにつれ、いわゆる21世紀病肥満、アレルギー、自己免疫疾患、自閉症をはじめとする心の病気と腸内細菌との関りが明らかになってきました。気になる大きな要因として
  ① 抗生物質の乱用や医薬品の多剤服用
  ② 過剰な清潔志向、衛生観念、除菌に滅菌・殺菌
  ③ 帝王切開、人工乳哺育の奨励と励行
  ④ 人工甘味料や異性化糖の多量摂取

戦後から現在に至るまで、多くの国では美食や飽食、あるいは医薬品の多剤服用を続けてきました。結果として、腸内に共生している微生物たちの様相が一変してしまいました。そして、出現したのが21世紀病なのでは。
ヨーロッパではすでに肥育目的による抗生物質の使用は禁止されています。しかし、アメリカや中国、日本を含む多く国ではまだ規制されていないのが現状です。日本でも、田原市には抗生物質を使用しないで豚を飼育している若い経営者がいます。【保美豚】というブランドですが、臭みがなく、脂身がさっぱりして、風味が良い肉です。

抜本的な食生活の改善がなければ、21世紀病はますます深刻化してしまうのではないでしょうか。『医食同源』『薬食同源』という言葉があります。
健康のために食の大切さを考え、実践する必要を感じます。




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