線香花火
子どもの頃、家族や友だちとの花火遊びで思い出すのは線香花火。いろいろな花火を楽しんだ後、いつも最後は線香花火で、みんなしゃがんで息を止めるようにして持っていた線香花火。
それまでの楽しさや華やかさが消え、静けさの中で誰が一番長く持つかを競争したものでした。手元の橙色の火の玉が途中でぽとっと落ちてしまうと、残っている子の周りに集まり、火の玉が小さくなっていくのを見つめていたことを思い出します。何となく寂しさを感じた夏の思い出です。
夏の風物詩ともいえる線香花火ですが、今ではほとんどが輸入品で、群馬、愛知、福岡でわずかに作られているのですが、国産品はかなりの高級品です。
線香花火には2種類あることを知っている人も多いと思います。一般に広く知られている線香花火は薄葉紙で火薬を包み、こより状に巻いた「長手牡丹」です。もう一つは「スボ手牡丹」といって、スボ(稲藁の芯)の先に火薬をつけたもので、こちらの方が歴史は古いそうです。
江戸時代の『絵本十寸鏡(えほんますかがみ)』には、このスボ手牡丹を香炉に立てて火花を眺める女たちの姿が描かれています。その様子が線香に似ていることから「線香花火」と呼ばれました。江戸では材料の藁を手に入れることが難しいため、紙の長手牡丹が主流となり、次第に全国へ広まっていきました。
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