悟りと諦め

 
 私が80歳を過ぎ、奥さんが後期高齢者になって、ようやく円満な夫婦生活を送れるようになった。それまでは何かにつけていがみ合い、罵り合ってきた。
 それがいつの頃からか、お互い諦めたのか悟ったのか、互いの言動に腹が立たなくなってきた。
 奥さんは知らず、私は彼女への腹立ちをすべて封印した。きっかけはある日ふと「二人で後何年、いや何日一緒に暮らせるのだろう」と思ったことだ。残り少ない日々を、せっかくならば、笑って過ごしたいと考えた。そんな思いが通じたか、奥さんも次第に言葉にとげがなくなった。
 自分は悟ったつもりだが、奥さんは諦めたのかもしれない。
























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