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直線と折れ線

まっすぐ前にずんずん進んでいく人と、屈折していろんな壁にぶつかりながら辛うじて前進する人がいます。自分はどちらだと思いますか?多くの人がいろんな壁にぶつかりながら生きていると感じているかと思います。そんなうまくいかない自分を、物語の主人公に投影することもありますよね。

魔女の宅急便、17歳のカルテ、 トレインスポッティング、フォレストガンプ、ギルバートグレイプ。好きな映画を聞かれた時に答える作品です。この中でも、会話のネタになることが多いのは、名作中の名作として親しまれ続けているフォレストガンプ。みなさんはどのシーンが好きですか?足の矯正器具をつけたフォレストがはじめて走るシーンでしょうか?それとも、ダン中尉が船着場に現れたシーンでしょうか?アメリカ縦断マラソンをするシーン?わたしが好きなのは、フォレストとジェニーがふたり並んで歩くシーンです。

男の人にこの話をすると、よくわからん。とか、最後の最後にぬけぬけと結婚してほしいなんてよく言えるな!とか、あまり肯定的な意見を聞くことがないのですが、ジェニーはとてもすてきな女性です。周りのお友だちと少し様子がちがうフォレストに、少しのいじわる心も持たずに仲良くすることができるやさしい心を持った女の子。ただ、その心を伸ばして大きく育てられる環境が彼女にはなかったのです。彼女の人生の中で、愛情を差し伸べ続けたのはフォレストただひとり。誰だって、成長の過程で愛されることに慣れていきます。お父さんやお母さんから日々注がれる愛情で、自分を肯定する心も同時に育まれる。それがないと、まっすぐな愛情や肯定的な意見に対して、アレルギー反応が出てしまう。なにこれ!と驚いて、パーン!とはじき返しちゃうんです。その反動で、自分の身体ごと真逆の場所に吹っ飛ばしてしまうんです。その繰り返しでまっすぐに進めない、受け入れられない体質が育っていく。

フォレストは、生まれつき持っていないものがあったとしても、その心や特技を受け入れ育んでくれる環境があったんですね。それでいいの、やってみなさい、走りなさい、そう言われてまっすぐ進むことができるから、同じように前を向きたい誰かと心を重ねることができた。

まっすぐ進むフォレストと、折れ線を描きながら進むジェニー。ふたりが人生の節目節目で、たまたま同じ線状で出会うシーンを観ていると、こころがじんわり暖かくなります。最後の最後にふたりがまた出会って、フォレストの愛情が報われ、ジェニーも愛されることをどうにか肯定することができ、本当によかったと思うのです。それがどんな形であれ、愛情が報われないまま終わるような悲しい最期じゃなくてよかった。

幼馴染に、ジェニーのようなグレ方をした友人がいます。一旦更生して家庭をもつこともあったのですが、数年前またフラリと姿を消しました。まっすぐの愛情を、きっとまたどこかで探しているんだろうなと思います。彼女から連絡があるとしたら、それはわたしの人生がうまくいっていないときでしょう。またどこかで偶然会ったときに、彼女を受け止められるだけのまっすぐな愛情を用意できていたらいいなとフォレストを見ていると思うのです。

また明日。

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