ある日突然、魔王討伐に行く事になりました。

「、、お前は明日から魔王討伐に行け」
「、、、え?」

満月の光が雲の間を通り、仄かに部屋を照らしている。
夏季が終わり、風が冷たくなって来ているのがわかる。
父が作ってくれたクリームシチューの湯気が徐々に小さくなってきている。

理解が出来なかった。さっきまで放牧の準備について話していたのに、、

「えーと、、、え、、どう言う意味ぃ」
「もう一度言う、お前は明日から魔王討伐に行く。この家から好きな物何でも持って行っていい。食べ終えたら支度しなさい。明日明朝には出発してもらう。分かったらさっさと食べなさい。」

「え、え、え、待ってよ父さん、、本気で言ってるの?冗談だよね、、、、」
父は黙々とシチューを食べている。

「え、、本気なの?、、、、、」
父は何も答えてはくれない。父はシチューを食べ終え、食器を水辺に持って行き、
食器を洗わずに自分の書斎に入って行った。
バタン、、と戸が閉まる音が小さく響いた。

僕は書斎の扉から目を逸らす事が出来なかった。
父は冗談を言う人では無かった。父の戯言何て一度も聞いたことが無い。

「本当なんだ、、、、、、」小さな言葉が出た。

全身から力が抜けた。何も考えられない。
どれぐらい経ったのだろうか、手の中にあるシチューが冷めきっていた。
月の光は無くなり、蝋燭の光だけになっていた。

「ははぁ、、大好物のシチューなのに、、こんなにも冷めちゃった、、、」
珍しいなと思ってたんだ。父さんが季節を先取りしてシチューを作るなんて。
父さんは僕の最後の晩餐の為にシチューを作ったんだ。

僕はシチューを食べ、食器を洗おうとした。
鍋の蓋を取り中身を確認すると、まだまだシチューは沢山残っていた。

「、、、」
「、、、こんなにも食べられないよ、、、父さん、、」
目に涙を浮かべた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?