【2024.3.12】不安亭すい臓「絶食」

(出囃子が鳴る。)

(ぺらりとめくられ「不安亭すい臓」の文字が露わになる。)

(深々と頭を下げる不安亭すい臓。)

え〜、世の中では「断食」なんてものが流行っておりますが、あたしはどうも流行りに乗れる気がしなくてですねぇ。

何と言っても字の並びが恐ろしい。
食を断ずると書いて断食。

体が土なら食は水。
断じてはならぬものではないですか。
それを断ずる、と。

それに、「だんじき」という音も大概ですよねぇ。
ダンダンと地団駄を踏み、ジキジキと迫ってくるようで、まぁ怖い。

だからあたしは、断食を”断じて”やりたいとは思えないんですよねぇ。

そんな恐ろしい「断食」なんですけどね。
先日、あたしは断食断じよう仲間の一人からこんな話を聞いたんです。

「世の中には断食よりもっと恐ろしいものがある」と。

あたしが思わず息を飲みながら、
「そいつはいったい何て言うヤツなんだい……?」
と恐る恐る尋ねると、断々仲間は……ま、断食断じよう仲間のことをそう略すんですよ。で、その〜断々仲間は、
「絶食だ」
と言うんです。

絶食!ぜっしょく!
もうね。絶句ですよ。

食を絶すると書いて絶食。
断じるどころの騒ぎじゃありませんよ。
絶交のゼツ、絶縁のゼツ、絶滅のゼツ!ひぃ!

そんな絶食という断食に輪をかけて恐ろしいものですが……。
なんとあたくしすい臓……、その絶食をやらねばならなくなりました……。

今朝はもう恐ろしくて恐ろしくて。
恐ろしさが余ってか逆にお腹が減ってしまい、いつもより早朝にぐうすかぴーと鳴るんです。
あ、寝てたんじゃないですよ。鳴ってたんです。

腹は鳴っても食べる飲むはご法度。
ひたすら腹を撫ぜてごまかしながら、ひいこらと4件の面談をこなして夜。

撮影をするも、呂律が回らないんですよねぇ。
食を絶するとまともに喋れなくなるんですよ。

それでも脂肪をエネルギーに変えて乗り越え、深夜。

ははっ、文字が書ける……!
日記が書けているじゃないか、すい臓!

あたしは勝ったんだ!
絶食に勝ったんだ!!
悪寒も目眩も抱きしめながら、あたしは絶食に勝っ……。

(不安亭すい臓、ここで目をひん剥いたまま時が止まる。)

(ゆっくりと前のめりに倒れる。)

(受け囃子が虚空に鳴り響き、シューゲイザーサウンドに変わる。)

(轟音。)

(Go on.)

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