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きっかけはパンダコパンダ "かわいすぎて笑ってしまう本"を作りたかった/絵本『ぞうのマメパオ』藤岡拓太郎さんインタビュー
「寒いですね、今日。雪降るかな」
ギャグ漫画家・藤岡拓太郎さんによる2作目の絵本『ぞうのマメパオ』。インタビューは、藤岡さんが原稿を描き上げて間もない2021年12月25日のクリスマス、彼が普段よく散歩をするという公園で始まりました。
― 雪、好きなんですか?
藤岡 いや、好きっていうか、なんか降ったら嬉しくなりますよね。こっち(大阪市内)のほう、あんまり降らないからかな。
― そうなんですか。
藤岡 うん。一年に一回ぐらいパラパラッと降るぐらいですかね。
― ああ、それは・・・レアな。
藤岡 レア。なんかだから、嬉しくて。ていうか、嬉しく・・・嬉しくない人っているんですかね?
― 雪が降って?
藤岡 雪が降って。いや、雪が珍しくない地域の人は別として、このへんで雪が降って嬉しくない人って・・・。
― 中には、いるんじゃないですかね?
藤岡 いるんですかねえ。
― 『ぞうのマメパオ』にも、雪が降ってはしゃぐシーンがありましたね。
藤岡 ああ、あります。
― 今回は、最初から冬の話にしようと思われてたんですか?
藤岡 いや、最初は夏のイメージで。だったんですけど・・・なんかいつのまにか冬が舞台になってましたね。あ、そうだ。ジュンちゃん(マメパオと出会うことになる女の子)が寒そうに着替えをするシーンがありますよね。あれが思いついてから、そのまま、冬でいこうと。
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― そうなんですね。夏のマメパオも見てみたいです。
藤岡 ああ、まあ、また機会があれば。
― 『ぞうのマメパオ』は、どういうところから生まれていったんですか?
藤岡 あ、それははっきり、きっかけがあって。今年(2021年)の4月に『パンダコパンダ』を観たんですよ。
(『パンダコパンダ』・・・・・・1972年公開のアニメーション映画。原案・脚本・画面設定:宮崎駿、監督:高畑勲)
藤岡 これがね、ちょっと・・・めちゃくちゃ笑っちゃって。
― へえー!『パンダコパンダ』、昔観たことありますけど、えっ、そんなに笑える感じでしたっけ。
藤岡 いや、これがね、僕も観たのは2回目だったんです。5年ぐらい前かな? に初めて観た時はあんまりピンとこなくて。あんまり笑った記憶もないんですけど、今年その、観た時は・・・当時とコンディションが違ったとかいうのもあるんですかね、まあ、ちょっと、もう・・・えらい面白くて。
― ええー、観直してみます。
藤岡 何が面白いかっていうと、"かわいすぎて面白い"んですよ。
― かわいすぎて。
藤岡 続編(『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』)も面白いんですけど、とにかく1作目の『パンダコパンダ』の、コパンダ登場シーンが最高で。コパンダじゃないか、パンちゃんね。小っちゃいほうの。あの子が画面に登場した瞬間に、爆笑しちゃって。かわいー!っていうね。かわいー!と爆笑が同時に自分の中で起こったことにびっくりして。あんまりない体験だったんで。こういう笑いがあるのか、って新鮮で。"かわいすぎて笑えるもの"を自分でも作りたくなった、ていうのがきっかけですね。
― まさか『パンダコパンダ』がきっかけだったとは。
藤岡 ねえ。そこから一冊生まれるとは。パンちゃんの登場シーン、観直してみてください。"黄金の2分間"って呼んでるんです。計ってないんで、もっと短いかもしれないですけど。なんかね、"1周回って面白い"とかじゃないんですよ。古い時代のものを今の眼で見たらツッコミどころ満載で面白かった、とかじゃなくて。ちゃんと高畑勲と宮崎駿の、絵とタイミングと演出で、しっかり笑わされたって感じがして。
― それで、"かわいい"と"面白い"が同居したものを、自分でも作りたくなったと。難しい試みでしたか?
藤岡 そうですね、結構・・・今までどっちかっていうと、"恐怖"とか"不安"みたいなものと背中合わせにある笑いを考えてきたところがあるので。
― でも『たぷの里』も、かわいいって言われません?
藤岡 あ、そうなんですよ。結構言われます。『たぷ』の時は、"かわいすぎて笑えるものを作ろう"とかは全然考えてなかったんですけどね。
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― そうなんですね。
藤岡 うん。今回はもう、最初から"かわいいものを!"っていうところから始めて。でも作りながら思ったんですけど、"かわいい"も行き過ぎるとイライラしてくるんですよね。
― あざとくなる、っていうか・・・。
藤岡 そうそう。やりすぎるとウザくなるんで。かわいくしすぎないように。「おもしろくするには、おもしろくしようとしないことだ」(5代目・古今亭志ん生)っていう言葉がありますけど、それを思い出しながら。
― 「かわいくするには、かわいくしようとしないことだ」と。
藤岡 そうそう(笑)。今回『となりのトトロ』も観返して。まあ一年に一回は観てるんですけど・・・。サツキとメイがかわいいのは、本当に子供らしく描かれているからだなと。
― リアルな子供として。
藤岡 うん。ファンタジックなことは起こっても、二人の反応は本当の子供みたいですよね。マメパオも、そんな感じで描くようにしました。
― 「ジュンちゃん」も。
藤岡 ジュンちゃんもそうだし、マメパオのことも、象だけど、2歳ぐらいの人間の幼児のつもりで描いてました。
― なるほどー。ほかに参考にされた作品はありますか?
藤岡 参考っていうか、まあ、子供が出てくる映画を観たくなって。映画の『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』と『ロッタちゃん はじめてのおつかい』を観ました。これはもう、メイちゃん以上にリアルな子供で。憎たらしいガキだなこいつはという(笑)。生意気で観ててイライラしてくるんですけど、でも子供ってそういうもんだから、それも含めてかわいいんですよね。
― さっき言っていた、かわいさが行き過ぎていてイライラする、というのではなく?
藤岡 いや、ロッタちゃんの場合は単にクソガキだからイライラするということですね(笑)。
― イライラが行き過ぎていてかわいくなってくるという・・・。
藤岡 よく分からなくなってきた(笑)。まあとにかく、子供が持つかわいさというものを改めて考えました。『パンダコパンダ』のパンちゃんの登場シーンにしても、それまでの描写から、「遊び疲れて寝てもうとる」っていうのが一発で分かるから、かわいいんですよね。
― なるほど。ところで今回、ページ数が200ページ近く・・・。
藤岡 本編だけでいうと、194ページですね。
― 絵本というと通常、16ページとか、32ページ。『たぷの里』でも42ページです。今回、かなり長いですね。
藤岡 最初から、80ページぐらいにはなるかなと思ってたんですけど。更に増えてしまいました。今回は子供たちの動作っていうか、動きをじっくり見せたかったのと、あとは単純に、描きながら自分でもうちょっと見たくなって。読んでもらえると分かると思うんですけど、今回80ページとかだと短く感じると思うんですよね。120ページあたりでも、まだ物足りないなと思ったので。
― さて、今回は刊行前のインタビューということで、内容にはあまり触れずにお話をして頂いたわけですけど、刊行後に、またぜひお話を伺えますか。
藤岡 ぜひ。お願いします。
― 『ぞうのマメパオ』のこれからのご予定としては。
藤岡 これから表紙と裏表紙とか、あともろもろのイラストを描いて。ナナロク社とデザイナーさんと打ち合わせしながら、細かいところを決めていきます。
― 頑張ってください。
藤岡 はい。雪、降りませんでしたね。
― 降りませんでしたね。
藤岡 どうなってんだ・・・。
*
取材日:2021年12月25日
聞き手:藤岡拓太郎
構成:藤岡拓太郎
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