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書くことは、思い出からの卒業。

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2017年9月の記事一覧

日常とセーター。

「いつも、なんだって早いんだから」 大好きなグレーのセーターに顔を少し埋めながら彼は言った。そんなことないよ、って彼の手を握ろうとしたけどやめてしまった。 ご飯を食べたあとの片付けも、やるよと言われてもお願いできない私を笑って許して近くに座っていてくれた。 「もう終わったの」 あなたの手を煩わせたくなくて、でも私だって一緒にいる時間を大事にしたくて、なんて素直に言えない私は、へへへといつものように誤魔化した。 全部自分でやっちゃうんだから、と言い残して彼は生活を後