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宛名のない手紙

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2020年9月の記事一覧

証明された猫

「話したら受け入れてしまうみたいで、言えなかった」 すべての景色が、最後に見えた。自分の意思に抗って移動しなければならない事実を、いつまでたっても受け入れられない。ぜんぶ自分で決められるはずなのに、ぜんぜん抗えない。 受け入れることは、もう一つの世界を殺してしまうことに等しいのかもしれない。でも受け入れるしかないの、と話すあの子の目がどうか、死んでいないようにと願うことしかできなかった。 上京を選んだ瞬間にも、帰ることを選んだ瞬間にも、わたしだってなにかを殺しているはず