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仏蘭西生活記

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フランスに住んで考えたこと、気づいたこと
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2022年6月の記事一覧

ある冬の朝、パリを想うこと

自転車に乗って十一区のアパートを出る。 冷たい風で耳が痛い。キャスケットじゃなくニット帽を被ってくればよかった。まだ夏時間だけど、朝はすっかり冬だった。夏と冬の個性に押し潰され秋はどこへ行ってしまったのだろう。秋を感じるのは近所の八百屋で南京と葡萄を見かける時くらいだろうか。 自転車を漕ぎ、パルマンチエ通りを北上し、ヴォルテール通りへと抜ける。夏時間が冬時間に変わる前の朝は特に暗い。見上げると灰色の分厚い空が建物に切り取られている。 六時一五分。 七時前に郊外の撮影ス

スマホのカメラが目となり、記憶は共有され存在が伝播する

現在パリではファッションウィークが開催中です。先日とあるブランドのショー会場の裏側でルックブックを撮影する仕事のアシスタントに呼んでもらいました。せっかくなので仕事の間にショーを覗かせてもらいました。 コロナの影響もあってか、招待客の少ない小規模なショー。その代わり誰もが最前席に座れるようになっています。音楽が大音響で流れ、モデルが登場し颯爽と歩き出します。 しばらく眺めていて気がつきました。自分の目で、目の前を歩いているモデルと服を見ている人のなんと少ないことか。ほとん

自転車でめぐるロワール川食い倒れの旅

先週3日間、自転車の旅に出ていました。ロワール川沿いを走る食い倒れ旅行です。 初めて自転車で旅したのは去年の夏。自転車好きのパートナーに連れられて、同じくロワール川沿いを1週間ほど走りました。初めは恐る恐る1日に35km。徐々に距離を伸ばして1日に最大で60km走りました。 ロワール川沿いは比較的なだらかな道が続く自転車初心者にもおすすめの自転車ルートとして有名なようです。老若男女問わずたくさんの人が自転車で走っているのに驚きました。自転車で旅行するってかなりポピュラーな

あの無愛想なウェイターさんはどこへ

近所に行きつけの美味しいカフェがあります。シナモンロールが抜群に美味しくて、休みの日に朝食を食べに行きます。 朝はいつも大柄で色白の男性ウェイターさんがいます。パートナーと初めて行った日、カフェを出ると顔を見合わせ「感じの悪いウェイターだったね」と言い合いました。可愛いカフェの雰囲気に似合わずなんとも無愛想な人なのです。 それでも美味しいので通い続けました。 ある日ひとりでお茶をしに行くと、テラス席でオーナーシェフのマダムとウェイターさんが2人で話をしています。なかなか