人が集まり社会が生まれ、分裂する 『蠅の王』
ウィリアム・ゴールディングの『蠅の王』といえば、子どもたちが無人島に漂流する物語。しかし子どもが主人公の話なんだなあと、ほのぼのした気分で侮っていたら、思いがけない徹底した残酷さに目を離せなくなる一冊でした。
特に、これでもかと畳みかけるように悲惨になっていく後半戦は、人間なら誰の中にでもある獣性や心の些細な動きが綿密に描かれていて、本を置くことができずに一気に読み切りました。
無人島というゼロの状態から人間社会が形成されていく普遍的な様子が、少年たちの心の機微を掬い上げ