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読書記録

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2021年12月の記事一覧

『コルシア書店の仲間たち』 人を見つめる誠実な目

初めて手に取った須賀敦子さんの著書が『コルシア書店の仲間たち』でした。まだ日本に住んでいて、外国への憧れを抱いていた頃のこと。渡航費を貯めるために週に3つ4つのアルバイトを掛け持ちする中、一番のお気に入りが街の小さな古本屋さんでお店番をしながら本を読む時間でした。読書も好きなのですが、何より紙の本に囲まれているだけで心地良くなります。学生の頃からお客さんとして通っていた古本屋さんで、本が無造作にうず高く積み上げられているのですが、密集した本の背表紙にも木製の棚にも窓から差し込

『東京セブンローズ』 人をつくるのは国家か言語か

面白い小説を読んでると、どんどん物語の世界にのめり込んでいってしまいます。 面白ければ面白いほどページを閉じても本の世界は止まらず、日常生活が侵食されて行きます。他のことをしつつも頭の中の半分はまだ小説の世界に取り残されていて、上の空。 何か思いつくことがあると、例えば読んでいる内容、その何が面白いのか、どこにどうして感銘を受けたのか、小説の中の状況に対して自分ならどうするか、以前に読んだ本との関連性や現実との対比などなど、誰かに話して聞かせずにはいられなくなります。読ん