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4.フォトグラファーに必要なのはカメラでもレンズでもなく、ミューズだという話

とにもかくにも、リリースを打つためのメインビジュアルを撮影。

メインビジュアルでは、一枚で伝わるコンセプトと、画の強さが必須。
一枚で女装と伝えるにあたって、前回はストレートに顔は女、体は男で攻めました。あおにゃんのビジュアルはそれまでになかった透明度があり、女装界隈以外にも非常に好意的に、衝撃をもって受け入れられました。

女装作品の表現に関しては、女装を構成する三大要素=衣装、メイク、ポージングを削ぎ落としたこの1枚が、当時の自分の中で最高でした。
これを撮らせてくれたあおにゃんには、今でも本当に感謝しています。

ここで燃え尽きたわたしは、この後丸5年はヒゲで筋骨隆々の女装パフォーマーレディビアードと組み、世界中を旅しながらの活動に没頭することになります。これはまた別のお話、詳しくは冊子「レディビアード外伝」でどうぞ!

そして、今再びの女装。

展覧会の軸となるメインビジュアルのモデルは、円谷くん(女装名:伊織)です。彼は依頼があった時だけ女装する、本人の言葉を借りると「職業女装」です。彼が私から報酬を受け取ったことはありませんが、プロのモデルとしての気概に満ちています。

彼は、私の作品制作の際にはいつも登場するわたしのかんがえたさいきょうのもでる、みたいな感じの人。

服飾業界に「ミューズ」というデザイナーとモデルの関係性を表す言葉があります。ミューズとは、自身の創作活動のイメージモデルとして常に頭の中にあるような、自身のデザイナー活動にとって欠かすことができない、重要なモデル。私にとってはまさに彼。

まず、顔が良い。私の主観で、ひたすらに整っている。メイク映えして、何にでもなれる。そして企画に対してのレスポンスがいい、基本的にNGがない、撮影日にしっかりコンディションを整えてくる、プロポーションがいい、コミュニケーション力がある、私に任せてくれる。

フォトグラファーにとってこんな都合がいいモデルがいるのか、ってくらいの逸材です。👇は男女逆転で作品撮りをした時の一枚。

なんせお顔がきれいだし、本人にも「自分はこうでないと」という決まりがないから、どんなコーディネートやメイクもしっかり受け止めて自分のものにできてしまう。最高の素材力です。

いつも、自分が撮りたいものができた時には彼にお願いしていました。桜が咲いた、新しい衣装を買った、雑誌の特集ページをもらった、写真集を出す、写真展に出展する。

一方で、本業の女装スタジオや女装メイク等の活動を重ねていく中で、時代も変わって、女装が文化として周囲に認められ、自身がメディアに両手両足に余る数とりあげられる中で、発信者としての責任も感じるようになりました。

そうして、女装界隈が一般社会からどう見られるか、LGBTの文脈の中で偏った印象を与えないか、それを見たい人がどのくらいいるか、など、作品を発表する者としてある程度の責任感とともに、いい意味でいうと節度をもって、取り組んできていたわけです。

そんな私の今回のテーマは、「好きなものを撮る」。

すると、私の好きなものをいつも受け止めてきた彼に、今このタイミングでメインとなってもらうことは、とても理にかなったことに思えました。

思えばゆうに6年くらい前から撮っていて、お互いの人生にいろいろなことがありながら、撮影でつながって、人生の大切なときに助けてもらえるって、縁以上の何ものでもないなあ、と感慨にふけったりもしています。

ポートレート撮影で常に変わっていくためには、新しい機材を導入したり新しいモデルを撮らせてもらったりすることも欠かせないのですが、自分の創作意欲を刺激してくれたり、共に面白がりながら新しいことに挑戦していける相棒のようなモデルの存在が不可欠だとかみしめています。

そんなこんなで、自らを超えてゆけ。それまで清純派担当だった彼は自らに課された新たな挑戦・ほぼヒモ衣装にひるむことなく、泰然自若に撮影に臨んでくれました。

久しぶりにヘアメイク、衣装、撮影、全て自分で手がけて、最高にきれいだと思うかたちを自分の手で作っていく高揚感は格別でした。

スタジオスタッフが育休中なので、一人で行うことになったセッティング変えではばたばたとしてしまいましたが、なまあたたかく見守ってくれていました。ありがとうありがとう。

そんなわけで、メインビジュアルの目星がつきました!
私の趣味で、きれいな顔、体毛、筋肉、ファッションを詰め込んでいます。

この週末を使って、展示会タイトル案も設定予定。
メインビジュアルの確定をもって、来週リリース入稿となります。

次の撮影は13日!SNSの頂点自称カリスマ女装男子のファッション撮影です。

展示まであと66日!

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