エクストリーム7年生(19)
第四章・暗夜 (4)
相手の言葉は三土の耳に入らなかった。息をすることさえままならず、横たわって痛みを堪えることしかできずにいたのである。
「っ……っ……はっ……はっ……」
敷き詰められたレンガの冷たさが頬を伝わってくるのを感じつつ、三土はおもむろに視線を上げた。キャンパス内の灯りに照らされる革靴、チノパン、ベストと襟シャツ。そして、冷たさを併せ持った鋭い眼光。いずれも、三土にとって見慣れたものだった。
「……せ……んせ……」
「その通り」
三土が言い終えるのを待たず、暮石は答え合わせをした。いつの間に手にしたのか、ホットの缶コーヒーを口にしてから言葉を続けた。
「やはり君が変身していたか。二階浪君を助けたり草石のことを尋ねたりしていたようだから、もしやとは思ったがな」
「うぅ……」
呼吸が徐々にできるようになり、暮石の話も理解できるようになった。しかし三土は話すことができず横になったままだった。治ったばかりの肋骨にヒビが入ったらしく痛みが続き、吐きたいのに吐けない気持ち悪さが体の中で渦巻いていた。
「それにしても、殺さなかったとはいえ随分とやってくれたね。病院送りやら退学やら怪我やら、無事だった者はいないよ」
「……!!」
暮石の言わんとすることを理解し、三土は身が凍る思いをした。
(続く)