エクストリーム7年生 (13)
第三章・舞台を止めるな (10)
エクストリーム7年生は二人組の胸倉をつかむと、右手と左手で一人ずつ持ち上げ始めた。徐々にではあるが確実に体が上がり、ついには爪先が床から離れた。慌てた二人は突きや蹴りを入れるものの、浮いた状態では満足な打撃を加えられない。やがてエクストリームの拳が自らの顔と同じ高さまで来たとき、二人に尋ねるようにこう言った。
「2年前の学園祭で、草石倍を拉致したのは貴様らか?」
二人組は思わぬ質問を受けたので理解するまでに少し時間を要したが、やがて兄貴分がやけ気味に答えた。
「そうだ、あの時俺は舞台にいた。こいつもだ」
「やはりな……」
聞くやいなや、エクストリームの拳にいっそう力が入った。何か個人的な感情が籠っているのを察した兄貴分が、自信ありげに嘲笑った。
「怒っているのか。しかし衆人環視のこの状況で何ができる? ここで暴力沙汰をおこしたら、こんどはあんたが加害者だぞ」
「できることは……ある」
静かに言い終えると、エクストリームは息を吸い始めた。二人組のみならず観客にも聞こえるほどの音が、およそ10秒にわたって大教室に響いた。
二階浪はハッとして、両耳を塞いだ。
(続く)